ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

最強の働き方 世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓

新型コロナウイルスで、ともすれば気持ちが鬱々としてしまいそうな今日この頃。

笑いたい! 何か笑える本! と手元の未読の本を漁っていて、見つけました。

最強の働き方;世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓」(ムーギー・キム氏 著、東洋経済、2016年7月初版)

INSEADつながりのお友達、ムーギーの著書です。

以前、ちょっとした仕事をお手伝いする機会があり、初めて彼に会う前に、どんな人なのか予習しておこうと思って買ったものの、実は読んでいないままでした。

(まだ読んでなかったの!と怒られそう。笑。)

 

最強の働き方;世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓

 

本の内容は、タイトルそのままです。

  • 第1章:一流の基本(Basic)
  • 第2章:一流の自己管理(Discipline)
  • 第3章:一流の心構え(Mindset)
  • 第4章:一流のリーダーシップ(Leadership)
  • 第5章:一流の自己実現(Self-realization)

 

ポイントは、著者自身が一流だとしてそこから教えを説いているのではなく、(二流であると自嘲する)著者が世界の一流の人たちと仕事してきた中で、「世界中の一流のビジネスパーソンに怒られ、説教され、また感心してきた「働き方」や「生き様」で、多くの人が実践していること」 (p.7)をまとめたものです。なので、嫌味な感じがありません。

彼が公私で身を置いた、投資銀行やコンサルティングファーム、プライベートエクイティ、ビジネススクールなどには、確かに、グローバルに活躍する面白くて優秀な人たちが沢山います。

日本人だけではなく、世界に目を広げてみた時、そういう人たちが何を考え、どのように行動しているのか、というのを知る本として読むと、過剰に反応することなく、興味深く読めるのではないかと思います。

私も、幸運にも、「さすが!」「すごい!」と思わせていただく方々と接する機会を公私ともに得てきたので、読みながら、「あるある、あるよねー、そうだよねー」と頷いたりしながら、読みました。

きっと読者も思っていたことだけど、彼にしか口に出せない毒舌とユーモアと、彼自身の自虐ネタもちょいちょい挟まれていて、くっくっと笑ってしまいます。

 

なお、冒頭に、「「この本一冊を読むだけで、人生が変わる」(中略)本を追い求めている方は、本書を買ってはならないし、”アマゾン”川流域で大暴れしてもならない。というのも、そんなユニコーン本は存在しないからだ。」(p.19-20)と、予め注意書きがあります。

 

他にも20ページに及ぶ前置き・注意書きが本の中にも既にあるのですが、

この本の使い方を間違えず、本当の価値を得るために、予め理解しておくと良いのではないかと、私なりに思うところを、心得としてまとめてみました。

 

心得その1:自分が取り入れたいものを取りに行くつもりで

この本にはグローバルエリートたちが現実に実践していることの実例が出てきます。

まさに、「本書からは向こう数十年のキャリアで学んでいく重要なビジネス上の教訓の多くを、先取りして学んでいただける」(p.19)本。

一方で、それは、色々な人の特徴的なところを集めたもの、でもあります。

とりわけ第1章、第2章のところは、全員が全員やっているわけではないと思いますし、これ全部をやっている人というのもいないと思います。

また、著者が働いてきた世界も、外資系コンサルや金融など、ある意味、偏っているとも言えます。

全部をやらなくては、と思うというよりは、これは自分の人生やキャリアにも役にたつな、と思うものを、自分で選んで取り入れていくのが良いのではないかと思います。

(書いてあること全部なんて到底やっていないし、できないと思っている自分への慰めでもありますが。。。)

 

心得その2:書いてあることそのことを全部「そのまま」やると、ちょっとコミカルかも(第1章、第2章)

第1章は、メールの書き方から話し方まで、基本の「キ」。

「メールは即リプライ」「メモとり魔」など、確かに、自分の尊敬する方々の中にも、そういう方々のお顔が浮かびます。

けれども、これ、「そうか、メールの返信が遅いと、一流と見られなくなってしまう!」「メモを取りまくらなくては一流になれない!」という風なモチベーションからやり始めると、おかしなことになってくると思います。

あらゆるメールをバシバシ打ち返し、血眼になってメモを取りまくり、メモは絶対にピラミッド構造でないと!と殺気立ってやっていたら、ちょっと滑稽にすら見えるかもしれません。その状態は、多分、二流、いや三流?

一流の人たちは、仕事を後回しにしないとか、お礼は早く伝えるとか、仕事のチャンスを逃さないなどの気持ちから、結果として、メールの返信が早くなったり、

大事な情報は取りこぼしたくない、この機会から全てを学びとりたい、自分の仕事に生かしたい、という気持ちから、結果として、メモを取る姿勢になっているのだと思います。

第2章の自己管理も同じです。

例えば、健康管理に関しても、一流の人たちの根底にあるのは、「いつもベストなコンディションで、楽しみながら、納得できる仕事をするために、健康を損なっていては大変だ・もったいない」というマインドから、結果として、自己管理をするようになるのだと思います。

 

心得その3:ハウツー本として読むと二流になる

第3章以降はマインドの話になってきて、より本質的な話になってきます。

ここでも、これを「一流になるためのハウツー本」として読むとおかしなことになるだろうと思います。

例えば、「#40 給料とポジション以上の仕事をする」(=期待を上回る)。

期待を上回って一流だということを証明してやる!というようなモチベーションだと空回りです。

やりたいことをやっていると自然に、極めたくなるものです。自分の大事な仕事だと思えば、手抜きなど思いもしません。それが結果として、相手が期待していた以上の質になって喜ばれる、ということだと思います。

