ミーハーが過ぎるでしょうか。
電撃結婚発表のニュースを見て、つい、そのままアマゾンで名前を検索したら本書が出てきたので、思わず買ってしまいました。
「恋する理由 私の好きなパリジェンヌの生き方」(滝川クリステル氏 著、2011年4月初版、講談社)
フランスの女性の生き方を、インタビューを交えつつ紹介するとともに、そういうフランス女性の生き方から刺激を受けているクリステルさんの価値観や考え方、自分の理想とする女性像や家庭像などを綴ったエッセイ本です。
巻頭と中程は、写真集のようになっています。
美しくて、可愛らしい。可愛らしくて、美しい。惚れ惚れ。
ちょっとマットな質感の紙が写真のイメージとよく合うなーという感じでした。
初版はクリステルさん、33歳のとき。ちょうど、仕事、結婚、出産などを一番考える世代。プレッシャーを感じたりもする頃。「迷える同世代の日本女性たちが、少しでも、今よりももっと豊かな気持ちになれますように。そして確かな自分を持って、人生を謳歌できますように。」(p.13)という願いの根底には、自分自身こそ古い観念や常識に縛られず自由に生きたいという強い意思と芯の強さが感じられます。
書かれているフランスやフランス女性についてのことは、恋愛大国フランスとして既知のことも多かったですけれども、半分フランスの血が入っている彼女だからこそ言えることがあるとも感じました(お父さんがフランス人、お母さんが日本人)。
今回の小泉進次郎さんとの結婚&妊娠を知ってから読むと、また違った興味深さもありました。
ゴシップを気にせず私生活も楽しむ公人としてカーラ・ブルーニさん(イタリア出身のファッションモデル、サルコジ元大統領の夫人)を挙げていたり(p.59-60)、8人のインタビュー対象の中に政治家の女性がいたり、カフェで政治を語る(p.102)、という項があったり。こういう方向への関心があっての今回のご縁なんだろうなぁという感じがしてきます。
私自身、特に支持政党はないですけれども、進次郎さん個人は政界の色々な古いものにとらわれず、新しい考え方と価値観で行動しようとしている人だという印象を受けているので、個人的には、このお二人の結婚はとてもお似合いのように思っています。
考え方だけではなく、目に見えることとしても、男性が年下、30代後半と40代前半での結婚、できちゃった婚、高齢出産、女性も仕事で自立しているなど、日本の時代や価値観の変化を象徴するような結婚で、このお二人は今後の日本の夫婦像・家族像を変えていくんではないかなと思ったりもして楽しみです。(英国のハリー王子とメーガン妃のご結婚のときなども同じようなことを思いました。)
どんな夫婦像・家庭像になっていくのか、本書から窺い知れるのはこんなところ。
- フランス人にとって、誰かを「愛している」ことは、すなわち健康の証という意識があるようです。大人になったら、恋愛をしているのが当たり前、その方が健やかだと思われているようです。私自身も、この考え方に大賛成です。パートナーと一緒に過ごすのは、すなわち互いを思いやり、互いを理解すること。人の心を育てるのに、必要不可欠な要素だと思うのです。一方、恋愛をし続ける限り、女性は一生「女」でい続けられる。それが結果的に、人間としての健やかさにつながるというのもその理由でしょう。(p.57)
- 日本の家庭は、夫は大黒柱的な存在であり外で働き、女性は家庭を守ることが一般的とされてきましたが、フランスの男性が女性を守るということは、女性の生き方を尊重することであり、女性が自由でいることは、お互い気持ちよく生きることにつながるからなのです。(p.93)
- 仕事を持っているからと言って、恋人や家族、友人と過ごしたりするプライベートな時間を犠牲にしたりしない。プライベートな時間がまず大前提として存在する(p.56)
- 思えば父は、母に会いたいがために、家に早く帰って来たかったのでしょう。こんな両親のもとで育った私は、愛し合う男女関係はなんと素敵なのだろう、と思い、両親のような関係に憧れていました。(p.42)
- 一日の終わりに、ワインを飲みながら、さりげなくギターを弾いて、気ままに歌う。そして、時間がゆったりと流れていく。いつかパートナーや家族を持っても、そんな生活が自然とできる自分を夢見ています。(p.91)
この本を通じて繰り返し出てくるフレーズとキーワードは「人生は自分でオーガナイズする」と「エレガンス」の2つです。
愛される女性はエレガントな女性であり、恋するためにも自分の人生は自分でオーガナイズしないと、 というメッセージと思います。
エレガンス
クリステルさんが「エレガンス」をとても大切にしていることは本全体を通じて伝わってきます。
なるほど、やはり人は自分が望んだようになる、と思いました。
彼女自身がエレガンスを定義したところは見つけられなかったですが、彼女が憧れる女性像にそれが感じられます。
「己を知っている」こと。つまり、自分の優れている部分にきちんと気づき、認めていること。(p.173)
