ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

探すのをやめたとき愛は見つかる 人生を美しく変える四つの質問

だいぶ前、水島広子先生の本を読み漁っていた時に、たまたま立ち寄った古本屋さんで見つけて買った本です。こういうのを「引き寄せる」というんだなぁと、当時思いました。

探すのをやめたとき愛は見つかる―人生を美しく変える四つの質問」(バイロン・ケイティ氏著、水島広子氏 訳、創元社、2007年7月初版、原題:I Need Your Love - Is That True?  How to Stop Seeking Love, Approval, and Appreciation and Start Finding Them Instead, Byron Katie)

帯には、神田昌典さんの推薦の言葉。

「一生役立つ本としてお薦めします! 恋愛関係について書かれている本なのに、じつはビジネスの場でもとても役立つ。本書の四つの質問をすることで、あなたは自分自身の問題点に気づき、許せない相手にも心からの感謝を捧げられるようになるだろう。」

 

探すのをやめたとき愛は見つかる―人生を美しく変える四つの質問

 

私、この本のタイトルを読み間違えていたんだな、と最近になって気づきました。

当時は、「愛を探すのをやめたら、愛がどこかからやってくるよ」と理解していて、

だから、愛を求めるのをやめようとしてみたり、

いや、でも求めなかったらやっぱり愛はやってこないんじゃないの?と疑ってみたり。

 

そうじゃなくて、この本のタイトルが言っているのは、

「探さなくても、もう、愛は目の前にあるんですよ。あなたはもう愛で包まれているんですよ。」

更に言うなら、

「あなた自身が愛の存在なんですよ」

ということなんだと、ようやく腹落ちしたところです。

まさに、原題の英語のタイトルそのまま。

本に書いてあるんですけどね。頭でわかるのと、実感を伴って腹落ちするのは、だいぶ違うことです。

 

自分を苦しめるのは、「現実」ではなく信じている「考え」

心理学で、Irrational Belief(イラショナル・ビリーフ)という考え方があります。

直訳すると、非合理な思考、非合理な信念。歪んだ思考、と言ってもいいと思います。

本人の頭の中では、絶対そうでなくてはならないという「思い込み」や思考の癖、のようなものです。

渦中にいる本人にとっては疑いようのないほど正論なのだけど、一歩も二歩も引いてみると、「それ本当に?」というものです。

著者のバイロン・ケイティは、精神科医や心理学者ではありません。

むしろその患者側で、30代で重度のうつ病になり、約10年間苦しみ、うち2年間はベッドからほとんど出られない状態になったことがある人です。摂食障害から太り、子供にも当たり散らし、何度も自殺を考えたそうです。

摂食障害の社会復帰センターに隔離されている時に目が覚めます。

「自分を苦しめるのは「現実」ではなく信じている「考え」だということ」、「あるがまま(=現実)に反することを信じると苦しくなり、信じなければ心が安らかになる」ということに気づきます(p.302, 訳者あとがき)。

彼女が自らの体験から、自分を苦しめる歪んだ思考に気づき、それを検証し、手放そうとして生まれたのが、後述する4つの質問のワークです。

コーチングやカウンセリングでも使えます。

 

誰もが持ってしまいがちな「考え」

「話しかけても、笑顔で応対してもらえなかった」

「メッセージが既読スルーされた」

「提案書にいい反応をもらえなかった」

「感謝されなかった」

 

こういう、日常にどこでも起こり得ることに、私たちは簡単にいちいちイライラしたり、落ち込んだりします。

 

その背景に最もよくある信念は、

「私は人に愛されることが必要」

「私は人に認められなくてはならない」

というもの。

 

それは、さらには、こんな考えにもなっていきます。

「私は愛されるべきだ」

「私は認められるべきだ」

 

これらの「考え」を信じ込んでいると、他者からの愛や承認を無意識にいつも求めるようになり、失恋、離婚、昇進できない、などのことは、もう、死にたいくらい耐え難くなります。

そして、「現実」をあるがままに受け止めることができなくなります。

 

現実に起きていることは、例えば、

メールを送った。相手は読んだ。返事がない。

それだけ。

 

相手は忙しいのかもしれない。

その内容に興味はないのかもしれない。

 

そこに「愛があるならすぐに返信すべきだ。愛があるなら私の関心ごと全てに相手も関心を持つべきだ」などの思い込みがあるから苦しくなる。

まるで、返信がない=愛されていない、とでもいうように。

 

もしかしたら、本当に相手はあなたにうんざりしているのかもしれない。相手がそう白状したならば。

でも、そしたらそれもそれで現実。

相手が抱く気持ちについて、私たちはどうこうすることもできない。それはそのまま認めるしかない。

 

4つの質問で自分の「思考」を検証する 

このイラショナル・ビリーフを検証していくのが、ケイティのワーク=4つの質問です。

自分の「考え」を問い直し、見つめ直し、歪みをなくしてゆく。

 

四つの質問

・それは本当ですか?

・それが本当だと、絶対に言いきることができますか?

・その考えを信じると、あなたはどうなりますか?

・その考えがなければ、あなたはどういう人になりますか?

考えをひっくり返して、それぞれの「ひっくり返し」が、もとの文章と同じくらい本当か、あるいはそれ以上に本当であることを示す三つの例を挙げてください。(p.26)

 

例えば、「彼は私のことを愛しているならば、私の要求に応えるべきだ」という考えで書きながら即興でやってみます。

 

それは本当?

ーそうあって欲しい。

それは絶対に本当と言い切れる?現実は?

ーそれは相手が決めること。絶対にそうする訳ではないかもしれない。実際、現実にはそうなっていないこともある。

その考えを信じると、あなたはどうなる?

