ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方

以前に紹介した「お金の減らし方」(森博嗣 著)が、実はお金を増やすヒントが書いてあるのに対して、この本は、本当に、お金の減らし方・使い方の本。

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 」(大江英樹 著、光文社新書、2023年3月初版)

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 (光文社新書)

 

お金とは何か

私自身のお金に対する考え方は、概ね著者の方と同じだったので、共感しながら読みました。

共感する点はここに集約されるかな、と思います。

大事なのはお金ではなく、「モノ」や「サービス」であり、それを提供してくれる「人間」です。世の中の問題はお金が解決するのではなく人が解決するのです。「お金」はそうしたモノやサービスを手に入れるための道具にすぎませんし、問題を解決してくれた人に対する”感謝のしるし”として存在しているのです。(p.5)

あえて失礼なことを言わせていただくと、「お金が感謝のしるし」ということを理解していない人は、残念ながら「あまりお金のことを真剣に考えていない人」、そして「お金に振り回されている人」だと思います。そしてそのことがわかっていないと、多くのことを見落としてしまいかねません。(p.93)

 

私としては、ここにさらに言語化して乗せるなら、「お金を介した人との交流、またその体験」というのが入るとも捉えています。

だいぶ前のことですが、かなりの貯金額があると自他ともに認める会社勤めの友人と話していた時、彼が「お金は、自分でやる手間を代わりにやってもらう対価として支払うもの」と言っていて、それには違和感を覚えました。

具体的には、例えばコンビニで100円のコーヒーを買うのは、自分でコーヒーを淹れる手間を代行してもらっているから、という考え方でした。逆に、全部自分でやればお金は使う必要がない、となります。

なので、1杯500円もするコーヒーは意味がわからない、と。

その人の貯金額は私より遥かに大きく、彼は私よりはるかに”リッチ”だったわけですが、この考え方を聞いて、私は正直なところ、豊かさは感じず、むしろ「寂しい考え方だなぁ」と思ってしまいました。

たとえば、カフェでコーヒーを飲むとき、私としては、その代金を払うとき、
美味しいコーヒーを淹れてくれること、
気持ちの良い接客をしてくれること、
この空間に居させてくれること、
などへの感謝を込めて払っています。

さらに言うならば、この場所がなくならないように経営し続けてくれていることへの感謝と、この先も続けてもらうための応援もあります。

 

そこにお店やサービスがあるのは当たり前ではない

この「さらに」の部分の考え方は、自分が自営業になったことも大きく影響しているだろうと思います。

やってみればわかることですが、毎日、毎月の売り上げをつくっていくことは、決して当たり前ではありません。

だから、この場所にそのお店があることも決して当たり前でない。

そこになくなったら自分も寂しいと思うお店なら、利用して応援したいと思います。

私自身は場所に縛られず在庫も持たない業態なので、その逆に、賞味期限のある在庫を扱い、お店という固定費があり、自らお客さんのところに出向くこともできない業態である飲食店や小売店(青果店・お肉屋さん・お豆腐屋さん...)などには、とりわけ敬意を持っています。

だから、「今日のおすすめ」があれば、まずはそこから選んでみようと思うし(多分、早く使いたい食材なんじゃないかという勝手な想像)、店主が「これはぜひ食べてほしい」と思うものがあればそれは注文してみようと思います。

街の本屋さんも同様です。

自由が丘の駅前の本屋さんが閉店した時、嘆きの声を方々で聞きましたが、潰してしまったのは、買いに行かなかった自分たちも閉店に加担しているとも言える。

そんなわけで、立ち寄った本屋で欲しいものがあった時は「後でAmazonで買おう」ではなく、そのままそのお店で買うようにしています。

 

自分の願う社会の形にお金を使う

そんな気持ちでお金を使っていると、「お金を通じて社会とつながっている」「世の中にお金を回している」という感覚になって、豊かな気持ちで過ごせるなと感じています。

特に、個人で経営されているお店などを利用するときは、より一層そういう感覚になります。

植物が生長するのと違い、目の前に現金を置いておいても、いつまで経っても自然に増えるわけではありません。お金を増やしたいのなら、世の中にお金を回していかなければならないのです。(p.102)

 

もちろん、事業者側にも時代や私たちの生活の変化に合わせて、商品や売り方など変わっていく努力をしてほしいけれども、買う方も、ただコスパ重視の消費をするだけではない姿勢も必要だろうと思います。

 

「得か損か」だけではなく、自分は何にお金を投じているのか、そのお金は回り回って何に使われているのか、そこに意識を向けてお金を使っていくことが、願う社会を実現するための大河の一滴になるように思います。

 

投資も寄付もしない。すなわち日本人は、”人のためにお金を使う”ということをいかにしていないか、ということがわかります。(p.105)

この指摘は、海外で生活したり旅行した経験を振り返っても、そう思います。

日本でもクラウドファンディングなどが広がりつつあるのは、ここに新しい風を吹かせてくれているように感じています。

 

ちなみに、こういう生活だと財布の紐がゆるゆるなのか、というと、そうでもなく、逆に、応援したくないと思うものにはお金を落とさないという、シビアさも持ち合わせるようになりました。

「みんなが買ってるから買う」みたいなことはほとんどなくなりました。

また、自分自身が提供するものに対しても、無意味に安売りしたりすることはなく、自分が適切と思う金額でビジネスをするようにりました。

 

今はこんなふうに語る自分自身も、会社員時代はこういう考え方をしたことがなく、天引きされた給与の手取り額をどれだけ多く残せるか、つまりはどれだけ節約できるか、自分のお金をどう自分にとって有効に使うか、ということにばかり意識が向いていました。

これでは、蛇口が閉まる方向です。これは経済全体にも良くないんじゃないかなとも思い、上記のような感覚をみんなが持つようになるためにも、どんな小さなことでもいいから、多くの人が自分でビジネスをやったらいいのに、と思ったりしています。

 

 

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お金の減らし方 (SB新書)

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