タイトルが魅力的すぎる本。
こんなフレーズから始まります。
私は「脳はバカ、腸はかしこい」と心から思っています。そして、腸を可愛がれば頭がよくなると確信しています。(p.1)
「脳はバカ、腸はかしこい: 腸を鍛えたら、脳がよくなった」(藤田紘一郎 著、三五館、2012年初版)
1つ前に紹介した本と合わせて、パーソナルトレーナーさんに貸していただきました。
タイトルは、本当にその通りだと思います。
腸の思考力は、脳より上
私たちはつい「脳がすべてを司っている」「脳は賢い」と考えてしまいますけれども、実際には脳はけっこう余計なこともしてくれています。
例えば、今、身体はぐったり疲れて休みたいと言っているのに、脳は「もっとやらなきゃダメだ」「ここでやめたら大変なことになる」と、様々な恐怖を煽って限界以上に私たちを働かせたりします。
もうこんなに身体は十分に酔っ払っているのに、脳は「せっかくこんな美味しいお酒が目の前にあるのだから」とか、「週末なのに飲まないなんて」とか、「周りに合わせて飲んでおいた方がいい」とか、色々言ってきて、必要以上に私たちを飲ませたりします。
断酒を決めている時ですら、「ちょっとだけなら大丈夫」と、脳は意志薄弱だったりもします。「アルコール度数低めなら大丈夫ですよ」という言葉にも騙されたりもします。
脳は”賢そう”だから余計タチが悪いとも言えます。実際には、とても主観的で、すぐに思い込みをして、決めつけ、知らぬ間に私たちを暴走させたりもしています。
その点、腸は素直。
身体に入ってきて危険なものや迷惑なものは、すぐに身体の外に出そうとします。
それは要は嘔吐や下痢ってことで、しんどいですけれども、それは身体を守るため。
そして、それは断固たるもので、「具合が悪いけど病院に行くのは嫌だからまあしばらく様子を見ようかな」などということはなく、すぐに対処します。
本当は、身体の言うことをちゃんと耳を澄まして聴いてあげて、そのようにしてあげれば、身体は自然に自分で調子を整えていくんだな、と、最近ますます感じているところです。
本書によれば、腸は、「脳からの指令なしに独自の命令を出せる唯一の臓器」だそうです(p.81)
「腸は第二の脳」といわれていますが、私はそうとは思いません。腸の思考力は脳より上だと思っているからです。(p.71)
私たちが見習うべきは、もしかしたらミミズなのかもしれないです。
ミミズははその日その日を精一杯生きており、不安がないように思います。脳がないので、どうでもいいことをいちいち不安がることもないのです。このミミズの全力の生き方が「明」であり、仮に環境が変わったとしてもその生き方を変えることはありません。
逆に、大きすぎる脳を持ってしまった人間は、他人の言動が気になったり、いい暮らしをしたいと悩んだりしやすく、「暗」になりやすい生き物です。
(空海の「過をなす者は暗く、福をなす者は明なり。明暗偕ならず。一は強く、一は弱し」について, p.57)
ちなみに、コーチングを提供していても、だいたいその方の身体やメンタルの調子がおかしい時は、身体の声を無視して頭の中で喋る誰かの声を優先している時が多いです。
なので、自分自身の身体の声をしっかり聴いていくお手伝いをしています。
その身体を司るところに、腸、および、腸に棲みついている腸内細菌が大きく影響しているという本書の内容は、私には知らないことだらけで、いろいろ目から鱗でした。
そのほかにも、生物は腸から始まったとか、腸の中は原始社会のままだとか、
3歳までにすべきは英才教育ではなく、自然の中で泥んこになって遊んで免疫をつけることだとか。それこそが三つ子の魂百まで、だとか、
いろんなことを新しく知りました。
ただ、本書の中身は、若干、話が飛んでいたりして、ついていくのもちょっと大変な時があるかもしれません。また性の話も多いので、そういうのがあまりお好きではない方や、整理されたものを読みたい方は、後に出版された「腸内細菌と共に生きる 免疫力を高める腸の中の居候」の方が、よくまとまっていて読みやすいだろうと思います。
教授が一番言いたかったこと
刺激的なタイトルの本書を書くに至った経緯が、その後続の本の中に書いてありました。
この部分こそがきっと藤田教授が声を大にして言いたかったことなのではないだろうか?と思いましたので、メモしておきました。
私は『脳はバカ、腸はかしこい: 腸を鍛えたら、脳がよくなった』という本の中で、人間の脳の神経細胞の増加率が最も多い生後3年間で、脳の発達に重要な働きかけをしているのが腸内細菌であるということを述べています。(「腸内細菌と共に生きる 免疫力を高める腸の中の居候」p.186)
私が腸内細菌に注目するようになった当初、この分野の研究は日本ではあまりなされていませんでした。理化学研究所の主任をしていた光岡知足先生が、第一人者として活躍しておられましたが、後に続く人がほとんどいないような状況でした。
腸内細菌の研究と言っても、結局、ウンチを延々と調べるわけですから、汚いし臭いし、みんな嫌がってやろうとしないのです。そんな研究を誰もやろうとしなかったことを黙々と続けられたことで、光岡先生は世界的な業績を上げていったわけですが、マイナーであったことに変わりはありません。特に医学部の出身者は、ウンチを研究するのを嫌がる人が多くて、私も弟子を育てるのに本当に苦労しました。
特に困るのは、結婚してからの急な心変わりでした。「せっかく医者と結婚したのに、ウンチなんかを研究すると子どもに悪影響を与える!」なんて奥さんが言い出したりして、多くの研究者がばたばたとこの研究をやめてしまいました。
脳を研究している人は、医学部で「権威ある研究者だ」という顔をして歩いていますし、実際に研究者もいっぱいいます。世間も脳科学者は偉くて賢いと思っているのに、その大元にある腸はほとんど顧みられていません。生物の歴史をたどっていけば、まず腸から始まっ現実が見えてくるのに、「きたない、くさい、きつい」の3Kのレッテルを貼られるばかりです。その反応が後に『脳はバカ、腸はかしこい』という本を書く原動力になりました。
(中略)
「世の中の考え方が変わってきたな」とようやく感じられるようになったのは、3年くらい前からでしょう。「ドーパミン、セロトニンは脳ではなく腸で合成されている」ことが研究発表されたことが大きかったと思います。
この発表をふまえ、『腸内革命』という本に書いたところ、一般の読者の反響が届く前に、健康食品やサプリメントを開発している会社が次々と私のところにやって来るようになりました。名だたる食品メーカーがこぞって相談に来て、いまさらのように「すごい、すごい」と言うのです。
逆に言えば、腸内環境と健康の関係を謳っていながら、いままでは腸内細菌なんて大した働いをしていないと思っていたのかもしれません。でも、菌たちが心の健康まで握っていると書いたら、急に関心が高まって、腸の本を出すたびに売れるようにもなったのです。(「腸内細菌と共に生きる 免疫力を高める腸の中の居候」p.105-106)
その価値や意味が十分に理解されずに、時には怒りや憤りやフラストレーションを抱えながら頑張っている研究者や学者の方々が、きっと世界中に沢山いるだろうなぁと思います。
ある種私たちのコーチングもそういうところがあるかもしれません。
本当に意味のあるものならば、きっと時代は追いついてくる。
一方で、私たち読み手もそれを待つだけではなく、メディアが喜んで取り上げるものとか、目立つものばかりを追いかけるのではなく、本当に熱量のある意味ある情報を自分で判断していくことも大事だな、と思いました。
それこそ、自分の腸に聞きながら。
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