読書ブログ開設の1冊目は、精神科医・水島広子先生の「怖れを手放す アティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ」。
バイブル的に手元に置いている1冊です。
何だか落ち着かないとき、イライラがおさまらないとき、落ち込んだときなどはこの本を開きます。
優しい雨が降り注いでくるように、いろんな感情が静まって行くような気がします。
何でもない時に読んでも、じわーと愛が沁みてきてます。
「怖れ」とは自分の存在の不確かさからくる平和ではない心のこと。
他人から何かを言われた時、自分が本当に満たされていて自信もあれば、他人の意見は他人の意見として尊重できるはずです。
でも、その意見を聞いて、罪悪感や劣等感など自分の足りない部分を刺激されたと感じてしまうと、傷つけられたと思って怒ったり自分の正当性を主張しようとしたりします。
「怖れ」を抱えていると、全て自分絡みの問題だと思ってしまいます。
自分の存在を確かなものにしようとして、人と比べたり、評価を得ようとする人は沢山います。ですが、それをしても、本当の自信がつくことは絶対にありません。
本当の自信や安心感は、「怖れ」を手放して自分の内とつながったときに生まれるものです。
Attitudinal Healing(AH)とは、こうした「怖れ」を手放して、感情をどうとらえるのかという心の姿勢(アティテュード)を自分で責任を持って選択することによって心の平和・癒し(ヒーリング)に繋げて行くプロセスです。米国からこの活動を日本に持ち帰られた水島先生が、この考え方や原則を、とてもわかりやすく説明してくれています。
アティテューディナル・ヒーリング(AH)の原則は以下の12。
1. 私たちの本質はあたたかいこころ(愛)。
2. 健康とは、こころの平和(やすらぎ)、癒しとは、怖れを手放すこと。
3. 与えることは受け取ること。
4. 私たちは、過去も未来も手放すことができる。
5. 存在する時間は「今」だけ。それぞれの瞬間は与えるためにある。
6. 私たちは評価を下すのではなくゆるすことによって、自分や他人を愛することができるようになる。
7. 私たちはあら捜しをするのではなく愛を見つける人になることができる。
8. 私たちは外で何が起こっていようとこころの平和を選ぶことができる。
9. 私たちはお互いに生徒であり教師である。
10.私たちは自分たちを分断された存在ではなく一つのいのちとしてとらえることができる。
11.愛は永遠のものなので、変化を怖れる必要はない。
12.どんな人も、愛を差し伸べているか助けを求めているかのどちらかととらえることができる。
「よくわからない」「そんなはずはない」などと思われる方も、それぞれの原則がどういうことを言っているのか、是非一度本を読んでみて頂けたらなと思います。
読む度にに響くところが違いますが、初めてこの本を読んだ時は、#6と#12から得るところが大きかったです。
#6では、自分をゆるす、というのが新鮮でした。
それによって自分を愛せるようになるだけでなく、他人を愛することもできるようになる、と。
#12の「愛を差し伸べている」というのは、差し出していると言うよりも、英語でいうところのextendという方 がぴったりで、遠赤外線のようにその人からぽかぽかとしたものが伝わってくるような状態のことだそうです(ワークショップ参加時の水島さんの説明より)。
AH的にいうと、人には「ポカポカした状態(=恐れのない愛の状態)」か「そうでない状態(=怖れにまみれている状態)」のどちらかしかない、ということになります。
例えば、誰かをやりこめて勝ったというときも、何か本人の心がザラザラしているときはポカポカした状態とはいえないので、怖れのある状態、となります。例えば何かの罪悪感が刺激されているのかもしれません。
逆に客観的には辛そうな状況にいても、自分の心がポカポカしているのであれば、怖れを手放しているといえます。
怒りを鎮める方法、ありのまま生きよう、等の本は本当に沢山出版されていますが、この本と出会ってそれ以上探し求める必要を感じなくなりました。(といっても、お勧めされた本はその後も読んでいて、その中にも素晴らしいものも沢山あります。このブログの中でも紹介していきたいと思います。)
また、もともとはスピリチュアルな話には興味もなければ理解もできないという人間だったのですが、この本は日常生活から離れることなく進んでいくので、読むことに全く抵抗を感じなかったのも助かりました。そしてこの本を読んでからは、スピリチュア ル系の世界の本が言いたいところもわかるようになり、面白いと感じるようになりました。どの本も理論も、使っている言葉やアプローチは違うけれども、行きつくところ・目指しているところは同じなんだなと感じてい ます。
この本と出会って、「幸せ=心が平和であること」と感じるようになりました。
悩みごと(特に対人関係)がある人には、いつも真っ先にお勧めする本です。
この本が、沢山の人の助けとなりますように。
水島先生もとても気さくで素敵な方なので、ワークショップもお勧めです(最近はご本人はあまり登場されないようですが)。
アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン[Attitudinal Healing Japan]
(2015/3/7 追記)
今日、久しぶりに水島さんのワークショップに行ってきました。普段のAHワークショップではなく、「AH的な政治との関わり方」についてという、日本では初の試み。政治とAH、相容れないように見えるこの2つがどう接点を見いだせるのか、AHで政治に関われるのか、実際に衆議院議員でもあった水島さんがその時代にどのようにAHを活用していたのか等に興味が湧いて参加してみました。
いろいろな学びがありました。例えば、こんなことを感じました。
・政治と言うと、主義・主張を掲げる必要があるように思えるが、それは単なる思い込みかもしれない。むしろ、主張することが分断を引き起こす。抽象的なポリシーや「べき論」を語ったり、権利を主張したりするよりも、自分の体験に基づいて感情を思い切ってさらけ出して話す(自分語り)をすることこそが、つながりをつくり、問題点&解決策が浮き出てくる(「出現する未来」や「U理論」などにも繋がるところを感じます)。同様に、集団をつくって主張するよりも、個別具体的な例を非暴力コミュニケーションで語ることの方が、分かり合える。実際に社会が動く。
・心の平和を求めて行くなら、どこかで「正しさ」を手放す必要がある。正しさを手放すことで相手を認めることができ、相手に起きていることを相手のプロセスとして受けとめられる。人によって「正しさ」は違う。平和を取るなら、自分の正しさを一度手放して、相手を理解することが必要。
・政治について語ると批判をされることもあるそのような時は、批判している人はこちら側の発言によって何かその人の怖れが刺激されているということなので、批判は相手の領域で起きていること(自分が傷つけられているわけではない)であり、自分の心は影響される必要がない。
・闇に対しては光で接する。愛の体験をさせて行けば、相手の闇も打ち消される。
・アティテューディナル・ヒーリング・グループのガイドライン(指針)の一部は、AHのワークショップの中だけではなく、日常の職場の会議や政治的意見を交わす場でも活用できる。このガイドラインについて合意した上で話し合いを持てば、とても安全で建設的な場になる。
それにしても、水島さんは、人格的に素晴らしい方で、気さくで軽やかでありつつ、社会を変えて行く勇気と力強さをも持ち、本当に尊敬します。この方に出会えて、本当によかった。そして、この本がやっぱり私が選ぶ最良の一冊ということを改めて感じた日でした。
以下は、自分自身の備忘のために、ガイドラインを引用しておきます。
アティテューディナル・ヒーリング・グループのガイドライン(指針)
以下のガイドラインは、グループが機能するための枠組みとして考えられたものです。
1.グループの目的は、心の平和の選択を実施することです。
2.グループの中では、「聴くこと」に意識を集中します。開かれた心で人の話を聴くことや、お互いに支え合うこと、評価を下さずに人の話を聴き自分の話をすることを実践します。
3.グループに参加するのは自分を癒すためであり、人にアドバイスをしたり、人の信念や行動を変えたりするためではありません。
4.自分自身の体験に基づいて話をします。自分の感情を思い切ってさらけ出すことによって、お互いの共通の体験を見出し、人とのつながりを感じやすくなります。
5.自分を含めてグループの一人ひとりをかけがえのない存在として尊重します。大切なのは一人ひとりのプロセスであり、それを自分がどう評価するかということではないと認めます。
6.それぞれの人が自分のこころの声に耳を澄ますことができるよう、お互いに支え合います。
7.生徒と教師の役割は入れ替わるものです。年齢や経験に関係なく、生徒になったり教師になったりします。
8.「ランプのかさではなく、光だけを見る」ようにし、相手に自分の心を完全に向けることができるよう実践します。それぞれの人を全体として見て、外見、気分、行動、そのときの状況で判断しないようにします。
9.平和と葛藤のどちらを選ぶか、怖れにとらわれるか手放すかは、常に自分で選択できることをいつも心に留めておきます。
10.グループで話したことは全て秘密厳守です。これは、グループを安全で信頼できる場にするために重要なことです。
怖れを手放す アティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ
- 作者: 水島広子
- 出版社/メーカー: 星和書店
- 発売日: 2008/12/04
- メディア: 単行本
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(本記事(追記前の部分)は、本書と「スタジオ・ヨギーのある生活 vol.15」掲載の水島さんのインタビュー記事を参考にしています。)
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