今月の新刊。
「beの肩書き[完全版]――本来の自分とほしい未来をつなげる「人生の肩書き」のみつけかた、そだてかた」(兼松佳宏 著、英治出版、2025年12月初版)
肩書きを自分で見つけて、自分で育てる
働き方もキャリアも多様になり、「会社に勤めながら、夜や休日には友人の仕事を一部手伝っていて、そして趣味の世界での顔もある」なんていう人も、珍しくなくなってきました。
自己紹介するときに、勤務先の名刺を出すのも違和感がある、というシーンもあるのではないでしょうか。
その違和感は、職場の名刺が示しているのは、どの役割で、何をしているか、つまり「do」を表しているものだから。
それにとらわれるよりも、自分で、「私はこんな人です」という肩書きで名乗ってしまおう、というのが「beの肩書き」。
幅広い活動をなさっている著者で言えば、自分のことを「勉強家」あるいは「沙門」としていて、どのような活動をしていたとしても、その大元はこのbeの肩書きである、という具合です。
そもそも肩書が持つ役割とは、自分と他者とのコミュニケーションをより円滑にするために、自分のことについて端的に知ってもらうための糸口を提供することなのだと思います。(中略)
誰かとつながり、ともに何かをつくりだしていくには、やはりお互いのことを知るための手がかりが必要です。そして時代から取り残されつつある「肩書き」に、もう一度新たないのちを吹き込もうという試みこそが、この「beの肩書き」なのです。(p.23)
例えば、自己紹介で、「XX会社のZZです」と名乗るよりも、「ガラクタ収集家です」と言われたほうが、「えっ?」となって、もっと話を聞いてみたくなります。
名乗ることで、本来の自分が育つ
こうやって創作してみた肩書きで名乗ることは、他者とのコミュニケーションだけではなく、本来の自分と出会い直し、その自分を育てることにもなります。
アリストテレスのいう幸せのひとつ「ユーダイモニア」。
私たちが秘めている可能性を最大限に発揮しているときに感じられるものであり、「これが本当の私だ」と言う感覚を生み出す、とされています。(p.32、ユーダイモニアについて)
(一方の、快楽としての消費的な幸せは、「ヘドニア」)。
「そうだ、自分はこういう存在なんだ」と自分を改めて知り、受容することで、自分の欲求や願いをより素直に行動に移せるようになり、ユーダイモニアを感じられる時間も増えていくだろうと思います。
beの肩書きに現れる本来の姿で、社会に自分を役立てる
本書は大きくは2部構成になっていて、後半は、「ソーシャルデザイン」の話に大きく移っていきます。
ソーシャルデザイン
社会的な課題の解決と同時に、新たな価値を創出する
画期的な仕組みをつくること(p.124)
この後半の方が、著者がより書きたかったことではないかな、と感じました。
それはつまり、自分のbeの肩書きを見つけるだけで終えるのではなく、
自分本来の姿で、社会とつながり、社会に対する願いを持ち、そして、その願いを自ら実現していって欲しい、ということ。
ただ、その後半を存分にやってもらうためには、読者が「本来の自分」に目覚めていてもらう必要がある。
そのために、前半=beの肩書き、が必要になってくる。
そして、beの肩書きを見つけた読者に対して、その自分をもっと活かす方法が第2部に待っています。
「未来を人任せにするのではなく、自分たちの手でつくることが重要なのでは」と言うこと。言ってみれば、素敵な未来になるのを”待つ”側から、”つくる"側へのシフト。(p.261)
共に存在することで生かされる、自分のbe
本書で何回も登場する「本来の」という言葉は、著者が敬愛している空海や仏教の考え方に由来しています。
”ホンモノ/ウソ”、”真/偽”といった二項対立ではなく、それらを統合した、誰もが秘めている「もともとのありかた」を意味する言葉(p.160)
そして本来の自分が開けていけば、次第に、「俺が、私が」という世界から、「私たち」という世界につながり、周りがいるから自分がある、というインテグラルな世界に至る。
そのとき、自分自身も満たしながら、周りも満たしていくことが可能になる。
ベトナム出身の禅僧であり平和活動家のティク・ナット・ハン(Thich Nhat Hanh)に触れつつ、その世界観が紹介されています。
