ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

二月の勝者

あまり漫画を読む習慣がないですが、友人からのオススメを受けて読んでいます。

二月の勝者 ―絶対合格の教室―(1) (ビッグコミックス)」(高瀬志帆 著、2018年2月初版、小学館)

面白いです。

リアルさがすごい。

今日からドラマも始まるようですね。

 

二月の勝者 ―絶対合格の教室―(1) (ビッグコミックス)

 

中学受験をテーマにした、塾を舞台に展開するストーリー。

私は中学受験の塾に数ヶ月ほど通ったことがありますが、親の転勤によりその必要がなくなったので受験自体はしておらず、子どももいないので、中学受験をリアルに体験したことがありません。

それでも、相当リアルに描いている作品だなと感じます。

絵もとても丁寧で、臨場感あります。

自分が親として当事者だったら、どんな気持ちで読むかしら、読めるかしら、などと思ってしまいます。

 

いろんな子ども、いろんな親、いろんな家庭。

それぞれにドラマがあって。

それがとても細やかに設定されていて、とてもよく描かれてます。

 

テーマは中学受験でも、そこにある人間ドラマは普遍的。人生の話。

親の心配、親の不安、親のプライド、親のエゴ。

子どもの気持ち、子どもの自我。

子どもの知らない親の世界。

親の知らない子どもの世界。

子どもが成長していく姿や、家族のあり方が変わっていくのが伝わってくるから、

だんだん、それぞれの子どもたちを応援する気持ちが高まります。

 

受験の仕組みや塾の仕組み、親子の関係、親の心理、子供の心理、日本の社会のあり様など、黒木先生の核心つく言葉が、グサリというのを越してもはや清々しい。

コーチとしても、ワークショップをリードする身としても、刺さる言葉が沢山ありました。

 

次巻以降も楽しみです。

 

知らなかった世界

何事も経験していないことは知らないし、わからない。

読みながら、自分自身が私立高校を受験した時の感じが思い起こされたのですが、といっても、中学受験と高校受験はだいぶ違う。

一番びっくりしたのは、一つの学校を何回も受験することができたり、しかも複数回受験する方が加点される場合がある、という話。

説明会で対策を教えてくれる学校があるという話も驚きでしたし、

午前・午後で2回受験するとか、

当日の合否発表で翌日の受験校を変えるとか、

塾ってこんなにお金かかるのかーとか、

へーー!と目を丸くしたりしながら読みました。

中学受験だと受験者数が少ないから「偏差値」意味するレベルが高校受験とはだいぶ違うとか、なるほど、とこれも目から鱗。

 

最新刊の13巻では、中学受験生とはまた違う、私の知らない世界の子供たちの様子もより具体的に現れてきて、これもまたまた鱗が落ちる。

 

何かに思い切り取り組む体験

中学受験をした方がいいのか、しない方がいいのか、私はわかりませんし、もし私に子どもがいたら、きっと、かなり迷うだろうと思います。

でも、正直、小学生の頃から塾に通い詰めるって大変そうだな、公立じゃダメなのかな、と思っていたところはあります。

この漫画を読んで、少し考え方が変わりました。

何かに思い切り取り組む経験、わからないことがわかるようになる面白さ、できないことができるようになる喜び。

こういうのは、人間にとって、大事な体験で。

それは日常生活の中にも存在するし、スポーツや将棋や囲碁や芸術などでそれが突出する子も存在する。

スポーツや将棋や囲碁や芸術などと同じように、勉強で頑張りたいという子もいてもおかしくない。

そういう気持ちや思いがあるなら、それをチャレンジする場があってもいい。これも、真剣勝負の熱い戦いの場。

ただ、これを全員が目指さないといけない、とか、目指す子がすごくて、目指さない子はすごくないとか、そういうことになるとまたややこしい。

また、受験というのが本当に限られた日の勝負であることや、それによってその先の6年間や将来が左右されるかもしれないものに思えること、実際には金銭的な余裕がないとできないものであること、さらに、それらからくる数々のストレスはどうにかならないものかな、、、と思います。

 

その他、つらつらと思うこと
  • 日本の教育は、いつまで東大を頂点としたピラミッドなのだろう。そこが変わらないと、今の仕組みはずっとこのままのような。
  • 多様性、多様性、と世の中は言うけれど、この仕組みは、小さい頃から同種の人たちを集めて他と分けていくことにつながっているような気がする。
  • 子どもって、やっぱり親が願っていることをくみ取って行動したり、考えを言ったりするものなんだなぁ。よくも悪くも。
  • 頑張っているところを認知してもらえると嬉しいものだよね。
  • 中学受験は、親のメンタル。そこをサポートするのも、塾の先生の大事な仕事なのですね。
  • 受験って家族一丸となってやるものだなぁ、と。高校受験の時ですらそうだった。改めて、親に感謝。
  • どんな世界もライバルって大事。友達って大事。

