ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

みどりの しっぽの ねずみ

先日、念願のこども本の森 中之島(大阪)を訪ねたときに、館内で読みました。

スイミーやフレデリックで著名なイラストレーターかつ絵本作家、レオ・レオニの絵本。

みどりのしっぽのねずみ―かめんにとりつかれたねずみのはなし」(レオ・レオニ(Leo Lionni)作、谷川俊太郎 訳)

 

みどりのしっぽのねずみ―かめんにとりつかれたねずみのはなし

 

ねずみが、とっても可愛い。本当に愛くるしい。

くりくりした目から伝わってくる豊かな表情に誘われて、本の中の世界に誘われます。

 

一方、内容は、正直、子ども向きかどうかわかりません。

ねずみの世界を描きながら、そこには、人と人の関係がどんな風に変わってしまうのか、そうなると何が起きるのか、それでいてそんな出来事も忘れてしまうことが描かれていると読めますし、

それは完全に忘れ去ってよいことなのか、という問いももらいます。

 

作者のレオ・レオニは、1910年オランダ・アムステルダム生まれ、ユダヤ家系。

ベルギーや米国での滞在を経た後に1924年頃からイタリアに移住。

成人後もイタリア活動していたものの、イタリアでファシスト政権が誕生したことなどを受けて1939年に亡命。

彼が人生で見てきたであろうものを想像すると、本書にはそこには何かつながるものを感じます。

 

というわけで、可愛いけれども、可愛いだけじゃない本。

「絵本っていいわね〜」「こども向けの本っていいわね〜」という普通の感想では終われない1冊。

好みが分かれるかも。

子どもを子ども扱いせず、読んだ子どもにとって、すぐにはわからないけど大人になった時に何かがつながる時が来るかもしれない本。

 

一部引用。ねずみたちがマルディ・グラ(仮面をつけて行われるカーニバル)の真似事をするところ。

それから みんな くらい しげみの なかに かくれ、かめんを つけた。

きのみきや、いわの うしろから、おそろしい  うなりごえや、さけびや、かなきりごえを あげて,こわがらせあい,するどいはと きばで,おどしあった。

すこしずつ,みんなは じぶんたちが かわいらしく,おとなしい ねずみである ことを,わすれはじめた。
マルディ・グラも,うたも おどりも,たのしくやることも わすれた。みんな じぶんたちが、ほんとうに おそろしい けだものだと,おもいこんだ。

(中略)

それからの まいにち、かつて へいわ だった のねずみたちの むらには、にくしみと うたがいが、うずまいた。

 

仮面が当たり前になってしまった世界に、仮面なしのねずみが現れる。

「なにを こわがってるんだい? ほんとの ねずみが どんな すがたか,わすれたのかい?」その ねずみは いった。
「でも きみは せかいいち おおきい ねずみだ! ばけものだ。」いきを きらしながら だれかがいった。
おいかけて きた ねずみは わらった。
「なに いってるのさ、その ばかげた かめんを とれば,みんな ぼくと おなじじゃないか。」
おずおずと みんなは かめんを とった,ひとつ また ひとつ,そして さとった。
そのとおりだと。また もとの じぶんに 一 つまり,ほんとの ねずみに もどって,おたがいに こわがったりせず、たのしく いきて ゆきたいと おもうのは、いい きもちだった。

 

他の作品も読みたくなるし、レオ=レオニのグッズを集めたくもなります。

 

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