本来のbeとはティク・ナット・ハンのいう「inter-be」、つまり関係性やつながりの中でいかされている状態にある。この「inter-be」はdoへのアンチテーゼではない。そこには、”わたし”の新たな一面、秘められた可能性の種がたくさん含まれている。
「inter-be」を起点としたとき、初めてそこから新しいdoが立ち現れる。それは「誰かに強いられること」ではなく、かといって表層的な「やってみたいこと」でもなく、「他の人はやらないし、自分にしかできないだろうから、自ら引き受けてやりきろうとすること」や「やらせていただいている感覚があること」「導かれるようにたまたまやっていること」、つまり「inter-be」から生じる「inter-do」である。(p.350)
よくある質問「自分の好きなことをやっていたら、社会のためにはならないのではないですか」に対する答えがここにあります。
「"わたし”に根ざし、自分の願いも満たしながら、同時に”わたしたち”というより大きな感覚でいるときこそ、”本来の自分”が発揮されているのではないか」(p.268)
本来の自分に目覚めるということは、自分が実は大きな存在であると知ることでもあります。
あなた自身が縮こまっていても、誰のためにもならない。
自分を発露させて、願う世界を実現していって欲しい、それを一緒にやりましょう、という著者からの招待状のような本でした。
beの肩書きを見つけるためのワーク、また、それをソーシャルデザインにつなげていくためのワーク、がそれぞれ入っていますので、本書を手元に置きながら、一人で、あるいは仲間と共に取り組むことができるように作られています。
読むだけではなく、やることで、本当の価値が得られる本。
また、空海の研究もされており、そのことも織り交ぜられているため、仏教についても少し触れることができます。
勉強家と名乗られているだけあって、関連する思想や参考文献などにも触れながら話が進みますが、本書の根底を流れる著者の願いはシンプルで、これを思いながら読むと、きっと本書を貫いているものが感じられると思います。
この本を通じて見つかったbeの肩書きを土台に、”ほしい未来”を実現しようとするinter-doingの実践によって、あなたやあなたの大切な人たちの願いが満たされたり、痛みが癒やされたりしていくことを、心から願っています。(p.354)
おまけ
ちなみに、私は、今の名刺は、Coach / Podcaster / Book Guideと書いています。
以前に、こんな記事を書いていたのを見つけました。
「プライベート名刺のススメ」
コーチング、中でも"Co-Active®︎”という流派に出会えたのは幸運で、「コーチ」は、私の「doの肩書き」でもあり、「beの肩書き」でもあると感じています。
Co-Activeコーチングの中でも、「人生の目的(Life Purpose)」を文言にしたりします。
私の今のそれは、「生きる喜びに誘う春の鳥」。
ポッドキャストも、本屋も、この読書ブログも、このbeからやっていると感じます。
コーチングセッションをしている時はもう少しエネルギーが強くて、「本来の姿を呼び起こす愛の鳥」のように感じる時もあります。
このあたりは、著者の方と通ずるところがありそうです。
とはいえ、ちょっと他者には伝わりにくいので、こちらは肩書きというよりは、自分が自分とつながるための文言として持っています。
※本書は、英治出版の読者モニタープログラムにより無料で受け取りました。このサイトにレビューを書くよう求められてはおらず、上記はあくまでも個人としての見解です。
この記事は、こんな人が書いています。
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関連ウェブサイト:
本書に出てくる本:
![beの肩書き[完全版]――本来の自分とほしい未来をつなげる「人生の肩書き」のみつけかた、そだてかた beの肩書き[完全版]――本来の自分とほしい未来をつなげる「人生の肩書き」のみつけかた、そだてかた](https://m.media-amazon.com/images/I/51dMsdLPvAL._SL500_.jpg)


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