ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜

ファッション業界の裏側を知ってみたくて、見てみました@Nagatacho GRIDのイベントにて。

『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』(原題:The True Cost、2015、監督:Andrew Morgan氏)

 

ザ・トゥルー・コスト ?ファストファッション 真の代償?(字幕版)

 

予告編はこちら。

unitedpeople.jp

 

バングラデシュの縫製工場で1,000人以上の死者、2,500人以上の負傷者を出したラナ・プラザ事件(2013年)をきっかけとして作られた作品。

エシカル・ファッション(Ethical Fashion)という言葉は、この映画がきっかけとなって広まったそうです。

 

この映画によれば、ファッション業界は、石油業界に次ぐ環境社会の破壊に(悪い意味で)貢献している業界。

本作品の中では、特に、バングラデシュ等の製造現場で起きている労働者の安全・健康・労働条件の問題(広く言って人権問題)、大量のゴミ問題、綿花の農薬問題等が扱われています。

生々しい映像もあり、華やかなファッション業界との対比で映し出される映像にはインパクトがありました。

 

この映画という意味ではなく、一般論として、こういう社会派的な話をするとき、

「大企業が利益追求に走っている」「経営者が労働者を搾取している」、「だから大企業や経営者をもっと取り締まれ、奴らをとっちめろ」、という論調になると、私はちょっと気持ちが冷めてしまいます。(本作品ではいろいろな意見が紹介されています。)

そういうことも確かにあるのかもしれないのですが、その先にいるのは株主であり、私たち消費者です。

できるだけ安い商品を求める、粗末に扱う、すぐ飽きる、次々と欲しがる、とにかく沢山欲しい・買いたい。

そういう私たち消費者の行動があるから、あるいは、ちょっと広告で刺激すればすぐに私たちはこういう消費行動をとるから、企業は、その私たちの欲を満たしてくれようとします。

また、株主としての私たち市民は、投資先の会社に、競合他社に負けないような好業績を求めます。それは経営者に対してはコストカットの圧力になります。自分が一株主ではなかったとしても、私たちに代わって資産運用している年金基金や保険会社・年金基金に、”しっかりとした資金運用”を求めます。

更に言えば、大企業によるサプライチェーンのおかげで、私たちの雇用も保たれているかもしれません。

また、自分がその経営者だったらどのように対処するだろうか、と考えてみれば、物事の複雑さも感じ取っていくことができるのではないかと思います。

 

世の中の何かがおかしいと思ったら、「誰か」を責めるのではなく、それを自分ゴトとして考える、システムとして見てみる、先日紹介したFACTFULNESS(ファクトフルネス)で言うところの「犯人捜し本能」にとらわれない、ということは忘れないでいたいと思います。

 

ちなみに、服に関して、私がささやかにやっていることは、

こんまり」さんの教えに従って、本当にトキめくモノを買うこと。

着古した服は切って小さい雑巾にして使うこと。

それでもやっぱり、なんでこれ買ってしまったんだろう、という服は時々発生します。。。

 

本作品でも登場するパタゴニア社の考え方にはとても共感します。

同社では、自社の商品を買う人を「消費者」とは呼ばず「顧客」と呼び、環境のことを考える同社の考え方を理解してくれる人に買ってもらいたい、と、顧客を選んでいます。

消費者に迎合するのではなく、むしろ啓蒙する。

同じ価値観を共有するコミュニティを形成し、あるべき未来へとリードしているようにも見えます。

 

大量消費。物質主義。

それを批判するのも簡単なのですが、更にそこも、自分自身の経験も振り返りながら一歩踏み込んで考えて見ると、自分自身についての自信のなさ、他者よりも優位でなくてはならない、といった怖れがあるように思われます。

本質的な解決のためには、「モノを大切に使いましょう」といった声かけだけではなく、大量消費・物質主義を引き起こすマインドや欠乏感へのアプローチが必要であると感じます。

 

ファッション業界は、ラナ・プラザ事件や本映画をきっかけに変化が起きていると推測しますが、本作品が伝えていることは、ファッションだけではなく、食品廃棄やプラスチック問題などあらゆることに通ずるものだとも思いました。

 

自分の日常の生活がどのように成り立っているのか。

自分の今の行動の先には何があるのか。

立ち止まって考えて見直す。

自分が世界のシステムの一員であることを自覚する。

そんな機会を与えてくれる作品でした。

 

 

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