インパクトのある本でした。
漫画だから、絵の力もあって、さらに伝わってくるのかもしれません。
「男社会がしんどい ~痴漢だとか子育てだとか炎上だとか~」(田房永子 著、竹書房、2020年6月初版)
ジェンダーについて知りたいと思い、この分野に詳しくジェンダーギャップ解消のために活動しているコーチ仲間(西岡史恵さん)に本書を教えてもらって出会った本です。
広くいろんな方が読むと良いと思うのですが、まずは、当事者として、女性や、女の子のお子さんをお持ちのお父さん・お母さんから読まれるといいのかな、と。
内容は著者ご本人の言葉で紹介させていただきたいと思います。
「男社会がしんどい」という言葉は、男性を責めるためのものではないことを先に言っておきたい。
この漫画は、「2011年2月」の出来事から始まり、最後は「2020年2月」で終わる。
第1章では中学時代の痴漢犯罪の被害体験を振り返りながら、この犯罪がなくならない背景を見つめた。第2章では、保育園不足問題や夫婦の家事分担など、女性に強いられている困難を描いた。第3章では、こういった理不尽の背景には「男社会」の悪影響があるとハッキリと感じ、それを発言することで起きたSNS上での炎上について記した。
男性だらけの職場や組織のことを「男社会」と呼ぶことがあるが、この漫画での「男社会」は1人の女性から見た「男性中心の社会=男社会」を指す。
(中略)
この理不尽な社会時システムを変えるには、男性も女性も性別も年齢も関係なく、まずは「男社会がしんどい」としっかり感じるところからしか始まらない。(「はじめに」より)
男社会、というか、日本社会のここがおかしいということを書いている漫画ですが、すごく正直にいうと、女性である私も読んでいてちょっとしんどかったです。
というのも、ある意味、女性たち自身も目を背けておきたいことにも切り込んでいるから。
誰も言えないことを言ってくれている感があって、著者の方は、「なぜ?」という気持ちを諦めないだけでなく、ものすごい勇気のある方だなと思いました。
とりわけ、
池の中で竹筒を使いながらスースーと息をする"賢い女”たちの絵図(第6話 被害者たちの黙る歴史)、
土に埋まって養分になるママたちの絵図(第11話 どうして女が仕事を辞めなきゃいけないの?)、
その土に自らも入っていこうとする絵図(第13話 土の中にいた母たちの時代)では、
女性たちもなかなか言葉にできない理不尽さ、窮屈さが見事に表現されていました。
過激なフェミニズムという内容ではないです。
書かれていることは至極真っ当。
なんで万引き犯罪やオレオレ詐欺なら警察も出動するのに、痴漢犯罪は騒ぐ方が悪いというような論調があったりするのか、
なんで性教育も不十分な日本で、性暴力的な成人向け雑誌がコンビニに平然と並んでいたのか(←オリンピックのおかげでなくなった)、それが例えば、男性が性被害に遭うような内容だったらそれでも陳列するのか、
その健全な「なんで?」が言えない社会、言う方がおかしい、という社会に、「それっておかしくない?」と問いかけてくれる本です。
男性も女性も、生まれてこの方、周りにある環境を当たり前、それはもうそういうもの、と思いがち。
けれども、時代も変わりつつあります。
見直すときなのだと思います。
そのためには、「アップデートしていこうという」という意識が必要ですし、
同時に、男性も女性も、これまでの社会の痛みの部分も、認めて、受け止めて、癒していくプロセスも必要だなと感じます。
本書を紹介してくれた西岡史恵さんは、IT業界のジェンダーギャップ解消のために活動していらっしゃいます。サステナブルに働きたい女性・ITエンジニアのお仕事のマッチングなどもされているようですので、ご関心ある方はウェブサイトをどうぞ。
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