まるまる2ヶ月あいてしまいました。クリスマスも過ぎてもう年末。
今年読んだ本は、できるだけ今年のうちにブログにしておきたいところです。
こちらは今年の秋くらいに読んだ本。
「寂しさ」をテーマにしたものを探していて、出会いました。
「ふと感じる寂しさ、孤独感を癒す本」(根本裕幸 氏 著、清流出版、2021年5月初版)
最近、いろいろな事件や問題を掘り下げていくと、詰まるところ、すべて「寂しさ」(正確には、寂しさとの付き合い方がうまくいっていないこと)に起因するんじゃないか?という仮説を持っています。
それくらい大事なテーマだと思うのに、意外とこれを正面から扱っている本が少ないというのも今回探していて感じたことです。
そんな中で、この本は、良書と思いました。
なぜ寂しいと感じるのか、
寂しさを感じたらどうすればいいか、
どういう習慣をつければ寂しさの底に沈み込んでしまうことなく生きていけるか、
ということが丁寧に書かれています。
対症療法ではなく、本質的なところを扱っているのがいいなと思いました。
普段から「寂しい」と感じる人はもちろんですが、
忙しくしたり、SNSやネットで時間をつぶしたりなど、寂しさを感じないようにしている人にも、とてもおすすめです。
また、私はコーチとしても、自分が普段クライアントさんと一緒にやっていることが方向性として間違っていないなということも確認できてよかったです。
「寂しさ」は誰もが感じている
私自身、寂しがり屋で、実際、寂しく感じる時もあります。
独り身だからかなと思ったら、どうやらそういうことでもないようで、
配偶者がいても、恋人がいても、「自分はひとりだ」と感じる人は少なくないようです。
経営者などが孤独だというのも、とてもよくある話。
そもそも私たちは生まれる時に、母親と臍の緒でつながり一体だったところから、
胎内の外に出て、臍の緒を切られ、物理的なつながりを断たれる、ということを経験しています。
生まれながらにして、みんな寂しい。
寂しさとどうつきあっていくのかは、人生かけて学んでいく課題のように感じます。
寂しさは感じて当然、あったらダメなものではない、ということに気づくだけでも、だいぶ心持ちが楽になるように感じるのは私だけでしょうか?
寂しさと付き合えないことが起こす問題
あらゆる「依存」は寂しさに起因するのだな、というのを本書で改めて感じました。
実は、「孤独感や寂しさをまったく感じていない」という人はこの世に存在しません。しかし、同時に私たちにはその感情を怖れ、感じないようにするために、何かでごまかそうとする心理があります。
具体的には、誰かと一緒にいることで寂しさを感じないようにしたり、仕事や家事において何らかの役割を担うことで孤独にならないようにしていたり、恋愛・仕事中・ギャンブル・甘いもの等の刺激物に依存することで寂しさを紛らわそうとしたりしているのです。
(中略)
孤独感や寂しさは時に「人を狂わすほどの感情」と例えられるほど苦しく、つらい感情です。この感情を長く抱え込んでしまうと精神的に不安定になって、自分を保てなくなります。だから、人はできるだけこの感情から目を背けたくなり、先に紹介したような方法でこの感情を感じないようにしようとします。(p.4-7)
極端な例は、アルコール中毒、薬物中毒、過食性障害などですが、
そこに至らないまでも、ワーカホリック、恋人や家族への過度な依存、スマホ/SNSが手放せない、などということは、かなり広くいろんな場所で起きているのではないでしょうか。
しかし、何かでそれをごまかしたとしても、その感情がなくなるわけではなく、 むしろ逆に、その分だけより強い刺激を求めるようになります。それがひどくなれば心身の調子を崩すことになります。(p.7)
このネガティブ・スパイラルから脱するには、「孤独感」と「寂しさ」から逃げるのではなく、この人間の根源的な感情に真正面から向き合い、そして、上手に付き合っていけるようになることが道筋になります。(p.7など)
寂しさの原因と対処法
その前に、そもそも私たちはなぜ寂しさを感じるのか。
本書では、その原因をこのように表現しています。素晴らしい表現だと思いました。
私たちは人間関係の中で孤独感を感じ、寂しさを覚えます。そうすると「人とのつながりが切れたから寂しさを感じる」と思いがちなのですが、実はそうではありません。
結論から言えば「自分とのつながりが切れたときに人は寂しさを感じ、孤独になる」のです。(p.46、太字は私の方でさせて頂きました)
「自分とのつながり」というのは、「自分の心(感情)と意識(思考)とのつながり」のことを言います。「自分が今どんな気分で、何を感じ、何を思っているのか?」ということを、きちんと意識で受け止めることができている状態を「自分とつながっている」と言います。(後略) 逆に、自分の気持ちがわからなくなったり、周りの状況に振り回されて自分よりも他者に意識が向いているときは、「自分とのつながりが切れている」と表現します。(p.52、同上)
そう、結局は自分との関係の問題。
コーチングでも、結局やっていることは、自分とのつながりを取り戻すことです。
その鍵は、私は「自己受容」だと考えています。
自分を丸ごと受け止める。
これがなかなか。言うは易し。
「さあ、今から自己受容しよう」と言ってもできるものではありません。
これは「やる」というよりも「体験する」ものだからです。
本書では、自分との繋がりを取り戻すためのエクササイズがいくつも掲載されています。
私がクライアントさんに出したことのある宿題などもありました。
自分が各回のセッションで思いついたアイディアがカウンセラーの方の視点から見ても有効なんだなとわかって、より迷いなく提案できるようになったと感じます。
「寂しさ」や「孤独感」に向き合うことは、より深くやっていこうとすれば、勇気が必要になると思います。
本書を頼りに一人でやるのも良いのですが、コーチやカウンセラーにそのプロセスにともに居てもらうことは、とても大きな心の支えとなり、進みが早いだろうと思います。
なお、本書では自己肯定についても触れられています。
私は、自己受容のない自己肯定感は意味がないか、時には非常に危険だとも思っているのですが、本書では、自己嫌悪・自己受容・自己肯定感・自己充足 などの関係についても解きほぐして書いていらっしゃると感じました。
つながりは心の中でも感じられる
この本を読んだからなのかわかりませんが、
私自身は最近、物理的環境も人間関係も以前と何も変わらないのに、寂しいと感じることが減って、少し不思議に感じています。
ひとつ気づくのは、会えない人たちともつながっていると感じることが多くなったこと。
別に暮らしている両親も、しばらく会えていない友達も、老人ホームに入っている祖母も。
さらに言えば、別れてしまった人たちや、他界してしまった祖父母や親戚、友人たちも。
みんな私の中には存在していて、その人たちを思い出せば、あちらも私を見ていてくれているような気がします。
自分が望めば、つながれる。
コロナで物理的に会う機会が減り、友達やクライアントさんとも、音声だけ、または画面越しでつながっていることが多いということも多いに影響している気がします。
人間の意識って、感覚って、存在って、何なのだろう?なんていうことも考えてしまいます。
寂しさはつらいもの。
だけど、その経験をしているから、寂しさをわかる心があるから、
人のぬくもりや暖かさを感じることができるのだと思います。
「寂しさを感じてる人はダメ」じゃなくて、「わかるよ」ってお互いに言い合えたら、世界はもっと優しくなっていけそうですね。
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ポッドキャストでも「寂しさ」について話しました。
「依存」についてはこちらをどうぞ。
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