ー要求に応えてくれないとイライラする。愛されなくなったのではないかと不安になる。

その考えがなければ、あなたはどういう人になる?

ー相手が思った通りのことをしてくれるかどうか、ということを心配しなくなる。もっと楽になる。安心する。

ひっくり返して。

私は私のことを愛しているならば、私の要求に応えるべきだ。確かに。私は私の要求にもっと自分で答えることができる。自分で自分を満たすことができる。(ケイティ的には、そのための方法を3つ挙げるんだと思います。)

さらにひっくり返して。

ー私は彼のことを愛しているならば、彼の要求に応えるべきだ。確かに。私は彼の要求にどれくらい応えていただろうか。(ケイティ的には、彼の要求を満たす方法を3つ挙げる)

 

この、シンプルな感じ、ある意味むちゃくちゃ強引な感じが、とてもパワフルです。

 

人間は、なかなかひとりでは自分の思考の枠の外に出ていきません。

それ以外の思考があると知らないからです。

または、知っていても、自分で考えたくないことは避けてしまうからです。

コーチやカウンセラーは、その外にある見方を一緒に探しに行って新しい考え方を試すことをサポートしてくれる存在です。プロフェッショナルと一緒にやった方が、より多くの可能性に出会え、痛みを聞いてもらうことで、より進みは格段にはやくなりますが、一人でやってみる方法として、この4つの質問はパワフルです。

 

そして、やってみて気がつきます。

自分が「こうあるべき」と思っていたのは、本当はそうではないのかもしれない、

自分で自分を狭いところに閉じ込めていたのかもしれない、

そしてもっと別の見方をしてみることができるのかもしれない、

ということに。

 

自分が解放されていくと、自分の周りの人も解放されていきます。

自分が楽になればなるほど、周りの人も、あなたと一緒にいることが楽になり、楽しくなります。

 

自分で自分を愛することが、実は一番難しい 

上の例で気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、要はこういうことです。

 苦しい人間関係(配偶者、母親、職場のだれかなど)についての問い直しはすべて、ストレスは自分自身の考えによって引き起こされたということをいつも教えてくれます。問題なのは他人ではないのです。それはあり得ません。そして、ひっくり返しをすると、苦しい考えの反対が、同じくらい正しいか、もっと正しいということがわかります。どこかの時点で、あなたは「私は自分自身に忠実であるべきだ」「私は自分自身を理解するべきだ」、そして究極的には「私は自分自身を愛するべきだ」というような文章に到達します。(p.243)

そんなの知ってるよ。と思う方も多いと思います。

 これはあなたにとっては耳新しいことではないかもしれません。ほとんどの人が、友人や、家族や、人生相談助言コラムニストから、自分自身を愛するべきだと言われたことがあるでしょう。でも、どうしたらできるのでしょうか。ひっくり返しを生きることなんてできないように見えるという事実ですら、自分を苦しめることがあるのです。「私の何が問題なのだろう? なぜ私は自分を愛せないのだろう?」 このプロセスを強制することはできません。できるのは、問い直して、何が真実かを見つけることだけです。

 自分の苦しい考えを読み解いていないのであれば、バブルバスに行って、ろうそくに火をつけ、ポジティブアファーメーション[訳注:自分に言い聞かせるポジティブな言葉]を唱え、あらゆる方法で自分自身を甘やかしても、ひとたびバスタブから出ると、同じ考えが戻ってきてあなたに取り付くのです。そういうやり方はまるで、たぶらかしみたいなものです。たぶらかそうとしている相手が自分だというだけです。

 この章は、自分自身をたぶらかしたりだましたりするためのものではありません。ちょうどその反対です。だまされているあなたを救うためのものです。他人を愛することの妨げになるのは、自分の思い込みを信じるということだけです。そして、あなたは、自分自身を愛するうえでもそれが唯一の障害物だということを理解するようになるでしょう。(p.243-244) 

 

このプロセスの中では、自分の見たくなかった部分、見ることを避けてきた部分を見ることにもなります。

恥ずかしくて消し去りたい過去。

誰にも言えないこと。

傲慢な自分。

有言不実行の自分。

自分を棚に上げている自分。 

 

私たちは、みんな、自分に都合よく生きてる。

 

そう聞くと、このプロセスを踏むのが怖く思えるかもしれません。

 

いいニュースもあります。

 

本の中で、たくさんの事例(外国人ですが)が取り上げられていて、あ、自分だけじゃなかった、と思えます。

そう、みんな、同じです。

 

更に、このプロセスの過程で、その醜いはずの自分、それと格闘する自分をも愛せるようになっていきます。

もちろん、この本1冊やったらそうなる、ということではなくて、これは一生かけてやっていくようなことだとも思います。

そして、不格好な自分も、すべて自分にとってのリソースとなっていきます。

自分が本当にwholeであることが感じられるようになっていきます。

 

愛は呼吸を否定しません。制限なく、自分の存在を通して自分自身を認めることをとても楽しみます。(中略)愛はとても広大なので、あなたにできることは何もありません。あなたにできることは、愛でいることだけなのです。(p.289)

 

実は、本棚がいっぱいになってきたので、この読書ブログを書いたらこの本は古本屋さんに持って行こうかなと思っていたのですが、久しぶりにパラパラめくったら、ここには挙げきれないほどの素敵な言葉が沢山あって、まだまだ手元に持っておこうと思いました。

 

自分を苦しめる信念から、私たちが解放されますように。 

 

 

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 バイロン・ケイティといえば、この本が有名:

ザ・ワーク 人生を変える4つの質問

ザ・ワーク 人生を変える4つの質問

 

 (どちらの本も「4つの質問」は上記の引用と同じです。)

 

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