清潔感があってナチュラル。それでいて、圧倒的な存在感。ファッションも抜け感があって、風邪がふっと通り抜けるように垢抜けている雰囲気が漂う人。(p.177)
また、8人のパリの女性たち全員に「エレガンス」についてインタビューしています。英語直訳すれば、優雅、上品、簡潔さなどですけれども、何がそれをつくるかということをそれぞれに表現されています。
権利を主張することは大切だけれど、「男性化」してはいけません。女性は、女性に生まれてきたことを、もっと楽しんでください。(中略)そして同時に、年齢を重ねても、ずっと「女」であり続ける努力も必要です。それはきっと、生きることが楽しくなる秘訣でもあるからです。(p.78、クリスティーヌ・ルイ=ヴァダさん、産婦人科医)
エレガンスとは、その人のパーソナリティに合ったスタイルと邂逅。つまり、その人のTPOに合っているかどうかということだと思います。たとえば、仕事中なのにセクシーすぎるのはエレガントじゃない。その人自身が何かを語りかけるような存在感を放ち、「なんだか、素敵」と他人に関心を持たれることがエレガンス。そのためには、精神的にも自立していないと・・・。自立していない女性に自由はない、自由のない女性は神秘的ではない、神秘的でない女性には惹きつけられないと思いますから。(p.114、ナタリー・コシュースコ=モリゼさん、政治家)
エレガントとはけっして素敵な洋服を着ればかなうと言うものではありません。エレガントであるには、まず、自分自身の今に納得していないと。街を歩くにしても、前かがみでダラダラ歩いていてはエレガントではないわ。背筋をぴんと伸ばしていないとね。(中略)そして、心の底から気に入る仕事をしていること。自分自身がその仕事にしっくりきていないといけないわ。そして、自分を大切にしてくれるご主人がいたら、さらにエレガントになれるでしょうね。いつも自分のことを気にしてくれる男性がいれば、キレイでいるために気を使うようになり、エレガントになれますよ。(p.116-117、ナタリー・レテさん、絵本作家)
エレガンスとは、何か触れることができないもの、とでも言えばいいかしら。本物のエレガンスは、到達するのがとても難しい、なかなか手の届かないものだと思うんです。最終的には、自分に自信を持って心から自由になること。その人を作る「根本」になるものだと思います。(p.161、ヴァネッサ・ブリューノさん、ファッションデザイナー)
常に自分が好きなものに忠実であることが大切。フェミニンで、肩の力が抜けたパリ特有のシックさがあって・・・そしてどこか私的であってほしいと思う。それがエレガンスだと思います。(p.164、同)
エレガンスはお金とはまったく関係がないと思います。(中略)エレガンスはただ服装だけで語れるものではありません。話し方や姿勢はもちろん、美しい髪や肌といった自分への気遣いができているかどうかも、エレガンスを決める重要な要素。つまり、さまざまな事柄が美しくミックスされた状態だと思いますね。(p.221、ソフィ・ドゥラ・フォンテーヌさん、ロンシャン アーティスティック・ディレクター)
人生は自分でオーガナイズする
こちらも繰り返し登場するメッセージです。
取材した8人のフランス女性たちは、職業も年齢もさまざまですが、みんな口を揃えて「人生はオーガナイズするもの」と言い、私の心にリアルに響きました。自分たちの人生は、「自分がこうありたい」と思うことにより、自由に彩ることができるということです。(p.208)
やりたいことは沢山ある。そのために恋愛することや家族を持つこと、パートナーや家族と過ごすことを犠牲にしないし、その逆もしない。
時間は限られている。それはオーガナイズすれば良いだけのこと。
「オーガナイズとは、自分の時間や人生を自由に「設計」すること」(p.104)。
人生には沢山の選択肢があり、自分で選び取っていくことができる。
今の日本では、もしかしたら、まだこのように考えて行動することには罪悪感を感じる人も少なくないかもしれない、と思います。
それでも、最近、女性の自由や男女の関係性について、日本は急速に変わってきているなという感覚があります。以前ヨーロッパで見たような世界が、今の日本の若い世代で普通に起き始めている、という感覚です。
1968年生まれのソフィ・ドゥラフォンテーヌさんのインタビューを読んで腹落ちしたような気がします。
私たち、最近の若い世代はとてもラッキーだと思います。なぜなら、1970年代に選挙権や婚姻にまつわる自由の実現など、女性の解放が多く実現し、真に自立できた母親を持っているからです。(p.216)
ああ、フランスも「オーガナイズするのが当たり前」の今に至るまでに、同じような道を辿っているんだ、日本では多分フランスに20〜30年くらい遅れて、同じような変化が来ているだけのことなのだ、と。
女性の参政権獲得はフランスも日本と同じ1945年であるようなのですが、日本では、男女雇用機会均等法は1985年制定、1997年改正でセクハラ防止義務、2007年改正で男女双方への差別禁止。婚姻にまつわる女性の自由などは、フランスでは、1999年にはPACSが制度化しているのに対して、日本では選択的夫婦別姓すら東京地裁で棄却される状況。
