ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

バベルの学校

お題「#おうち時間」に相応しい時間の過ごし方。

このブログでも何度か触れているNAGATACHO GRIDの映画上映会。

緊急事態宣言が出てからの対応も早く、この時期、オンライン上映会を企画してくださっています。

本日は、以前から見たいと思っていて見逃していた映画「バベルの学校」(ジュリー・ベルトゥチェリ監督、2013年)を上映してくださるというので、それは是非と思って参加してきました。

とってもよかったです。とってもオススメ。

 

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舞台はパリの中学校。

フランスを母国語としない子供たちのための「適応クラス」に通う生徒たちが主人公のドキュメンタリーです。

 

学校があるのは、地域的にはおそらくあまり裕福ではないエリア。

生徒たちは言葉がネイティブのように話せず、差別も経験しているし、劣等感も感じている。

 

そんな生徒たちの日々を映していく映画。

焦点は教育内容・教育方法というよりも、彼(女)らのリアルです。

リアルだから、余計に胸に迫ります。

 

何歳であっても、語るべきストーリーを持っている

一番私が胸を打たれたのは、生徒たちが、これまでの人生と、今フランスで感じていることを語るところ。

 

フランスに来た理由は様々。

親の経済的な理由から。

政治的迫害から逃れるために。

親の虐待から逃れるために。

より良い生活を手にするために。

より良い教育を受けるために。

自分の夢を叶えるために。

 

アフリカから、アジアから、中東から、東欧から、南米から。

 

別離からの新しい土地。

「フランスでの生活は簡単?」という質問に、全員が口を揃えてNon!という。

 

そこにあるのは、葛藤、悔しさ、淋しさ、不安、悲しみ。

祖国にも、フランスにも、自分の居場所がないと感じる子もいます。

 

ワークショップやコーチングなどでも、その人の人生を語るストーリーテリングは、本人にも他者にもとても心に染みる時間となりますが、10代半ばでも、こんなに沢山の語るべきことを持っている。

これは日本の子供達でも同じだと思います。

友達も大人も、もっとこのストーリーを聴く必要がある、と思いました。

 

もうこの歳から、自分の人生を自分でつくっていくという姿勢 

多くの生徒にとって、フランスに来たのは自分の選択ではありません。

家庭が複雑そうなことが伺える子も少なくありません。

ですが、彼らは、いつまでもそれを親たちのせいにしている様子もなく、今この地にいることを所与のこととして、ここから自分はどう生きていくのか、ということを考え、行動しているように見えました。

ここで生きていけないからといって、すぐに祖国に帰ることができるわけでもない。

仮に帰ったからといって生活がよくなる訳でもない。

だから、ここで生きていくことができるように、言語や勉強や得意なことを頑張る。

この学校の仲間とも、感情丸出しでぶつかりながらも、共に生きていく。

その様子に、「たくましい」と思いました。

 

学校は、責任ある主体として、生徒と接している

そして、学校側も、「これはあなたの人生よ」というスタンス(そういう言葉は出てはこなかったけど)。

学習が追いついていなければ、適応クラスに留まることを勧める。

普通クラスに編入するときも、年齢にかかわらず、学力に適した学年を勧める。

進級したいなら、自分で頑張るしかない。

進級させなければ、とか、卒業させなければ、とか、そういうことよりも、この子が自立してくために必要なことは何か、というところから関わっていると感じました。

厳しいようでいて、本当に生徒のことを考えているから、と言えるとも思います。

そして、生徒たちの多様な人生は、もうこういうところから始まっているのだなぁ、とも。

日本は「社会人何年目」と言えばおよその年齢は察することができる社会ですが、そうではない人生が、もう中学校から始まっている。

 

経験が問いをつくる

授業の様子からは、生徒たちのものを見る視点、発想力、考え方に驚かされます。

話は、哲学的、宗教的なものにまで及びます。

この洞察や感性は、この多様性が体に刻まれるような生活の中で、きっといろんな社会の現実を見てきているからだろうとも思います。

キレイゴトはあまり言いたくないですが、こういう経験をしているからこそ感じられる繊細さがある。

彼らについて、学校や社会やオトナたちが、痛みがわかる大切な社会のリソースとして見ていくのか、それとも、社会には役に立たない子供として見ていくのかによって、素晴らしい哲学者たちにもなれば、犯罪やテロなどの道に進むことにもなってしまうのだと思います。(この映画に出てくる子たちはみんな前者と思いました。)

 

 

鑑賞後のトークセッションでは、日本の公立学校でこのようなクラスを担当されている先生方のお話も伺えました。

映画を見ながら、日本ではこういう環境・状況はないだろうなぁと思っていたのですが、先生方が、この映画の内容は、ご自身たちの現場にもとても近いとおっしゃっていたのは、驚きでした。

日本の公立の小中高にも、日本語が十分ではない外国の生徒たちが沢山学んでいる時代なのですね。

 

 

それにしても、自宅にいながら、楽な服を着て、楽な姿勢で映画を観て、

更にその後、全国津々浦々のハジメマシテの方々と感想までシェアできて、

すごい時代が来たなぁと思います。

 

Gaiaxさん、いつもありがとうございます。

また、他の企画も楽しみにしています!

 

イベントは、Facebookでフォローするのが良さそうです。

https://www.facebook.com/NagatachoGRiD/

 

バベルの学校 [DVD]

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  • 発売日: 2015/10/10
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過去にNAGATACHO-GRIDさんのイベントで見た映画(他にもあった気がしますが):

www.cocomichi.club

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happy -しあわせを探すあなたへ(字幕版)

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  • 発売日: 2015/05/20
  • メディア: Prime Video
 

 

(お気に召す記事がありましたら、ぜひシェア頂けたらと思います。必要な人に、本や映画が届きますように。)