千代田区一ツ橋(最寄駅:神保町駅、竹橋駅)にある小さな食堂「未来食堂」についての本です。著者は店主。
「ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由」(小林せかい 著、太田出版、2016年12月初版)
「ただめし」を出す食堂
きっかけは忘れましたが、未来食堂のことはだいぶ前から知っていて、ずっと気になっていました。「カンブリア宮殿」や「ガイアの夜明け」で取り上げられたり、店主の小林せかい さんは、日経WOMANのウーマン・オブ・ザ・イヤー2017を受賞されたりしているので、そういうタイミングで知ったのかもしれません。
昨年、ようやく行くことができて、その時に、この本も買ってきました。
気になっていたのは、この食堂がやっている「ただめし」というというユニークな仕組みに興味が湧いていたからです。
「ただめし」とは、文字通り、無料のごはん。
店の入り口に「ただめし券」が貼ってあり、もし、この日の食事代を払うことができないときは、誰でもこの「ただめし券」を使うことができます。
これはお店の慈善活動か?ほどこしか?というと、そうではなく、この「ただめし券」を貼ることができるのは、お店の手伝いをした人です。店主お一人で経営・運営しているこの食堂を、清掃や接客、キッチンなどでお手伝いしたとき、「まかない」食を食べる代わりに、誰かのために1食分の「ただめし」の券を貼っていくことができる、という仕組みです。
金銭を介さない経済
お手伝いをすること・する人のことを、このお店では「まかない」と呼びますが、50分の「まかない」をすれば、その日、お金を持っていなくても、食事をさせてもらうことができます。
あるいは、その権利を、自分が知らない誰かのために「ただめし券」として置いていくこともできます。
逆にアルバイト代のようなものは出ません。
労働することで、その分の食事をいただいく。あるいは、誰かにその食事をあげる。
これは、アルバイト代をもらって誰かにそのお金をあげるというよりも、人が介在するあたたかみを感じます。
「ただめし券」を使う人は、それを貼っていった人のメッセージを受け取りますし、
「まかない」をする人も、自分が身体を動かしたことで誰かが困ったときに一食食べられるかもしれない、という気持ちになります。
後述しますが、この「まかない」は本当に誰でも受け入れてもらえます。その分、店主の方は大変なはずです。本当は、一人で全部やってしまった方がはやいかもしれず、誰かに無償の食事を提供したければ、「ただめし券」などという仕組みを使わずとも、お店側が1食分のコストを出して食事を無料にしたり、お客から寄付金を募った方が、よっぽど効率的かもしれません。
でも、この「食」という生きていくのに一番必要なものを提供する営みと、社会で循環するエネルギーの中に私たちも入らせてもらえる、その仕組みが素敵だなと思います。
「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」
未来食堂のコンセプトは、「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」。
といっても、「ようこそ〜!!!」というような大袈裟な歓迎はありません。自分のペースで食べたい分だけ食べていける場所です。
ご自身が偏食だった店主ゆえの発想で、自分の普通をつらぬいて良い場所です。
驚くのは、このコンセプトが、上記の「まかない」さんにも適用されているところ。
お店にお客として訪問したことがあるということと、お店のルールを守る、という条件はありますが、それができるなら、誰でもやってみることができます。外国の方もやってきているそうです。
私も、いつか、いつか、と思っていましたが、今年ようやく「まかない」にチャレンジすることができました。
飲食というエッセンシャルな仕事に大きなリスペクトを持ちつつも、自分自身について不器用でトロいというコンプレックスがある私には、まかないを申し込むことは、とても勇気がいることでした。
私にもできることはあるだろうか、ヘマはしないだろうか、かえってお邪魔になるのではないか、など、いろんな心配と不安がありましたが、初めての人でも手伝えるように指示も出してくださり、掃除や片付け、配膳などしているうちに、気づけばあっという間に時間が経っていました。
余計なことを考えずに身体を動かして働くことは、とても気持ちの良い体験でした。
店主の小林 せかい さん(ご本名!)は、もともとは東工大数学科を出て、IBMやクックパッドなどでエンジニアとして働いてきた方。なのに小さな食堂に転身するという、そのキャリアひとつとっても個性的な方です。いろいろと聞いてみたくなることは、ご著書に書いてあります。気になったら、数冊出ている本のうち、どれか読んでみてください。食堂でも買うことができます。
未来食堂のこと、「まかない」体験のこと、ポッドキャストでも話しました。
文字では伝えきれないことも話していますので、よかったら聞いてみてください。
独立後のリアル Episode 326
未来食堂まかない体験「普通でいることは難しい」
お店の情報はこちらから。
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関連書籍
中国でも出版されているようです。