とはいえ、フランス革命が18世紀後半、幕末〜明治維新が19世紀後半であることを思えば、ものすごい変革の追い上げっぷりとも思います。後発組の変革は最初に切り開いた国よりも速いスピードで起こる、というのは、先日読んだファクトフルネス(FACTFULNESS)などで感じたこととも同じです。
この先、誰でも自分の人生をオーガナイズするのが当たり前、という段になっていくには、まず本人が自分でそう思うことに加えて、周囲にもこの考え方が浸透していくことが必要と思います。
例えば、対談相手の一人として登場するイザベル・ビオ=ジョンソンさんは、戦地での医療を仕事としていて、妊娠がわかったのは戦時下のリベリア。仕事にかける情熱を理解したご主人のサポートを得て、任務を続けることを選択し、出産後も長期出張で小さい子供を残して戦地に出向いています。
本人にオーガナイズするマインドと行動力を求めるだけではなく、妻のために仕事を変えるという判断をする夫のマインド、更に、その夫を「変わった人」とか「特別な人」とか「可哀想な人」などと見ない社会があることが、 女性に罪悪感を背負わせずに応援する力になると思います。
そういう社会だと男性も今よりも自由になるだろうと思います。(最近、女性よりも男性の方が不自由さを感じているような気がしたりするのですが、この話はまた今度。)
母・娘の関係
母親となっていく人が、自由で罪悪感のない人生を生きることは、子供のためにもなります。そういう生き方を、子供が無意識レベルで「当たり前」「好ましいもの」と思えるようになるだろうと思います。そして、それは新しい社会のマインドにもなっていきます。
母は、ある意味、精神的に自由だったのでしょう。大人になった今、改めて考えてみると、まさに、フランス女性の自由さと日本女性の奥ゆかしさがバランスよく同居している女性だったのかもしれません。
「私は自分の幸せをちゃんと見つけたの。あなたたちも、ちゃんと見つけなさい。」
母や今も私たち姉弟にそう言います。
そして、
「自分が自由に生きられる人、そして自分も自由を与えられるような、自分の生き方とともに歩める人を見つけなさい」とも・・・。(p.44)
母は幼いころからつねに「個性を大事にしなさい」と言って私を育てました。服装から生き方まで、まわりに倣うのではなく、自分はどうしたいかをつねに問われていたような気がします。
そういう母も個性的で自分に正直に生きていました。それがとても幸せそうに見えたので、私も個性を大事にする生き方を素直に受け入れていたのだと思います。(p.97)
美容について
「恋愛」に関連するところで、一番面白いと思ったのが、美容についての考え方の日仏の違いです。
私が日本女性とフランス女性の美容の価値観を比較して、大きな違いを感じるのは、「見られてどうか」と「触れられてどうか」ということ。だから、美しさの理想形が異なるように思えてなりません。
たとえば、日本女性は今まつげをいかに長く見せるかに夢中になっているように見えます。(中略)
これは、言葉にするなら「見られるための美容」ではないでしょうか。
一方、(中略)美意識の高い特別な女性たちも、ほぼノーメイクで過ごすことが多いのがフランス女性。それでも、決してボディクリームだけは欠かしません。
これは男性に触れられた時に、しっとりとしている肌の方がいいはずだし、いい香りがする方がいいに決まっていると思っているから。(中略)
つまり「触れられるための美容」。だから彼女たちが何より大切にするのは、「つややかさ」。
しかも不特定多数の男性に見られること、つまり「モテる」ことが目的というより、特定の愛する男性に触れられること、つまり「愛されること」が目的。とてもシンプルなのです。(p.168-169)
妙に納得!
内容とは関係ないですが、びっくりしたのが、中古本の値動き。
最初に検索した時はアマゾンマーケットプレイスで1円が何冊もあったのに、少し経ってからアクセスしたら、どんどん値上がりしていました(今はまた落ち着いた模様)。数百円のうちに買えたので問題なかったですが、最初に見た瞬間にポチッとしておけばよかったです。
話題と需給の関係を身近なところで感じました。
将来、総理夫人になるかもしれない方ですしね。。。
記事の投稿が遅れてしまいましたが、ご結婚おめでとうございます🎉 お幸せに!

The Japan Times for WOMEN Vol.4
- 作者: ジャパンタイムズ
- 出版社/メーカー: ジャパンタイムズ
- 発売日: 2014/01/31
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この本に出てくる本:

お金がなくても平気なフランス人 お金があっても不安な日本人 (講談社文庫)
- 作者: 吉村葉子
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