同様に、

「#49 部下を大切にする企業文化を浸透させるー尊重されていることを、実感させる」

「#51 部下の市場価値を上げるー部下の自己実現を支援する」

「#53 日陰の重要な仕事に光を当てるー部下を褒め、モチベーションを刺激する」

なども、

こうしておけば部下からの評価もよくなるだろう、こうしておけばチームも安泰なはず、というような取引や打算的な考えから動くと、これも簡単に見透かされると思います。

本当に持続可能な組織の文化を作りたいという気持ち、一人の人間として部下を大切に思う気持ち、自分の事業に必要不可欠な大事なメンバーとして尊重し感謝する気持ち、というところから動いているから、結果として、そういう行動が目に見えて現れるのが一流の人たちということだと思います。

 

先日紹介した「リーダーシップの旅 見えないものを見る」での、野田さんの、「リーダーは、なろうとしてなるものではなく、結果として「なる」もの」という言葉を思い出します。

一流も、結果として、なるものなのだろうと思います。

 

「一流」の流儀は自分で決める

結局のところ、自分の流儀というのは自分で決めていくのだろうと思います。

それをつくっていこうとするのが一流であって、「一流の流儀というのはどこかにあるのだろう」と思っているのが二流、ということなのかもしれません。

自分の流儀を決めていくために、まずは、本書も含め、世の中の多様な本から学ぶも良し、尊敬する人を見習うも良し。

その先、自分なりの流儀を形成していくのは、やはり実践の中でなのだろうと思います。

どこでそれをやるか。

それは、「自分が大事にしたいと思う仕事で」ということではないかなと思います。

「やらされ仕事」だと思ってやっているうちは、きっと創意工夫に限界があります。いろんなやり方を試してみようなどという意欲も、どこかで枯れ果てます。

それよりも、規模や意義の大小を問わず、自分にとって大事なことで勝負する経験を積み、その経験と試行錯誤を重ねることが、自分なりの思いや哲学を形にしていくことにつながるのではないかと思います。

それは一朝一夕にできるものではなくて、それこそ人生をかけて重ねていくもの。

仮に今は本業でそれができないなら、副業でやるも良し、趣味の世界でやるも良し。

ここでは負けたくないと思う世界だからこそ、極めていく意欲が湧いてきます。うまくいかないときは、とんでもなく悔しくて、それが磨きをかける原動力にもなります。

 

実は第5章(一流の自己実現)が出発点なのかもしれない

そのような仕事はどうやって見つけるのか、始めるのか。

そのヒントは第5章にあります。

一流の仕事ができるようになってから、自分のしたい仕事をする、のではなく、

まず自分のしたい仕事を始めてしまう、そこで一流になれるように頑張る、という流れの方が近道のような気がするのは私だけでしょうか。

散々な失敗もありますが、失敗するならむしろ早い方がいい。

 

実は、それは本書の冒頭にも書かれています。

「本書の目的を一言で書けば、自分が自己実現できる分野を選んで「一流(ファーストクラス)の仕事をするためにはどうすればいいか?」という問いに対して、読後に具体的な行動指針を得られるようにすることである。」(p.5、注:原文は下線なし) 

自分が自己実現できる分野を決めることが先。

 

そう思うと、この本の読み方も変わってきて、第5章まで読んだ後にも、自己実現できる分野でどう一流になろうかとまた基本の第1章に戻ったりして。

「本書の内容は極めて本質的なので、定期的に何度も読み返す「働き方と自己実現」の教科書として、末長く愛読していただければ幸いだ」(p. 22)というムーギーの術中にまんまとはまってしまいます。

 

二流だと自嘲気味に書いているけど、ムーギーの凄さは、まずは行動のはやさ。アイディアを行動に移すのもはやいし、仕事もはやい。

正直なところ、知り合って暫くしてからもなお、何でこの人はこんなに人気があるんだろう?何でこんなに重宝されるんだろう?と不思議だったのですが(ゴメン・・・)、とあるパネルディスカッションを一緒に経験させてもらって、日本語であれ、英語であれ、話し手の言わんとすることを、瞬時に要点を逃さず捉えて、誰にとってもわかりやすい言葉で表現できるところを目のあたりにして、彼が業界を超えて多方面から重宝される理由がわかった気がしました。ここに韓国語と中国語が加わるのですから、更にすごいことだと思います。

何と言っても、いろんな人と会って、いろんなことを知って、そして面白いものとして表現するのが本当に楽しそう。この本を読むだけでも、その人たちの面白い知恵を逃すまいと、いつもめちゃくちゃメモ取ってたんだろうなぁと想像できます。

そして本書からも、お世話になった方々への敬意が感じられます。

そういうところに、チャンスは転がり込んで、豊かな人脈ができていくのだと思います。

 

この本によると、私はメールの返信も遅くて、朝も遅くて、人への気配りも足りていなくて、まだまだダメダメですが、そこで立ち止まらずに「好きな仕事を全部する」(p.290)、「将来やりたいことは、すべてやる」(同)のとおりに動いて、協働してみてよかったです。そこからまた新しい世界に出逢えました。

 

更に言えば、それよりも前にコーアクティブ・リーダーシップ・プログラムを経験していて良かったです。そうでなければ、この人から繰り出されるカオスとスピードにはきっとついていけなかったと思います。笑。

 

最近、新刊「世界トップエリートのコミュ力の基本 ビジネスコミュニケーション能力を劇的に高める33の絶対ルール」も出たそうで。

ますますの活躍、楽しみにしています。

 

 最新刊: 

その他、これまでの著書(最高とか最強とかつければいいと思ってますかね。笑。):

お母様(ミセス・パンプキン)との共著: