「人はいつか死ぬものだ」という事実を、日々あまり意識していない人と、よく意識している人がいると思います。
私はどちらかというと後者です。
ただ、それは、「いつか命が尽きる日が来る」という概念的な理解であって、
家族や自分がどう最期を迎えるのか、その時自分はどうありたいのか、ということは、あまり想像しきれていません。
そんな私を知ってか知らずか、友人がおすすめしてくれた本です。
「4000人のいのちによりそった“看取りの医者”が教える 死ぬときに後悔しない生き方」(内藤いずみ 著、総合法令出版、2019年1月初版)
人は生きてきたように死んでいく
この本は、「在宅ホスピス」という形で、多くの人の最期に立ち会ってきた医師・内藤いづみさんによる記録です。
著者が看取った20名の方々と、ご健在のご自身のお母様の物語。
とても読みやすいデザインです。
死を意識した時、「だから後悔しないように生きなくちゃ」という言葉はよく聞きます。
でも、じゃあ、何をしたいの?と聴いてみると、よく出てくるのは、もっと旅行をしたいとか、やりたい仕事をしたいとか、そういうお返事です。
ではそれを十分にやった後はどうか。
あるいは、それを仮にやらなかったとしても、
本当に最期の最期のときはどうか。
最期の時、人が欲するのは、
大好物の食事だったり、毎日続けてきた畑仕事だったり、家族の洗濯物を畳むことだったり、家で眠ることだったり、麻雀だったり、
つまりは、それまで日常の中で続けてきた好きなものや好きなことです。
「人は生きてきたように死んでいくのです。」(p.75)
本当にその通りだなと思えました。
そう思うと、あまり気負うこともないし、また、余命宣告されるまでやりたいことをあと伸ばしにする理由もありません。
このことは、看取る側の在り方にも、大切なことを教えてくれているとも思います。
もう治療のステージを終えて旅立ちが近くなったとき、本人が本人らしいと満足できる形で過ごせるようにしてあげられることが、最大級の愛情であり最も贅沢なケアのように感じました。
看取る側の人は、最期の時間を過ごす人に何をしてあげればいいのかと悩まれることが多いですが、最期まで本人がその人らしく過ごせるようにと考えればいいのかもしれません。
死が近づいても、騒ぐ人は騒ぐし、寝る人は寝るし、威張る人は威張ります。必要以上に明るくする必要もなくて、淡々と生きる人はそのまま生きていけばいい。人は生きてきたように死んでいくのです。
人生の最期まで、自分らしく生きていくことができる。それはとても幸せなことだと思います。反省や後悔、未練を飛び越えて、それまでと同じように生きる。それは自分の人生のすべてを肯定することになるのではないでしょうか。(p.75-76)
息が絶える瞬間まで、私たちは「いま」を生きている
今日生きている私たちは、「今日」というまとまったブロックのような時間を消化しているのではなく、一秒一秒連続している「いま」という毎瞬毎瞬を生きています。
その一つ前まであった瞬間の次が来なくなったら死んでいる、というだけのこと。
だから、私たちは、最期の瞬間まで「いま」を生き続ける。
今ここにある「いま」を精一杯生きたとしても、
いつかは人と別れなくてはならないこと、
いつかは自分もこの世界に別れを告げなければならないことに、
私はいつもなんとも言えない切なさを感じるのですが、
それが「生きる」ということなのかなぁと、思います。その切なさもひっくるめて。
在宅ホスピスの医師としての仕事を、「「いまを生きているいのち」を支えること」と表現されていることにはとても共感しました。
私自身のコーチングで大切にしているのも、結局ここだな、というふうにも感じました。
最近は「終活」という言葉をよく聞きますが、ちょっとすっきりしない言い方だと思います。言葉の奥のほう、目標のように「死」があって、そこに向かって生きている。「いま」を生きるという感じがしません。だから楽しくありません。
そこを少し違う形で捉えることができないかなと思います。私は終末期のケアをしていますが、そこで大事なのは、「いまを生きているいのち」を支えることです。当然ですが、何かを終わらせよう、片付けようとしているわけではありません。
私たちの目標は死ぬことではなく、いまを生きることです。最後の日のために今日何をすべきか、ということではなく、今日をクリアにしておくことで、明日をもう少し深く生きることができる。そうした準備ができればいいなと思います。
(中略)
終活も、死ぬた目に荷物を少なくしようというのではなく、新しい時間と空間を作るためだと考えたら、その過程もポジティブなものに変わります。その結果、明日はより充実したものになるはずです。そうした一日一日の連なりを後から振り返ってみた時、迷いなく「良い人生だったな」と思えるのではないでしょうか。(p.222-223)
人の数だけ生き方、旅立ち方があり、そして、残る側の見送り方がある。
なかなか知ることのできない、人の旅立ちと見守る家族の様子を記してくれている本書からは、読者はきっと、自分や大切な人の「いのちを自覚する」(p.10)ことになると思います。
それは、「いま」を生きることを豊かにしてくれ、いずれ来る死への恐怖を和らげてくれるだろうと思います。
できれば、こんな姿勢で緩和ケアに関わってくれる医師の方に、私も看取っていただきたいなと思い、そういう医療関係者が増えてほしいなとも思いました。
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以前にnoteにこんな記事も書きました。
本書に出てくる本:



