ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

News Diet 情報があふれる世界でよりよく生きる方法

ニュースって、毎日追いかけなきゃいけないんだろうか?と内心疑問に思っている方、

なんとなくインターネット上でニュースを追いかけてしまって、気づけばずいぶん時間が経ってしまっている方、などにお役に立つかもしれません。

News Diet ニュースダイエット 情報があふれる世界でよりよく生きる方法」(ロルフ・ドベリ 著、安原実津 訳、サンマーク出版、2021年2月初版)

Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法」などの本が有名な著者の本です。

 

News Diet

 
ニュースを読むのをやめて、本を読もう

本書の主張は極めてシンプル。

ニュースを読む/見るのをやめて、ニュースフリー生活になろう。

ニュースは時間を奪うだけではなく、個人にとっても社会にとっても害でもある。

ニュースのない生活になれば、より豊かな生活を楽しめる。

 

なお、ここでいうニュースとは、「短くまとめられた世界各地からの情報」(p.42)。

「ニュース速報」などの形で、さも重要そうな形で報じられてくるもの。

本来は複雑な世の中を、簡単に切り取り、わかったかのように報じているもの。

 

ニュースを読む代わりに、著者がおすすめしているのが、エッセー、特集記事、ルポタージュ、ドキュメンタリー番組、本、ポッドキャストなど。

しっかりと時間をかけて背景を取材し、全体を俯瞰し、複雑なものを複雑なままに伝えてくれるもの。

 

ニュースフリーな生活

私は、会社を辞めた5年弱前からは、自然にニュースフリー生活になりました。

それで特に困ることもないため、本書の主張は全くその通りで、むしろ、ニュースを追いかけないでもよい生活になったことは、私にとっては、とてもラクになることでもありました。

なので、逆に、著者が、何度も「ニュースを絶つなんて信じられないかもしれない、でも大丈夫だ」と繰り返すので、むしろそこが不思議でした。

きっと著者自身が、仕事柄もかなり多くのニュースに目を通してきた人ゆえ、ニュースを手放すことに相当な勇気と覚悟が必要だったのだろうなと想像します。

また、世間にも、「世の中に起きていることを知らないのはやばい、まずい、恥ずかしい」という空気がなんとなくあるような気がします。

私も、会社員時代に、社内の会話で「そんなことも知らないのか」と言われることを怖れていましたし、お取引先から馬鹿にされたり、信頼を損なうことになってはいけないとも思っていました。ニュースに目を通す理由は、自分が知りたかったから、というよりも、そういう防衛的な要素が強かったと思います。

今のニュースの摂取は、J-WAVEで番組の合間に流れてくるニュース、BBC のポッドキャスト、そして時々、日経新聞を読むくらい。時事通信のLINE アプリは入れてはいますが、未読が溜まっています。

そんなんでいいのかな?と思う自分もいましたので、本書は、「そうか、これでいいんだ」と思わせてくれました。

 

ほっておいてもニュースは入ってくる

かつてはニュースは、テレビをつけたり新聞を読んだりして入ってくるものでした。

ですが、スマホやインターネットが日常の至る所に入り込んでいる現代は、別にニュースを見ようとしていなくても、あらゆる機会にチラチラ入ってきます。

ご丁寧に通知を入れてくれるものまであります。

 

また、都内は、空きスペースがあれば、どこもかしこもスクリーンが貼られるようになり、特に最近、それが顕著になってきているように感じます。

例えば、電車移動の時など、かつては、電車の中吊りと網棚上や座席横のスペースに紙の広告がある程度でしたが、いつの間にか、

出入り口上部のスペースにスクリーンが貼られて動画が映されるようになり、

そのスクリーンが、網棚上のスペースにも一面張られるようになり、

駅には、転落防止の自動ドアにもスクリーンが現れ、そこにも絶えず動画が流され、

改札に上がれば、柱という柱に動画が映写されている。

目的地についてエレベーターに乗れば、エレベーター内でニュース速報や広告が流れていたりする。

 

この、街中のスペースがどんどん情報に埋め尽くされていく様子にはちょっと、いえ、だいぶ辟易しています。

いつか、世の中にこの反動が起きるのではないか、起きてほしい、みたいな気持ちもあります。

 

本書では、「ニュースを消費する」という表現を何度も使っているのが印象的でした。

情報は、消費しても、あまり自分の中には残らない。

触れた情報について、どう考えるか、どう感じるか、それはどういうことか、と考えたり調べたりして、ようやく自分にとって意義あるものになっていく。

情報過多になると、その思考に使う時間もエネルギーもなくなって、だんだんその脳内回路も滞ってくることに、自分も気をつけたいなと思います。

 

ジャーナリストへの警鐘

この本の裏テーマは、ジャーナリストへの警鐘でもあると思います。

こたつ記事*はありえないのはもちろん、

ただ新しい出来事や、取るに足らないシップを追いかけてる場合じゃないよ。

もっとしっかり取材して、いいもの報道してよ。

そうじゃなければ誰もニュースなんか見なくなるよ。

色々なものが絡まった背景を、じっくり調べてから、それを繋ぎながら全体像を見せてくれるような、そういうものを書いてよ。

そういうキャリアを自分で築いたほうがいいよ。と。

(*こたつ記事:ジャーナリストやライター、記者が現地に赴いて調査を行ったり取材対象者に直接取材したりすることなく、インターネットのウェブサイト、ブログ、掲示板、SNS、テレビ番組などの他媒体で知り得た情報のみを基に作成される記事の通称)


出版とジャーナリズムは近い世界であろうはずで、だから、本の書き手はなかなかジャーナリズムへの異は唱えにくい。

そんな立場から、一部のジャーナリストたちの仕事を奪うかもしれないような本を書くことができるのは、勇気があるなぁとも思いました。それこそ、ベストセラー作家の立場の正しい使い方かもしれません。

 

最後に、先日読んだ「お金の減らし方」で著者の森博嗣さんが書いていたことをシェアして、この記事を閉じたいと思います。

情報化社会において、大勢の人たちが抱いている不安と言うのは、「自分が知らないことがある」「知らないことで自分は損している」と言うものである。この本を読むような人には、そんな純粋無垢な人はいらっしゃらないと想像するが、もし身近にそういう人がいたら、こっそり耳打ちしてあげよう。「知って得なことなんて、この世に一つもありませんよ」と。(p.131、「お金の減らし方」森博嗣 著)

 

この記事は、こんな人が書いています。 

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