もらった本ですが、読んでみたらなかなか面白かったです。さーっと読めます。「これからのお金持ちの教科書」(加谷珪一氏著)
この通りにすればお金持ちになれる、という手引書ではなく、これからの社会はどうなっていくか、これから稼げる人材はどんな人か、ということが主に書かれています。AirbnbやUberなどの新しいビジネスの出現(「新しい」といっても世界的にはもう暫く前からありますが)や、FRILやminneで気軽に古着やハンドメイド品が売買されていること、周りにフリーランスで事業を始める人が増えていることなど、なんとなく肌で感じている社会やビジネスの変化を改めてまとまった言葉で認識した感じがします。
更に、その先の未来の可能性についても述べられていて、それは、技術革新に十分についていっていない私には、すぐには信じられないようなものもありました。
- 人工知能が発達して、銀行員や弁護士、感性がウリ(例:企画やデザイン)の仕事すら人工知能にとって代わられる。
- モノを注文すれば設計図が送られてきて、3Dプリンタでプリントして入手できる。
- いずれは自動車を運転する必要がなくなって、目的地に着くまでの間ずっとネットをしていられる環境になる。
- 自動車を保有する必要もなくなって、必要なときに呼び寄せれば、近くにいる自動車が自分のいるところまで勝手にやってくる。
- 電気自動車が主流になるのでエンジン技術はいらなくなる
この本の帯には「2025年までにお金持ちになりたい人は必ずお読みください。」と書いてあるので、あと10年足らずでこういう世界が現実味を帯びているということでしょうか。
これだけ聞くと、じゃあ今の自分の仕事はどうなってしまうのか、とか、高いエンジン技術を誇るものづくり国ニッポンの優位性はこれからどうしていくのか、とちょっと心配になります。特に人工知能の話は、今人間がやっているかなりの部分にとって代わりそうな気配です。
既に、予備校の授業は録画、ホテルの受付もロボットが対応、好みに合う音楽や商品ネットが選んでくれ、囲碁や将棋もロボットが勝つ時代。人間とライブに向き合うことの価値や面白味を見いだせないものであれば、人間はより効率的で便利で確実な方に流れていってしまうのだと思います。
ただ、私の思い込みではないと信じたいですが、人間は「つながり」を求める動物だと思います。ロボット相手の世界だけでは味気なくなり、日々の小さな幸せを感じる機会が減ると思います。なので、そういう世界になっていくほど、わざわざその場を体験しに行くことに面白みや意味があるものについては、その価値は高まってくるのではないかと思います。
私自身、不動産屋さんでこの体験をしました。ネット検索していても膨大なデータ量に圧倒されて疲れ果て、頭は混乱してくるだけ。とある不動産屋さんに行ってみたものの、結局同じ情報をネットから拾い出してくれるだけで、そこでの不動産屋さんの付加価値は実物の部屋に連れて行ってくれることだけでした。一方、そのあと行った不動産屋さんは、いろいろな情報がいっぱいの私の頭と心をきちんと整理してくれて、自分でも気づかなかった私の譲れないポイントを見事見つけ出し、ぴったりの部屋を提案してくれました。この方は、私が何を大事にしているのかという価値観を聴く力と、それに見合った部屋を提供できるだけの豊富で確かな情報を持ち合わせていて、それがネット検索にはない価値を提供してくれたのだと思います。
そんなことを考えていたところ、先日コンサルタントの友人から「ハイタッチ」なる言葉を教えてもらいました。
「High Touch (plural high touches)」
1.Dealing with or interacting with a human being as opposed to transacting with computers or through high tech.
2.Human interaction.
3.Having a high awareness of human complexity, having empathy.
(high touch - Wiktionary)
これからはコンサルタントもハイタッチでないと生き残れないのだそうです。技術が進歩すれば人間は楽になるのかと思いきや、また新しい段階へと成長が求められそうです。
最近、教育現場で話題のアクションラーニングもハイタッチな一例と思います。
さて、この本書の主題を外れて、自分で感じたことをつらつら書いてしまいましたが、この本の主題は、これからは「新しい資本の時代」が到来しつつあるのであって、そこでは、先立つ資本がなくても事業を始められる、コネがなくてもビジネスを拡大できる、変化に気づくならば誰にでもチャンスが訪れる、というメッセージです。誰にでも特技の一つや二つはある。仕事はどんどんパーソナルになる。自分の能力を生かして生きていける。これからの時代の「稼げる人」は今の企業社会で求められるのとは正反対の人材。ある意味、今までよりもタフな世界なのかもしれません。変化を望まない人にとっては怖い世界、変化に順応していく人には可能性にあふれる世界として、本書が描く未来を感じるのではないかと思います。
この本では主に日本国内をイメージしながら読みましたが、ネット社会の現代では世界とも容易につながれます。先日、友人(日本在住の日本人)が自分で立ち上げた会社のロゴのコンペをネットでやったようで、最終的にインドネシア人の方がデザインしたロゴに決めていました。デザインだけではなく、そこに込められた意図のメッセージも素敵でした。インドネシア人の個人デザイナーと日本人の個人事業主が、想いのレベルでつながってそこにビジネスが成立している。少し前の時代では考えられなかったこと。
リソースも活動の場も世界中にあふれていそうです。どうつながるか、どう使うかは私たち次第。いろいろな可能性がありそうです。
この本を読んでいるときの質感は、「ワークシフト」を読んだときのものに少し似ていました。自分の思考パターンを超えた世界に触れて、目が見開く感じです

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
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