ここのところ、ここみちノートの方ばかり書き綴っておりましたが、本家・読書録も本当は取り上げたい本が沢山です。
昨年、退職してコーチとして独立するにあたり、日頃から大変お世話になっている方がプレゼントしてくれた本です。
ちなみに、その人のオフィスにはこの本が何冊もあって、私のように旅立ちを迎えた人には、決まってこれを贈っていらっしゃるようです。とても慕われている方なので、きっと何人もこの本を手にしたと思います。
頂いたそのときは何となく、すぐに読まず、取ってありました。
「Good Luck」(Alex Rovira氏、Fernando Trias de Bes氏 共著、田内志文氏 訳、ポプラ社、2004年6月初版)
正直、文学的にはちょっと物足りない感じもしたのですが(著者ふたりともがマーケティング業界かつMBAホルダーであることはそのことに影響しているのでしょうか・・・)、
メッセージはとてもクリアで、それをとてもわかりやすく、受け取りやすい形で、伝えてくれる物語でした。
帯によりますと「200万人に読み継がれる永遠のベストセラー」だそうです。
「運」と「幸運」
テーマは「運」と「幸運」は違う、ということ。
運は、呼び込むことも引き留めることもできない。
幸運は、自らの手で作り出せば、永遠に尽きることはない。(p.19)
物語は、大勢の騎士たちの中から、たったふたりの騎士が、「魔法のクローバー」を探しに7日間の旅に出る、というものです。
そして、黒いマントの騎士・ノットと、白いマントの騎士・シド、
それぞれに浮かぶ考え、取る行動、出来事に対する対応などから、
幸運をつくるとはどういうことなのか、
幸運を逃すとはどういうことか、
機会も、時間も同じだけ与えられているふたりの明暗を分けるのは何なのか、
というのが、とてもリアルにわかります。
幸運は、手に入れるものではなく、つくるもの
内容は、せっかくなのでご自身で本で読んで頂ければと思いますが、自分の身に置き換えても、周囲の人を見ていても、とてもよくわかります。
幸運をつかまないとき、人は、
仕事でも結婚でも、
どこかに「完璧な仕事」「自分にぴったりな仕事」がある、
どこかに「完璧なパートナー」「自分にぴったりなパートナー」がいる、
と思っている。
それを取りに行こうとしている。
今はそれに出会っていないだけ。
だから探さなくちゃ。
そして、踏み入れた世界がそのような場所でないと知ると、
「探し足りないんだ」「探す場所が悪いんだ」と
自分の勘の悪さや不運を呪って、また次の場所を探し始める。
どこかにそのような場所がある、
その場所を見つけさえすれば万事うまくいく、
その場所を見つけるのが自分のゴールだ、
とでもいうように。
「この特別な自分にこそぴったりなもの」を探していると言いながら、
うまくいった他人の例を真似しようとする。
まだ誰も見つけたことのないような幸運に巡り合うことを願いながら、
過去にそれがうまく行った実例や、確実にそれがうまくいく方法を知りたがる。
それを探しても探しても見つからないことを繰り返して、エネルギーも消耗する。
そのうちに忍び寄るのは、
不安、疑念、不信、自信の揺らぎ、しがみつき、焦り、傲慢、嘆き、諦め、競争心、取引、など。
ダークサイドな感じです。
探しに出かけているようであり、実は踏み出していない。
なかなか踏み出さない人は、いつまでも完璧な場所を求めている。
本当の幸運は、
既にあるものを取りにいくのではない、奪いにいくのではない、
まだないところに創るもの。
また、幸運は一度つくったら終わり、ではなく、つくり続けるもの。
いいサイクルから、ダークサイドに落ちるのも、あっという間です。
誰でも落ちます。いつでも落ちます。
ダークサイドに落ちたら、また意識的に、幸運をつくるサイクルに戻ってくる。その繰り返しです。
自分自身が幸運の一部となる
では、探す代わりに何をしたらいいのか?
幸運をつくるために、何をしたらいいのか?
本書のメッセージは、「下ごしらえ」。
幸運が訪れないからには、訪れないだけの理由がある。
幸運をつかむためには、自ら下ごしらえをする必要がある。(p.42)
幸運を作るというのは、チャンスに備えて下ごしらえをしておくこと。
だがチャンスを得るには、運も偶然も必要ない。
それはいつでもそこにあるものなのだから。(p.101)
準備すること。ケアすること。
幸運を招き入れる環境を育む。整えておく。
先述のこの本を贈ってくれた人から以前もらった言葉で、今でも心に留めていることがあります。
「素振りをしておくことが大事」
イチローさんも、高校時代は毎日10分素振りをしていたとか。
だから、いざその日が来た時にバッターボックスに立てる。打てる。
この本と通ずるものを感じます。
偶然しか信じぬ者は、下ごしらえをする者を笑う。
下ごしらえをする者は、なにも気にしなくていい。(p.82)
幸運の下ごしらえは、自分にしかできない。
幸運の下ごしらえは、いますぐに始めることができる。(p.109)
下ごしらえをするときに心がけること
具体的に何をするのか、というのは、その人が目指していることによって違うと思いますが、私が思う、どれであっても共通する大事にすべきことを3つ挙げてみます。
信じること
自分が目指しているもの、今つくり出そうとしている世界を信じること。
先日紹介した「リーダーシップの旅 見えないものを見る 」でも書かれていることですが、まだ世界には見えていなくても自分には見える世界を信じること。
楽しみながら
苦しいばっかりだと、さすがに心も折れてきます。
逆にプロセスを楽しんでいると、不安や疑念が寄りつきにくくなります。
目標と信念に忠実に(p.93)
どんな下ごしらえをするのがいいのか、というのは、結局のところ、自分に聴いてみるしかありません。
それがわかるようになる、ということ自体が、ひとつとても大きな下ごしらえであると言えるとも思います。
そういう意味では、コーチングなどで、自分の目標と信念を明確にするというのは、遠回りのようでいてものすごくダイレクトな下ごしらえと思います。
とにかく正しいと思ったことをやるしかない。今までもそうやって結果を残してきたのだから。(p.72)
書きながら、昔の自分だったらこの本をどう読むだろうか?とも思って、ちょっと皮肉だなとも感じました。
青い鳥症候群の真っ只中にいるとき、こういう本に出会わない可能性が、実は結構高い。(ような気がする。)
本の存在を知らなかったり、出会っても読もうとしなかったり。
また、あるいは、読んでも、心に響かない可能性があります。
そして、この本が言わんとする世界の片鱗を体験すると、
「そう、そういうことなんですよね」と、ものすごく響く。
下ごしらえを着実にしているときと、そうでないときの自分がとてもはっきりとわかるから、とても納得する。
これは、本書に限らず、どの本でも言えることだと思うのですが。
だから、歴史は繰り返す。
もし、今、この本に出会ったなら、これがひとつの下ごしらえだと思って、素直にこの本のメッセージを受け取ることをおすすめしたいです。
わずか120ページ、文字も大きく、行間も広く、読もうと思えばあっという間に読めてしまいます。
せっかくなので、あえてゆっくりページをめくってみてはいかがかな、と思います。
本に挟んである、歴史上の人物や著名人の幸運に関する名言メモも、素敵な言葉です。
さあ、こんな、先が見えない時期。
時間だけはたっぷりある。
どんな下ごしらえをしましょうか?
思い出す本:
(お気に召す本がありましたら、是非シェアしてください。必要な人に必要な本が届きますように。)