横浜の友人の家に行く機会に、「没後20年特別展 星野道夫の旅 ーアラスカの自然と動物、そこで暮らす人々をこよなく愛した写真館の、仕事と心の回顧展ー」@横浜高島屋に行ってきました。
この方の写真は、何度見てもいい。同じ写真であっても見飽きない。いつも心が洗われる。
添えられている星野さんご自身の言葉と共に見れば更に味わい深くて、大きなもの、時空を越える緩やかな時の流れに、私たちを繋いでくれる。
ショップで、本が放っている雰囲気に魅かれてこちらの本を買ってきました。「未来への地図―新しい一歩を踏み出すあなたに」(星野道夫 著、Robert A. Mintzer訳(日本語が英訳されています))
Amazonの写真だと出てこないので残念なのですが、カリブーの群れの足元のところまで、オーロラの写真の帯があって、柳田邦男さんの一言「遥かな夢を目指してひたむきに生きるー。星野さんが、あの大きな人生を切り拓くことができた秘密は、彼が語った世界に表現されている」という言葉が寄せられています。
内容は、1987年3月に星野さんが東京都大田区田園調布中学校で行った「卒業する君に」というタイトルの卒業記念講演です。
どうしてアラスカに興味を持ったのか、何の当てもない国にどうやって行って生活したのか、何を見て何を感じたのかといったことを語ってくれています。
とても短い本ですが、ワクワクすることに導かれることがどんな遠くまで人を運んでくれるのか、その真実を教えてくれる物語です。
彼が伝えたかったメッセージ、それは「あとがき」の奥様の言葉に表されています。
夫には若い人へ伝えたい二つのメッセージがありました。一つは、なるべく早い時期に、人間の一生がいかに短いものかを感じとってほしいということ。もう一つは、好きなことに出会ったら、それを大切にしていってほしいということです。(中略)
この本が、これから新しい一歩を踏み出そうとしている人の心に届き、そっとその背中を温かく押してあげられるような、そんなきっかけの一つになれば幸いに思います。
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での祝辞にも通ずるものがあります。ただ、星野さんのメッセージはもっと素朴で暖かいもののように感じました。
本の中には星野さんのマスターピースともいえる作品がいくつか入っていて、それもあわせて、感動したり、ワクワクしたり、思わず笑顔がこぼれたり。身近に中学3年生がいたら、是非プレゼントしてあげたい本です。
星野さんの写真を見ていると、どうしてこんな場面に出会えるんだろう、どうしてこんなシーンに立ち会えるんだろう、どうして動物がカメラの前でこんな表情を見せるんだろうと、不思議でなりません。
手記を読めば、もちろんものすごい長い間アラスカの大自然の中で一人で過ごし、カリブーの群れにも全く出会えないというときも沢山あるということはわかるのですが、それにしても残された写真は、本当に奇跡的です。
彼が動物の居所を知るのが上手だったのかもしれませんし、彼が空けたスペースに動物たちが招かれたのかもしれません。その両方なのではないかなと、勝手に想像します。
43歳という本当に短い生涯。でも彼が残してくれた写真や言葉は、いつもわたしたちははっとさせてくれます。きっとこの先もずっと。柳田さんによる本書の解説のタイトル「心を耕してくれる永遠の人」という表現がとてもしっくりきました。
回顧展の最後に壁に書かれていた星野さんご自身の言葉で、この記事を閉じたいと思います。
短い一生で心魅かれることに多くは出会わない。もし見つけたら大切に・・・。
星野さんが残された美しい写真、言葉、心が、この先もずっと受け継がれていきますように。

- 作者: 星野道夫,Robert A. Mintzer,ロバート・A.ミンツァー
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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なお、この本は、とても短いです。もっと星野さんの講演録を読みたい方は、「魔法のことば (文春文庫)」に、この講演録も含めて入っています(写真はどんなものが入っているのかは未確認)。
講演録以外にも、旅の途中でご自身でアラスカの自然や人の暮らしなどについてとても深くて味わい深い文章をたくさん書かれていますので、是非それにも触れてみられてください。