ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

復刻版 言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼

ポッドキャスト番組「ゆる言語学ラジオ」を配信しているおふたりによる著書。

復刻版 言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼」(水野 太貴・堀元 見 共著)

復刻版 言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼

 

「ゆる言語学ラジオ」は、"言語オタク"・水野さんと、聞き手としての自称"言語学素人"・堀元さんが配信している、「ゆるく楽しく言語の話をしているラジオ」。YouTubeとポッドキャストで配信されています。

 

「言語学」と言っても広いですが、お二人の話は、日本語が中心。

母国語ゆえに、知らないうちに身につけて、もはやよく考えずに喋っている日本語には、実は不思議なことがいっぱい。

普通の人であれば、気にも留めないようなところに着目して、深く掘り下げていく水野さんの話を聞いているうちに、言語の沼にハマり込んでしまう。

きっと最もハマったのは、聞き手の堀元さん。そしてリスナーも道連れに。

 

本書は、YouTubeで話していることではなく、書き下ろし。

なんで、「彼のことが好き」は普通で、「スイカのことが好き」は変なのか。

なんで、怪獣の名前は、ガギグゲゴが多いのか。

「えーっと」と「あのー」は同じなのか、違うのか。

私たちは、オノマトペをいつから理解するようになるのか。

「を」って何なのか。

などなど。

 

その解説もナルホドと思うのだけれど、よくよく考えるとそれだけ難解なことを、無意識に感覚的に使い分けている私たちってすごいな、とも思います。

言語は僕たちが無意識に処理してる感覚を浮き彫りにしてくれるんですね。(堀元さん、p.43)

 

外国の人にとって、日本語は本当に難しいだろうなぁ、と改めて思いました。

 

私が特に印象的だったこと:

日本人は、英語圏の人に比べて、生きてるかどうかが気になる(p.45)

ある名詞に対して、「生きてる感じがする」とか、「意思を持ってる感じがする」と思える性質のことを、言語学ではアニマシー(有生性)というのだそう(p.38)。

コップが「いる」とは言わないし、犬が「ある」とも言わない。

生きてるかどうかで区別している。

英語は、どっちも「there is」。

先日読んだ、「死の壁」で、養老孟司さんが書かれていた「日本のこの世はメンバーズクラブ」の話を思い起こしました。

死ぬと、突如として、メンバーズクラブから外されてしまう。

「人がいる」けれども「死体がいる」とは言わない。死体は、そこに「ある」。

もう生きていないから、それは無生物として扱われる。

日本語、日本の文化におけるアニマシー。一人、妙に納得しました。

 

音には意味がある

なんとなく、「まみむめも」は優しい感じがするし、「ガギグゲゴ」は尖った感じがする。

これは、個人的な感覚ではなく、ユニバーサルに起きるということ。

「音象徴」なる学問の存在や、阻害音・共鳴音なる分け方もあると知り、あ、やっぱりこの感覚って自分だけじゃないんだ、みんななんだ、とちょっと安心もします。

Lan Cul英会話のインスタリールで、ドイツ育ちのギリシャ人・Ariさんが、日本人の名前を英語の名前にしていくシリーズがあるのですが、不思議と「確かに!うまい!」と思います。

音のイメージはユニバーサルなのかな、と思っていたところに本書を読んで、これまた一人、妙に腹落ちした気分です。


<日本人の名前を英語にすると? by ランカル英会話>

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文字を否定していたソクラテス

書き言葉が徐々に広がる時代において、その流行を嫌がっていたのがソクラテス。

なぜなら、「文字に頼ると記憶が破壊される」から。(p.75)

わかる。わかります。

けど、こっちは考えたことがなかったです。

水野 ソクラテスは現代にも通ずることを言ってるんです。
   いわく、「文字に書いちゃうと、読むのにふさわしくない人にまで届いちゃうじゃん。誤解されて大変なことになるよ」って
堀元 Twitterじゃん。
水野 Twitterですよね。(p.76)

 

フィラーにも意味がある

「えーっと」や「あのー」のような言葉をフィラー(日本語だと「つなぎ言葉」)というのだそうです。(p.81)

このフィラーも、情報を伝達していると。(p.84)

「えーっと」と「あのー」の違いは、ぜひ本書にてご確認ください。

私事としては、プレゼンテーションの時などには、このフィラーをできるだけ排除しようと頑張っていましたけれども、ポッドキャスト配信では、むしろこれは味のある時間になるから面白いな、と思っています。

考えている、言葉を探してる、言い淀んでいる、遠慮している、こういう部分が伝わることこそポッドキャストの面白さだと思うので。

編集をしてくれている相方も、こういうところはあまりカットしていないだろうと思います。

ちなみに、コーチングにおいては、クライアントさんが「えーっと...」と自分の内側とつながろうとしている時は、とても大事な時間と思っています。そのスペースを邪魔しないよう、クライアントさんの中で何が起きているのかな、と耳を澄まして待っています。

Messengerなどでの「・・・入力中」というのが、これらのフィラーと同じ役割を果たしている、というのは、ナルホド!と思いました。(p.98)

 

イギリス人は動詞で泣く、日本人は副詞で泣く(p.167)

日本でオノマトペが異様に発達していて、英語にはそれがない理由がわかりました。

シクシク泣く=whimper

ワーワー泣く=bawl

日本人が英語の動詞を覚えるのと、外国の人がオノマトペを覚えるのはどっちが楽なんでしょうか。

オノマトペを学ぶ方が少なくとも、楽しそうには思えます。

 

ああ、いつの間にか、言語の沼に入っていってる感じが...。

お二人の思うツボ。

 

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