ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

私の履歴書 寺田千代乃さん(日経新聞 2020年9月)

読書録、ときどき鑑賞録、そして、ついには新聞連載読後録。

なんでも読書録にしてしまう最近です。

日本経済新聞の「私の履歴書」。

2020年9月の寺田千代乃さん(アートコーポレーション(アート引越センター)名誉会長)のお話、とっても面白かったです。

とりわけアート引越センターができていくまでのところ、開業したての自分に、刺激と勇気を頂きました。

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時代が違っても、やることの本質は同じ

今や従業員3,000人超、連結売り上げ1,000億円超の同社も、昭和51年の創業当時は寺田ご夫妻でのスタートです。

しかも、ご主人が始められた運送業(寺田運輸株式会社)が主で、トラックの有効活用の観点から始めた引越し業。

その道のりは、今の時代に起業することと、本質的には変わらないと感じました。

 

新しい価値で新しい市場を生みだす

それまで「物を運ぶ」こととして世の中で認識されていた引越業で、アートは引越を「サービス」として新しい価値を提供することで、新しいマーケットを創り出している。他者と同じ土俵で競合しないそれって、ブルー・オーシャン戦略

 

顧客に見つけてもらいやすくする

なぜ「アート」かといえば、

当時の潜在顧客が一番に使う検索ツールである「電話帳」で一番上に載るため。

これって、現代のインターネットのSEO対策とかと、技術は違うけど、全く同じ発想!

なぜ「0123」かといえば、

事業所の開設申し込みをした際に提示された(要は、そのとき空いていて取得し得た)いくつかの電話番号から、縁起(右上がり)や自分たちの事業を表していること(ゼロからスタート)、覚えてもらいやすさ、かけやすさなどを考えて決めたとのこと。

これって、今、どんなドメイン名を取得しようかを考えたりするのと同じこと。

まだフリーダイヤルなどがない時代、大阪から始まり、全国各地で0123の番号を確保することに奔走し、交渉して人から譲ってもらう。東京ではかなりの高額にもなった模様。

これって、人気ドメインの確保や、譲渡などと同じこと。

「0123」は当時のダイアル式電話だと回しやすく戻りやすいという利点がある、というところは、時代も感じました。

 

ベンチャー企業を始めようとしてベンチャーになるのではない

銀行に融資の相談に行くと「ベンチャーだから」と断られたりしたお話も。

でも当時、ご自身では「ベンチャー」という言葉をご存知ない。

「ベンチャーって何?」「私たちのような会社はベンチャーと言われるらしい」というような感じ。

この感じが、とても本質的だな、と思いました。

 

時々、「ベンチャー企業を起業したい」みたいな表現を耳にすることがありますが、個人的にはその言い方には、いつも少なからず違和感を覚えます。

順番的には、

やりたいこと・やる必要性を感じることがあって、それをやっている既存企業もあまりないから、自分で始めてみる。

そういう新しいことをやる小規模な会社は、世の中ではベンチャーと認識される。

ということなのであって、

ベンチャーを始めるとか、何か新しいことに挑戦すると決めてから、何をやるかを決める、というのは、何か、逆のような気がしてしまいます。

 

アイディアは常に世の中にある

寺田ご夫妻が引越業を始められたのは、ご主人が始められた運送業でトラックを空箱のまま走らせることがあるのはもったいない、他に何かに使えないか?というところから。

そういう問題意識を持ちながら生活している中で、ふと引越しの場面に出会って、そこから発想が広がっていく。

後に始められた保育事業も、引越し業で働いてもらう社員たちのニーズを見ていて出てきている発想です。

記事からは、ずっと昔から引越業をやりたいと思っていたとか、ずっと昔から日本の保育事業の状況に問題意識を持っていたとか、そういうことはあまり感じませんでした。

 

起業しようとするときに、「自分が何をしたいか」は、とても大事なファクターなのですが、そこだけを見ていても、どこかで行き止まりになる感じがしています。

世の中は何を欲しているのか。

そこを知らないと、アイディアも出てこない。

それを知るには、自分の内省から外に、家から外に、出てみる必要があります。

 

初期の頃からアンケートをとっていらっしゃるというのも、その一環であるのだろうと思います。

結局のところ、新しいサービスのアイディアのタネは、顧客と現場にしかない。

一度事業を始めた人が優位なのは、このアイディアを顧客から直接取得できるからなのかもしれないなぁとも、ふと思いました。

 

世の中のせいにしない 

いろんなところで「女性初」を経験していらっしゃった寺田さん。

でも、「女性だから、という意識をできるだけ持たないようにしてきた」、というのもとても共感しました。

女性だから軽く見られるとか、信用ならないとか、もちろん色々言う人はいる。

でも、その言葉を真実として捉えていない。

四つの約束」で言うところの、その黒魔術がかかっておらず、毒素が体にまわらない。

女性だからということに囚われていないから、男性ばかりの環境の中にもそのままの自分で入っていける。

もちろん子育て環境が整っていない時代だけど、お子さんを会社に連れて行ったり、なんとかしてきている。

 

中小企業であることを言い訳にせずに事業を展開していらしたのも同じ。

「うちは零細だから」「うちは中小だから」

だから、諦める? だから、何か策を考える?

 

「こういう環境が整ってないからできない」

ちょっと厳しいようだけど、そういう人は、一つ環境が整っても、きっと、また次の”不十分な”環境を探し出してきて、それを理由に動かない。

まるでできない理由を探しているかのように。

 

思い通り行かないことは、どんな時代にも、どんな人にも必ずある。

それを何かのせいにして不平不満で終わるのか、「だったらどうしようか」と考えて動くのか。

人生や組織を自ら動かしていく人とそうでない人の間には、この違いがあるように感じます。

 

こうやって、アクティブに動かれる寺田さんを止めないご家族も、とても素敵だなと思います。

 

次引越しするときはアートに頼もうか、と思ってしまうから、全く単純です。笑。

 

本文はこちらから:

www.nikkei.com

 

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