3月3日、ひな祭り。
昨年読んだ本を思い出しました。実家の本棚より拝借しました。
「独学のススメ-頑張らない! 「定年後」の学び方10か条」(若宮正子氏 著、2019年5月初版、中公新書ラクレ)
2017年に81歳でiPhoneアプリ「hinadan」を開発した、世界最高齢プログラマー若宮さん(通称:マーチャン)の著書です。
副題に「定年後の学び方」と買いてありますが、紹介されてる考え方は、むしろ現代の若者とその親御さんたちにこそ必要な気もします。
何かを始めるのに、経験も年齢も関係ない
hinadanは、お雛様のお人形を正しく配列していくゲームアプリです。
お内裏様とお雛様、どっちが右でどっちが左?
右大臣、左大臣は、どっちから見て右左?
三人官女、五人囃子の順番だなんて、段飾りの説明書でも見ないとわからない!
そこがまさにポイントで。
普通のゲームでは、お年寄りは、スピードや瞬発力でとても若者には勝てない。
お年寄りでも勝てるゲームがほしい、と思ったところが発端だそうです。
(その発想自体が、もはや年齢を気にしていなくて、すごいとも思います。)
私たち「おばあちゃん」は、小さい頃から段飾りを見ていますでしょう。茂木さんのような若い方よりもうまくできて、優越感が味わえるという仕掛けなんですよ。(p.179、茂木さん(当時55歳)との対談にて。)
最初は、お知り合いに開発をお願いしたら、自分で作ったら?ということになって挑戦されたのだそうです。
高校卒業後、銀行員で定年(60歳)まで働いて、定年退職後も海外へ一人旅などアクティブに過ごされ、80歳を過ぎてから、我流でゲームを作るためにプログラミングを学び始めて、実際にアプリまで作ってしまう。
パソコンを始めたのは、定年の少し前。ちょうどウインドウズ95が販売されたような頃。
いくつになっても好奇心を失わず、年老いたと憂うことも卑屈になることもなく、やってみよう!という姿勢でいらっしゃることは、これから年齢を重ねていく私たちにとって、この先を明るく照らしてくれているかのようです。
「80歳を過ぎてから、自分史に書くべきコンテンツが増え続けている」(p.100)とご自身でもおっしゃっており、お友達からも「マーチャンは80歳を過ぎて成り上がっているから珍しい」(p.99)と言われているとのこと。
アップル社CEOティム・クック氏が、若宮さんに直接かけられたという言葉が、本当にその通りです。
「あなたは、私たちにとって、とても勇気づけられる存在です」
(p.101 、2017年6月アップル社のイベントに招待された際に。)
独学=自分が学びたいことを、自分の学びたい方法で学ぶ
この本でいう「独学」とは、一人で学ぶ、という意味ではなく、
義務教育の対義語的に使われています。
「誰かに強制されてやるのではなく、自分からやる勉強」(p.4)のこと。
「独学」とは、勉強する本人が主体性を持って、自分で「なにを学ぶか」「どのようにして学ぶか」を決めて勉強すること(p.4 )。
教室に通ってもいいし、通わなくてもいい。
「自分が学びたいこと」が何かわからない、という方も意外と少なくないと思います。
また、どうやって学んだらいいかも分からない、という方もいらっしゃると思います。
本書では、その時の心得を示していらっしゃいます。
目次読むだけで、「ですよね〜!」と思います。
これを84歳の時点で書いていらっしゃるのが、本当にすごいと思います。個人的には、特に第7条とか。
第1条:バンジージャンプじゃあるまいし、こわがらずに飛び込んでみよう!
第2条:飽きたらやめちゃえ
第3条:英語は「大阪人」のノリで
第4条:ノルマを課しちゃダメ
第5条:「やりたいこと」の見つけ方、お教えします
第6条:ちょっと待った!自分史を書くのはまだ早い
第7条:「将来」に備えない。10年経ったら世界は違う
第8条:退職してからの、お友達の作り方
第9条:本から学ぼう
第10条:教えることは、学ぶこと
上級編:シニアは、理科と現代社会を学び直そう
最上級編:介護にITを活用しよう
対談:人生60歳を過ぎると楽しくなります(茂木健一郎さんと)
本文中では、ご自身の体験談がいろいろ書かれています。
日課も持たず、毎日違う日を過ごしている、Uberなども使いながら海外旅行してしまう、75歳からピアノを習い始める、ITやAIも恐れるのではなくむしろ仲良くしていく。
「こんなふうに、新しいところに身一つで飛び込んでも、意外となんとかなるということを知ってほしい」(p.33)
そんな姿は、軽やかで、 たくましい。
何よりも、ご本人がとても楽しそう。
そして、変わりゆく時代に抵抗せず、自分も変わっていこうという姿勢は、とてもしなやか。
できれば、コンピュータの(オペレーティングシステムの)ように「自動更新」してくれるといいのですが、脳みそはそうもいきません。いろいろなものを見たり聞いたりして、自力でアップデートしなければいけない。自分の頭の中身のバージョンが古くなっているかもしれない、ということを常に意識して、アップデートを試みましょう。(p.162-163)
何かを始めるのに、遅すぎることはない
何かやってみようとするとき、私たちの中にはいろんな声が渦巻きます。
え、今更?
それ、やったことないじゃん。
それ、やってみたところで何になるわけ?
どうせ、うまくできないよ。
恥かくよ。
コーアクティブ・コーチング®︎では、これらの内なる批評家の声を「サボタージュ(Saboteur)」として取り扱いますが、若宮さんを前にしては、どれもただグダグダと逃げているだけなような感覚になってきます。
もっと気軽に始めてみていい。
小さなことからでいい。
あなたができることはまだまだありますよ、それを社会も待っていますよ、と誘ってくれている感じがします。
アプリを作ってからの1年半で、自分がだいぶ成長したと感じるのです。82歳からでもまだまだ成長します、できます。(p.102)
何歳からでも人生は変わる可能性があるんです。だから、とにかく今を楽しく充実させることが一番大事なのだと思います。 (p.99-100)
人間誰しも、楽しいことは長続きします。まずは「あなたが学んでみたかったこと」「あなたにとって楽しいこと」から始めてごらんになってはいかがでしょうか。(p.4)
さらにいいニュースとしては、巻末で対談していらっしゃる茂木さんによれば、「 人間は、「今ここ」を楽しんでいると、結果、免疫系が刺激されて健康になるし、幸福感も高まる」(p.195)のだそうです。
長生きにも、この新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今にも、もってこいです。
hinadanアプリ:
若宮さんがhinadanを作るときに参考になさったという本:
若宮さんが読まれた本(本書で言及されているもの):
本の中に登場する、やりがいをあることをやっている人たち:
「夢ある農ing 有限会社コタニアグリ」160ヘクタールの広大な農場。
kotaniagri.comshichikugarden.com
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