ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

ザ・メンタルモデル

コーチ仲間界隈でお名前を知らない人はいないのではないかと思う、由佐 美加子さん(みいちゃん)の本。

周囲では昨年の出版後すぐから絶賛されていて、そこから一波、二波、遅れて読みました。

ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー」(由佐 美加子 氏・天外 伺朗 氏 共著、2019年9月 初版、内外出版者)

 

読んでみて、最初の感想は、「そっか。みんな、そうなんだ。」という安心感。

続いて、「ああ、自分て、こうなんだ。」と、肩の力が抜ける感じ。

他者に対する見方も、変わります。

そして、暖かい気持ち、世界に対する希望の光のようなものも感じました。

 

ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー

 

自己理解と自己受容を前に進めてくれる本は沢山ありますが、理論ではなく臨床からの切り口はとても納得感があります。

また、スピリチュアルになりそうな話を、誰の身にも起きていることとして現実感を持って書かれているので、自分ゴトとして読めます。

世の中の分離が著しい今、平和への手がかりになる本と思います。

そういう意味で全ての人におすすめしたい気持ちですが、「読み時」がある本だとも思うので、読むタイミングはご自身で決めて良いと思います。

 

本文中の言葉を借りれば、本書は、

「分離」状態に、なんとなく居心地の悪さを感じている人々が、その次のフェーズである「統合」の人生へ飛躍するためのガイドブック( p.3)

です。

 

毎度のように自分の備忘録として、感じたことを、自分の体験も交えながら書きますが、本書の言葉は一つ一つ研ぎ澄まされていて深いので、ぜひ、詳しくは&正しくは、ご自身で本書を読んで理解してください。

 

誰もが生まれながらに痛みを持っている

みいちゃんは年間250日以上ファシリテーターとして登壇し、1,000人を超える個人とセッションをしている方です。私も一度だけ短い単発の講演に伺ったことがあります。

「メンタルモデル」とは、みいちゃんがこういった機会を通じて、「人生で抱えている人の悩みや課題を聴く中で、現実がどのように内面的な構造から生み出されているのか、を紐解こうとした過程」(p.282)で臨床的に見出した、「個人の内側にある世界の構造」のこと。

本書では、「生存適合OS(オペレーションシステム)」とも呼んでいます。

共著の天外さんの言葉を借りれば、「この本における「メンタルモデル」は、人間が幼少期に体験した痛みを切り話すために「自分もしくは世界とはこういうものだ」と無意識に決定づけたその人固有の信念」(p.5)となります。

 

前提の概念 

本書の冒頭にも出てきますが、2つほどの前提を理解しておくとわかりやすいのではないかと思います。

 

一つは、「外側で起きていること、体験していることのすべては、その人の内側にある内的世界から創り出されている、という仮説」(p.182)。

自分にとって気に食わないことが起きて不愉快な思いをしていたとしても、実はその体験は、誰かのせいではなく、自分が創りだしているということ。

昨今、人間は成人になっても発達を続けるという理論が浸透していますが(例:ロバート・キーガン教授の「なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践」)、上記のような考えられるようになるのも一つの発達の過程で起きることだと思います。

この考え方がなんとなくでも理解できる状態にないと本書を腹落ちさせていくのは難しいかもしれません。

 

もう一つは、バーストラウマ(Birth Trauma)。

私はこの道の専門家ではないので、読んで想像できた範囲の理解ですが、人間にとって最も居心地が良いのはお母さんのお腹の中。そこは宇宙そのもの。

全ての人間は、生まれると同時にその居心地の良いところから押し出され、へその緒を切られることで母親ひいては宇宙と切り離される「分離」の痛みを背負っている、という考え方。

つまり、全人類はひとりの例外もなく、生まれながらに痛みを持っている、という考え方。

 

その痛みは人によって現れ方が異なり(=メンタルモデル)、それは4つのタイプに集約できる、というのが本書で説いていることです。

 

面白いのは、

全ての人がこのいずれかのメンタルモデルを持っている、

全ての人に4つの要素があるものの、最も強いものはどれかに一つ絞り込まれる、

そして、逆に、どれにも当てはまらないということもない、という仮説。

 

4つのメンタルモデル 

4つのメンタルモデルそれぞれに、深層心理で感じている痛みが異なります。

 

1.「価値なし」モデル

やっぱり自分は価値がない人間なんだ。

 

2.「愛なし」モデル

やっぱり自分は愛されない人間なんだ。

 

3.「ひとりぼっちモデル」

所詮自分はひとりぼっちなんだ。

 

4.「欠陥欠損モデル」

やっぱり自分はダメな人間なんだ。

 

本書によれば、メンタルモデルは、幼少期にいずれかの痛みを感じる体験をすることで形成され、

その後は、その痛みを感じる事態に直面しないで済むように、痛みを回避する行動(回避行動)を、ほぼ無意識に自動操縦的にとり続けます。

 

例えば、誰かに価値がないとバレる・言われるのを怖れて、ひたすら努力して克服しようとするのは、「価値なし」の人の克服型回避行動の表れです。

これを続けている限り「戦い続ける人生」(p.9)となります。

社会的に成功することも多いと思いますが、怖れからの努力のため、本人の中には疲弊感や空虚感があると思います。

別の例では、誰かが自分から離れていくことで傷つかないように、最初から人と距離を置き、痛みに直面することから逃げたりするのは、「ひとりぼっち」や「愛なし」の逃避型回避行動の一つと思います。

 

意識の進化(適合期→直面期→自己統合期→体現期→自己表現期) 

克服型であれ、逃避型であれ、回避行動に乗っ取られた人生は、本来の自分の人生ではありません。

その状態では本当の自分の人生を生きてはいません。

どうしたら社会の中で自分の安全を守りながら生きていけるかということに一生懸命なこのステージを、本書では「適合期」と表現しています。

 

適合期のまま人生を終える人もいますが、幸いなことにこの回避行動にも限界がくると「直面期」。

不本意な現実に直面させられる出来事が起きたりします。

人生では辛い時期であることが多いと思いますが、次のステージに進むチャンスでもあります。

 

そこで自分自身や深層心理と向き合う覚悟と勇気が持てれば「自己統合期」へ。

分離していたものが統合されていきます。

「良いも悪いもなくて、自分の中に”何があるのか”をただ認める、という世界。」(p.39)

本当の自分自身の命を取り戻すような体験に進みます。

 

その先には、自分が望む世界を、自分の内側からの声に従って生きる「体現期」。

さらに進めば、自らその世界を表現し、他者にも貢献する「自己表現期」。ワンネスなどの世界観と思います。

 

分離から統合へ。痛みの奥には願いと使命がある。  

人は、皆、価値がなくて、愛されなくて、ひとりぼっちで、欠陥だらけ、だとしたら、この世はとても残念な世界です。

そんな世界を私たちは本当は望んでいません。

 

本来、私たちは、皆、

ただ存在しているだけでも価値があると認めてもらいたいし、

ただただ無条件に愛してもらいたいし、

本当は人と深いところで繋がりたいし、

どんな個性を持っていてもいい、そのままで安心していたい。

 

そういう世界を願っています。

 

けれども、何もしなくても誰からも祝福される赤ちゃんの時期を過ぎた頃から、必ずしもそうではない現実に直面します。

だから、メンタルモデルは、これ以上傷つかないようにするための、防護服のようなものだとも思います。

 

けれども、自分の内側の分離が解消し、統合されていけば、防護服はだんだんと要らなくなっていきます。

そのときこそ、本当は願っていた世界を、自らが創りだしていくときです。

もう「生存適合」のために怖れからOSを動かす必要はなく、本来の自分のクリエイティビティを発揮するために自分の全てのリソースを始動させるときです。

 

背負っているメンタルモデルの反対のところに、その人が強烈に願っている世界があります。

メンタルモデルは、その使命を教えてくれているものだ、という考え方は、何だかとても救われる気がしますし、自分自身を見つめても、コーチングのクライアントの方々と接していても、これは真実のように感じます。

 

統合への鍵は自己受容

では、どのしたら、「分離」から「統合」に行けるのか。

 

鍵は、自己受容です。

 

本書はそれを後押ししてくれます。

 

自分がいずれかのモデルに当てはまるということを受け入れること自体がチャレンジだ、と感じる人がいても全く不思議はありません。

自分が頑張ってきたことも、失敗してきたことも、好きな部分も、嫌いな部分も、全部自分だと認める。

自分が頑なに持ってきている信念も、認める。

これは、やってみると、きっと一度は自分の内側から抵抗が起きるのを感じると思います。

 

その抵抗を乗り越えて、自分にかけられた呪いのような言霊を見つけることができると、全てが腑に落ちて、ほっと力が抜けるような感覚があります。

ただ、その直前、その言葉を口にしてみようとすることは、ものすごい恐怖でもある場合もあります。

 

本書の中で語られるみいちゃんの言葉やご自身の体験は、とても助けになりました。

本当にだめかどうかは、誰も知りません。そこの区別をしてほしいの。自分はだめだと思っている、ということを、右利きで生まれましたくらい、諦めてほしいんですよ。(p.154, 欠陥欠損モデルの塾生とのやりとりで)

 

私のメンタルモデルの類型は「ひとりぼっち」ですが、私のメンタルモデルの言霊は、「いなくなっちゃう」です。この言葉を心の中で感じると、自分の奥にある痛みが触発され、今でも涙が出てくるような感覚になります。メンタルモデルを発見して15年以上もたち、どんなに理解が深まっても、決してこの感覚が自分の中からなくなることがありません。このように、同じひとりぼっちという種類のメンタルモデルでも、言霊のレベルでは必ずその人固有のものがあります。(p.208)

 

そうか、みいちゃんでも、まだこういう部分があるんだ。あっていいんだ。なくならないんだ。それでいいんだ。そういう風に感じる自分がまだいても、成長していないということではないんだ、と。

 

trottolinaの場合

一人っ子の私は、小さい頃から「いずれ両親はいなくなる。自分はひとりぼっちになる。」と思っていました。

なので、最初は、「ひとりぼっちモデル」かな、と思いながら読んだのですが、それぞれの特徴を読んでいくうちに、ちょっと違うな、と思いました。

 

今は、かなりの確度で、「愛なしモデル」だろうと思っています。(これを認めるのにも勇気がいりました。)

 

内省していくうちに、上記の言葉は、もっと掘り下げると、「いずれ両親はいなくなる。だから両親以外に自分を愛してくれる人を探さなくては。」だったことに思い当たりました。

 

でも、なかなかそういう人に巡り合わない。

巡り合っても、自分からそういう関係を壊すようなことをしてしまう。

なぜいつもうまくいかないのだろう、と悩んだことは数知れず。

 

本書を読んで見つけた私のメンタルモデルの言霊(仮)は、「結局誰からも愛されないよ」。

(いつかみいちゃんのワークショップ等に行ってみたいので、ここでは「仮」のものとしておきます。)

 

そういう世界で生きているから、現実もそうなるように、自分がしてしまっている。

「ほらね、やっぱり愛されなかったでしょう」という世界になるように。

 

ひとりぼっちモデルの人は、「何をやっても俺のところからいなくならないよね?」といろんなことをやって相手や周囲を試しまくる(p.136)、というのを読んで、

私はそうはしないけど、あの時、「何をやっても私を愛し続けてくれるわよね?」と無意識に相手を試していたんだなと思い当たることは色々あります。

 

そして「愛なしモデル」が創り出したい世界「誰もが自分を無条件に愛し、真実からありのままを受け入れられ、理解し合える関係性で人間同士がつながっている世界」(p.13)というのにものすごく響きますし、

この人生を通じてこれを学んでいるということも、とても実感があります。 

 

どんなに完璧な子育てをしても、子供は自分のメンタルモデルを形成する

本書で説明されている特徴からみると、どうにも私は「愛なしモデル」なのですが、

メンタルモデルの形成には幼少期の出来事がトリガーとなる、と書かれており、

私は、両親に申し分ないほどに愛されて育ったという自覚があるので、最初、どうしても「愛なしモデル」であることに納得ができませんでした。

 

ただ、ふと、こんなことを思い出しました。

親や親戚が、例えば他の家の子どもについて、「XXちゃんは、お行儀が悪い」とか「YYくんは、暴れまわって困るわね」などと話しているシーン。

一方の私は、両親と出かける先々で、色々な人から「いい子ね」「(両親に対する言葉として)いい子でいいわねぇ」と言われることが多かったと思います。

その対比から、「いい子にしていないと愛されない」と思い込んだ節はあります。

また、確か電車で出かけた時に足を広げて座っていたら、祖母か母に「女の子なんだから足を閉じて座りなさい」と言われたシーンが急に思い出されました。

この時も「女の子はお行儀よくしていないと愛されない」、つまり「愛なしモデル」の根底にある「無条件には愛されない」という思考を形成したと思われます。

 

大人たちは多分、いずれも記憶にないでしょう。あったとしても、その言動に責められるところは何もありません。

他の家の子供について感想を持つのは自由だし、そもそも行儀が悪いから愛されない、とは言っていません。後者は、しつけとして普通の範囲です。

 

ただ、私が生まれながらに「愛なしモデル」で生まれてきているので、これらの事象を捕まえて、「やっぱり無条件には愛されないんだ」と勝手に内的世界を創っていってしまうのです。

 

幼少期に経験することによってメンタルモデルの型が決まるのではなく、メンタルモデルはもう生まれながらに決まっていて、幼少期にあるイベントでそれが発動するだけのこと。 

「メンタルモデルは魂が選んで生まれてくる」(p.137)

という言葉を聞いて、降伏するしかない、という気分になります。

同時にちょっと気楽にもなります。

 

なので、ここからは私の私見ですが、悲しいかな、どんなに完璧な育児をしたとしても、子どもは何らかのメンタルモデルを形成していく、そして、適合期から始まる旅路を歩まざるを得ない、ということではないかと思います。

 

そういう意味では、親の立場からは、あまりそこに責任を感じすぎる必要もないのだと思います。

「ああ、この出来事であなたのメンタルモデルが発動しちゃったのね」と、ある意味、無責任になってよく、

育児方法や教育が間違っていたのか、と自分を責めるよりも、子どもがその苦しい時期を乗り越えられることを支援する方が建設的のような気がします。

そして、その支援の一番の近道は、子どもに何かを教えることよりも、親も親で自分のメンタルモデルを知って、自らが統合の道を進むことではないかと思います。

  

コーチングに関連して

自分のメンタルモデルを明らかにすることや、意識の進化を進めて分離から統合していく時、コーチングが果たせる役割は大きいと思います。

 

クライアントの視点から

特に直面期以降の方にとって意味が大きいと思います。

頭で考えていても、直面期を脱して統合することはできません。

 

「自分が一番見たくないところに踏み込まないと。本当の意味で、自分を観るという世界には、入れないんですよね」(p.102)

「感じる世界の中で、変容は起こるのであって。考える世界の中では、1ミリも思うことなんて変わらないから。意識は感じた瞬間に、変わります。」 (p.105) 

 

コーアクティブ・コーチング®︎では、クライアントとともに体験・体感することをとても大切にしています。

 

一人では思考がぐるぐる回ってしまいますが、コーチは体験に誘ってくれます。

自分のことは実は自分が一番受容できていない。

コーチが投げかける評価判断のない認知は、自分がどういう人間なのか、自分では認めて切れていないものも教えてくれるでしょう。

その過程であるかもしれない自分の闇に直面する怖さも、コーチと一緒なら、きっと乗り越えられます。

 

統合期以降も、統合を進め、本来の自分を表現することに向けて、コーチは力強く、多くのリソースを引き出してくれると思いますし、そんな存在がいてくれることはきっと心強いと思います。

 

コーチの視点から 

コーチにとっては、本書は2つの意味でとても助けになる本だと思います。

 

一つは、自分の自己理解&自己受容のため。

自分自身が向き合えていないものに、クライアントが向き合うのをサポートすることはできません。

 

もう一つは、コーチングの質を高めるため。

コーアクティブ・コーチング®︎の文脈で言えば、メンタルモデルを明らかにしていくのは、プロセスの指針にとても近い質感と思います。

また、その先に見つける言霊は、そのクライアントにとって最も手強いサボタージュとなっている可能性があります。

クライアントがどのフェーズにいるのかに気づいていることは、コーチとしても安心してセッションを進められるのではないかと思います。

実際、私のコーチングも少し進化したような気がします。

 

一方で、気をつけたいのは、安易に「この人はこのモデルだろう」と勝手に心の内で決めつけることはしないほうがいいだろうと思います。

本書で得られる知識・知恵は、クライアントを理解する際の参考情報として持ちつつも、好奇心を失わず、いつも一緒に探求する姿勢でいたいと思います。

 

一人でも多くの人が、無意識のメンタルモデルから脱し、源につながって、それぞれが自分らしく本来の創り出したい世界を表現していくことができますように。

 

ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー

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