ハリー・ポッター シリーズ最終巻!
「ハリー・ポッターと死の秘宝」(J.K.ローリング 著、松岡祐子 訳、静山社、2008年7月初版)
全巻読了〜!
物語の全容が見えた充足感以上に、達成感の方が大きいかもしれません。
全7巻=単行本全11冊、計5,500ページ以上を1ヶ月強で読み切りました。
(第4〜7巻は上下巻、1冊あたり500〜700ページ)
走るのは苦手ですが、フルマラソンを走り終えたらこんな気分なんでしょうか。
途中、苦行にも感じられたこの体験は、今月、舞台版「ハリー・ポッターと呪いの子」を観に行く準備のため。
中身は多少知っておいた方が楽しめる、という助言をもらい、ハリポタ大好きな仕事仲間が単行本で全巻をダンボールで送ってくれていました。
こんな感じで。
届いた時には、どれが第1巻かもわかりませんでしたが、今はスラスラ言えます。これだけでも誇らしい。
子ども向けの魔法使いの話でしょ、きっとパラパラとすぐに読めるでしょなどと、タカを括っていたら、とんでもない。
果てしなく壮大な物語で、伏線が張り巡らされた濃い内容で、ページ数以上の重量感でした。
こんな集中的な読書は人生初。
途中、AmazonのAudibleで風間杜夫さんの朗読が聞けるのを見つけて、これにもだいぶ助けられました。
観劇の2ヶ月前に送ってくれていたのに、着手するのが遅かったことをとても悔やみました。
読んでみて、本作が世界中で多くの人を虜にしてきた理由が、とてもよくわかります。
私なりに思う理由はこの3つ。
最初から著者の中に描かれている完成度の高い世界観
全7巻ですが、著者の頭の中には、もうこの全てのストーリーが先に完成してる。
それを、1年に1冊ずつ書いて出版していくというつくり。
この世界の完成度がとっても高い。
膨大な数の登場人物の家系図、それぞれの人物にまつわるストーリー、ハリポタの世界の地図、それぞれの街の中の地図、などが、著者の中には全てある。
著者の視点からは、各巻でその一部分を少しずつ切り取って書いていることになるのですが、
読者としては、まるで大きな絵画の中の一部分を少しずつ見ていくような、パズルが埋まっていくような、見えていなくて気になっていたところが明かされていくような、そんな世界に引き込まれます。
そして、どんな登場人物にもそれぞれの歴史があり、それぞれのキャラクターが立っている。
突然に出てきたように感じる人物も、どんな脇役にも、しっかりそれぞれの家族やストーリーがあるので、一つの巻ではワンシーンしか出てこない人物であっても、全7巻を通してそのキャラクターがブレることなく、まるで実在する人物のようにありありと感じることができ、読み進めるうちに、親しみも湧いてきます。
お城や街も同じ。だんだん、読者もそこが勝手知ったる世界に感じられてくるから不思議です。ああ、その方向に行くと、あの肖像画があるでしょう?などというように。
細部まで脳内で描ける情景描写と心理描写
上記の世界観を、そのまま読者に伝えることができるのは、情景や心理の描写の腕によるところだと思います。
著者ローリングさんに見えている世界そのままの中に、読者は誘われます。
その分、ページ数が多くなるわけですが。。。
構成
そして、構成。全容をどこからどのように切り取って見せていくのか。
どこに伏線を配置し、どこで回収するのか。
その構成あってこそのドキドキ、ハラハラ、モヤモヤ、イライラ、ヤキモキ、という感情が読者の中に生じてきます。そして途中ではやめられなくなる。
本書を貸してくれた仕事仲間に、巻数が書いていない全11冊をどの順番で読むのかと聞いたら、「本→映画→本、と読む・見むのがオススメ!」という見当違いな答えが返ってきましたが、今はこれもわかります。確かに、どこに伏線があったのか、もう一度確認したくもなります。
これだけの世界観があるので、いろんな物語が派生していくのが納得できます。
今も既にありますが、さらに増えてもおかしくないな、と。
全ての登場人物の物語をクローズアップできるので。
この辺りは、スターウォーズにつながるものも感じました。
制作費の事情などから最初に映画化されたのはエピソード4ですが、ジョージ・ルーカスの中では、すでに全6エピソードができていた。
しっかり細部までイメージされた世界観は、読む人・見る人もそれを感じるのだなぁと思います。
これだけのストーリーを、お金がないのでコーヒーショップで書き始めたという著者も素晴らしいですが、翻訳者の方々にも大きな拍手を送りたい気持ちです。
魔法界のことでありながら、それは私たちの世界のことでもある。
私たちの身近な世界で起きていることも思い出しながら、
ダンブルドアの言葉には、何度もハッとさせられながら、
とても豊かな読書でした。
第7巻の心に残った言葉たち:
「良心の呵責。(中略)あまりの痛みに、自らを滅ぼすことになるかもしれないって。」(第6章、ハーマイオニー、分霊箱を元通りに戻す方法について)
「感情的に近づくという意味なの。(中略)それで極端に無防備になってしまったのね。分霊箱が気に入ってしまったり、それに依存するようになると問題だわ。」(第6章、ハーマイオニー)
かつてダーズリーは、魔法使いであるという罪でハリーを閉じ込め、鍵をかけ、人目に触れないようにした。ダンブルドアの妹は、逆の理由で、ハリーと同じ運命に苦しんだのだろうか?魔法が使えないために閉じ込められたのか?(第8章)
クリーチャーは、(中略)長いこと独りぼっちだった。おそらく、ちょっとした愛情にも飢えていたんでしょうね。『ミス・シシー』も『ミス・ベラ』も、クリーチャーが現れた時には完璧に優しくしたに違いないわ。だからクリーチャーは、二人のために役に立ちたいと思って、二人が知りたかったことをすべて話したんだわ」(第10章、ハーマイオニー)
「ヴォルデモートが糸を引いているに違いないと囁く者は多い。しかし、囁いている、というところが肝心なのだ。誰を信じてよいかわからないのに、互いに本心を語り合う勇気はない。もし自分の疑念が当たっていたら、自分の家族が狙われるかもしれないと恐れて、おおっぴらには発言しない。そうなんだ。ヴォルデモートは非常にうまい手を使っている。(中略)黒幕にとどまることで、混乱や不安や恐れを引き起こしたのだ」(第11章、ルーピン)
満たされた胃は意気を高め、空っぽの胃は言い争いと憂鬱をもたらす。三人は、この事実に初めて出会った。(第15章)
「お嬢さん、ルーナが君のことをいろいろ話してくれたよ。(中略)君は知性がないわけではないとお見受けするが、気の毒なほど想像力が限られている。偏狭で頑迷だ」(第21章、ゼノフィリウス、「どうして信じられるのか?」と問いただすハーマイオニーに対して)
「だって、ハーマイオニー、君が言ったじゃないか。自分で見つけなければいけないことだって!これは『探求』なんだ!」(第22章、ハリー)
「『魔法使い優先』は、たちまち『純血優先』に結びつき、さらに『死喰い人』につながるものだと申し上げましょう。(中略)我々はすべて人です。そうではありませんか?すべての人の命は同じ重さを持ちます。そして、救う価値があるのです」(第22章、キングズリー)
「我々は全員、心はハリーとともにある、そう言いたいですね。(中略)それから、こうも言いたい。自分の直感に従え。それはよいことだし、ほとんど常に正しい」(第22章、ルーピン、ラジオからハリーに向けて)
「ホグワーツでは、助けを求める者には、必ずそれが与えられる」(第24章)
「小鬼にとっては、どんな品でも、正当な真の持ち主は、それを作った者であり、買った者ではない。すべて小鬼の作った物は、小鬼の目から見れば、正当に自分たちのものなのだ」(第25章)
「『不死鳥の騎士団』はもうおしまいだ。『例のあの人』の勝ちだ。もう終わった。そうじゃないとぬかすやつは、自分を騙している」(第28章、アバーフォース)
ハリーは黙っていた。ここ何ヶ月もの間、自分を迷わせてきたダンブルドアに対する疑いや確信のなさを、口にしたくはなかった。(中略)ハリーは選び取ったのだ。アルバス・ダンブルドアがハリーに示した、曲がりくねった危険な道をたどり続けると決心し、自分の知りたかったことのすべてを話してもらってはいないということも受け入れ、ただひたすら信じることに決めたのだ。再び疑いたくはなかった。目的から自分を逸らそうとするものには、いっさい耳を傾けたくなかった。(第28章)
「ヴォルデモート卿の魂は、損傷されているが故に、ハリーのような魂と緊密に接触することに耐えられんのじゃ。凍りついた鋼に舌を当てるような、炎に肉を焼かれるようなーー」(第33章)
ハリーは、死そのものについて真正面から考えたことがなかった。どんなときでも、死への恐れより、生きる意志の方がずっと強かった。(第34章)
「きみの魂は完全無欠で、きみだけのものじゃよ、ハリー」(第35章、ダンブルドア)
「興味深いことじゃが、ハリーよ、権力を持つのに最もふさわしい者は、それを一度も求めたことのない者なのじゃ」(第35章、ダンブルドア)
「きみの善なる心を、熱い頭が支配してしまいはせぬかと案じたのじゃ。」(第35章、ダンブルドア)
「死者を哀れむではない、ハリー。生きている者を哀れむのじゃ。とくに愛なくして生きている者たちを」(第35章、ダンブルドア)
「これは現実のことなのですか? それとも、全部、僕の頭の中で怒っていることなのですか?」
ダンブルドアは晴れやかにハリーに笑いかけた。(中略)
「もちろん、きみの頭の中で怒っていることじゃよ、ハリー。しかし、だからといって、それが現実ではないと言えるじゃろうか?」(第35章)
「杖を所有するだけでは十分ではない!杖を持って使うだけでは、杖は本当におまえのものにはならない。(中略)杖は魔法使いを選ぶ...」(第36章、ハリー)
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