 

あと、本題でないところの気づきとしては、

漫画の単行本を買い揃えていくのは初めての体験なのですが、これ、揃えていくと、結構高くなりますね・・・。

でも、描くことに注がれているエネルギーを思えば、当然のことのようにも思います。

 

第13巻に出てきたヒトデ(ローレン・アイズリーの「星投げびと」)の話は、私が関わっているCTIジャパンでも昔から使っているお話で、おお、こんなところにも!と驚きました。

 

以下は語録。ネタバレの恐れがありますので、漫画・ドラマをこれから見る方は、ここまでになさってください。(子どもの名前のところは「お子さん」にしました。)

 

 

黒木先生語録:

「自分は天才」とでも思ってるのか?(中略)
勘違いも甚だしい。
君達が合格できたのは、父親の「経済力」そして、母親の「狂気」(第1講)

小6での(サッカーの)中断はしたくないのに、高校入試のために中3で中断するのはOKなんですか?小6で受験し、中高一貫校に入ったら、15歳の伸び盛りに部活を中断することなく打ち込めます。大学附属なら更に18歳での中断もナシ。なのになぜ小6という時期にこだわるのか、不思議です。(第3講)

なんで「勉強ができる」って特技は、「リレー選手になれた」とか「合唱コンクールでピアノ弾いた」とかと同じ感じで褒めてもらえないんだろうね?
「クラスで一番足が速い」子を「みんな」が褒めるテンションで、「クラスで一番頭がいい」子も褒めてくれればいいのに。(第12講)

塾講師は「教育者」ではなく、「サービス業」ですよ。(第16講)

例え話になりますが、(中略)この場合の目的地は、「最終学歴」としての「大学」です。
(中略)
普通列車でも素晴らしい景色の目的地に着くことが可能です。
(中略)
我が子をなるべく確実に目的地に着かせたい親御さんは、特急券を買い求めます。つまり、「私立中学への進学」すなわち、「中学受験」は特急券です。
(中略)
そうです、このシステム、お金をかけた者が圧倒的有利。(第16講)

何も難問までできなくても、自分の実力で解ける範囲の問題をしっかり解くだけで確実に点数が上がる。
「自分の実力で点数と偏差値を上げることができた」
この体験は、どんな喜びにも代えがたい。(第19講)

子どもは裏切ります。言うことを真に受けてはいけません。(第21講)

テキストの中だけが勉強ではない。外の世界と繋がりましょう。(第27講)

大変ですね、今の小学生は。放課後の居場所を得るのもカネ次第・・・!(第39講)

「中学受験をしよう」と決めたご家庭にはいろんな事情がある。その生徒がいかに幼く勉強に向いていないからと行って・・・「塾に通わない」理由にはならない。(第40講)

(のんびりしている子供にかける言葉として)オススメの言葉があります。それは、「勉強のことに関してはあなたに任せているからね」(第42講)

「ジャイアントキリング」を成し得る可能性。それは、「自分の頭で考えているか」。(第48講)

人間 誰しも歩いたことのない道は不安です。ある程度の道筋を先に知ることでその不安を軽減できます。(第50講)

「情報」も「塾」にお金を払って買うものです。(第54講)

(学校訪問について)「仲良し同士で連れ立っていくな」と。家庭によって価値観は違います。(中略)他人の意見を無意識にインプットしてしまい、自分の価値観で物事が見れなくなる。なのでご家族だけで訪問してくださるのがベスト。(中略)そこの学校にいる我が子を想像して、しっくりするか。(第54講)

小学生女子は人間関係で簡単に成績が落ちます。(第57講)

中学受験での「途中脱落」は・・・受験生本人よりも、親の方が先に音を上げる。
生徒自身は思ったよりタフです。親のほうが不安に耐えられない。よって親のメンタルを整えることが最優先事項。(第59講)

彼を「船」に乗せたのはあなた方だ。なのに燃料が尽きたからと言って、船から彼を降ろすのですか?今まで3年間も”あなたの目指す「港」はとても魅力的な場所”と語り続け、夢を見させたのは誰ですか?(中略)「港に着くまで船上で鼓舞し続ける」それが、港の夢を見せてしまった者の責務では?(第72講)

毎年、受験を見守ってわかることがある。子どもたちは勉強が嫌いなのではない。(中略)では、何が勉強を嫌にさせるのか?勉強をめぐる親との争いが嫌なんです。(第77講)

中学受験は本人の力になるばかりでなく、家族にとっても「やってよかった」と思えることも多い。・・・しかし、しばしば親が熱くなり過ぎる。
そもそも「子どもの人生にとって良かれ」と思って始めたはずの受験が、度を超してしまい「本来の目的」すら見失ってしまうことがまれにあるのは何故なのか。
「合格する」ことばかり考えて、肝心なことを忘れている。「その後」があると言うことを。
「私立校はバラ色」というわけではないのです。(第78講)

小学生の受験は中高生と違って、親とのケンカひとつでパフォーマンスが激しく落ちます!
この時期まできたら、受験の結果はメンタルで決まります!(第81講)

この先いったいいつまで、お子さんの足元の小石をどけていくおつもりですか?(中略)
今、この時期こそ、「待つ」ことが「親の仕事」ではないでしょうか。(第94講)

お母様は・・・お子さんに、今後、どのようになってほしいのですか・・・?(第95講)

お子さんは「いつ」、「自立」するために転んで怪我をする経験を積むのでしょうか?「今」ではないならいつ?(第95講)

一瞬の躊躇が後悔につながります。(第108講)

(当日について)重ね重ね・・・「普段通り」が一番です。特に前日は学校でしっかり疲れてもらいましょう。体育なんかあるといいですね。
しっかり寝た子は強いです!(中略)
勉強しなくていいです、体力使わせて早めに寝かせましょう。(第108講)

親の仕事は「体調管理」!「出願準備」!「入学手続き」!!(第109講)

「勉強なんてどんな場所でもやる気さえあればできる」って言う人がいるけど、夜中に酒を飲んで騒ぐ大人がいる家の中学生。
狭い1LDKで大家族の兄弟姉妹の世話を任される高校生。
親を想う子が多いのか、親を悪者にしたくなくて、自分の置かれた状況を人に話さない。
親も必死なのを知ってるから、不満を口に出すことを我慢してしまう。
だから見つかりにくい、本当に困ってる子ども達。(第113講)

 

桂先生語録:

佐倉ちゃん。あなたのいいところは、生徒の気持ちに寄り添えるところなんだけど、同じテンションで親御さんの気持ちも考えてほしいかな。(中略)
親御さんたちはそもそも・・・「我が子には幸せになってほしい」「そのためには親である私が失敗してはならない」そんなプレッシャーを背負いながら戦いの日々を送ってる。
みんな我が子のために必死なのよ。親が熱くなるのはしょうがない。
だからせめて私たちジュクコーは冷静でなきゃね。(第67講)

 

白柳先生語録:

もしその子が自分の意志で何かを決めることがあったら、その本人が決めたことが一番じゃねえかな。
だってそうだろ?こどもの人生はその子のもんだ。親のもんでも俺たちのでもない。(第74講)

 

木村先生語録:

(カンニングについて)敢えて子どもの立場になって代弁するとしたら、それなりの・・・動機があります。例えば、「悪い点を取ると誰かにきつく叱られる」(中略)
浅はかですが・・・僕はこれが一番でした。「お母さんの喜ぶ顔が見たい」(第99講)

「頑張らない努力をしている」のかも・・・
「私はまだ本気出してないだけ」ってやつです。
文字通り「頑張らない」ことで、自分の心を守ってるんじゃないかな・・・
僕達大人はつい「頑張ってる姿が見たい」って思ってしまいますけど、「頑張る」「全力を尽くす」こと自体が勇気のいることなんですよね。
とことん頑張って、その結果、思った通りの成果が出せなかったらそれこそ辛すぎる・・・
「本当は本気出してたら私だって」っていう心の拠り所を、無意識ながらも準備してるのかもしれません・・・(第100講)

もし全落ちしたとしても、「うちはあくまで難関校を目指していた」で、話は終わりです。
むしろ、潔いというか、カッコイいいとすら思えませんか?(第100講)

 

生徒語録:

「そんなに無理しなくていいのよ」「自分に向いていることで頑張ればいいのよ」
ずっと僕達にそう言ってきたけど、僕達に「向いてること」って「ママが決めること」なの?
・・・僕はただ、最初から「できない」って決めてほしくなかっただけなんだ。(第84講)

一番上を目指してみたいんだ。(中略)カッコイイ受験したい・・・!!(第85講)

おれ、自分でも今までないくらい楽しく勉強できてるんだ。同じ目標の友達がいるから!(第87講)

 

親語録:

もう、私たちがついていないと一歩も踏み出せない、小さな子どもじゃないのね・・・
最初からそうだったんだよ、僕達が子育てで目指さなきゃいけないことは。
つないでいた手を離してもひとりで歩けるようにすることだったね。(第97講)

 

 

この漫画で使われている参考文献:

こんなに沢山調べて描いているというだけで尊敬です。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

  • 作者:中室牧子
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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むこう岸