ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

歴史思考

めちゃめちゃ面白いです。

あっという間に読めて、しかも、生きるのがラクになる。

そして、これからの時代にとても必要なことを言ってくれている。

世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考」(深井龍之介 著、ダイヤモンド社、2022年3月初版)

「すべての人にぜひ読んでいただきたい本」のカテゴリに追加しました。

 

世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考

 


ポッドキャスト好きなら、きっと誰もが知っている超人気番組「COTEN RADIO(コテンラジオ)」のパーソナリティのお一人・深井さんの著書。

COTEN RADIOは、歴史を楽しく面白く密度濃く、しかもさまざまな角度で知ることができて、私も大好きな番組です。

2019年にはJAPAN PODCAST AWARD 2019で大賞とSpotifyをダブル受賞。

2021年の同AWARDでは、ベストナレッジ賞受賞。

深井さんたちのガイドで、まるで目の前にシーンが浮かぶかのようにストーリーに引き込まれていきます。

 

「歴史思考」とそれを身につける意味

コテンラジオは、深井さんが代表をされている株式会社COTENの一事業。

会社に込めている思いは、本書の中でもよく伝わってきます。

 

僕はこの本を、歴史を知ることで、あなたを苦しめている悩みを吹き飛ばすために書きました。(p.12)

 

悩みの原因は僕たちの社会にある常識や価値観なんです。(中略)

歴史を学ぶと、僕たちを取り巻いている常識や価値観が、決して当たり前ではないことに気づけます。(p.11)

(前略)価値観は絶対ではなく、場所や時代によって変わります。

「家がある」とか「飲み水がいつでも手に入る」といった僕らの生活環境が当たり前ではないように、「人殺しはダメ」とか「体が弱い人には親切にしよう」といった僕らの価値観も当たり前ではありません。
 歴史を知るというのは、こういうことです。
 決して退屈なお勉強ではなく、僕らの「当たり前」が、当たり前ではないことを理解するということなんです。
 僕はそれを、「メタ認知」と呼んでいます。
 「メタ」は超えるという意味なので、「メタ認知」は今の自分を取り巻く状況を一歩引いて客観的に見る、と言った意味です。
 悩んだり苦しんだりしている人は、近視眼的になっていることがほとんどです。
  メタ認知力があれば、目の前にある悩みにとらわれずに済むこともあるはずです。(中略)
 そして、歴史を知ることによるメタ認知のことを、この本では「歴史思考」と呼びます。
 歴史を知ること、そして「歴史思考」を身に付けることは、悩みから解放されることでもあるんです。(p.19-20)

 

人は、存在しているだけで価値がある

本書を通じて、私は、深井さんの「人や人類に対する愛」を感じました。

本書に登場するのは、イエス・キリスト、孔子、マハトマ・ガンディー、カーネル・サンダース、アン・サリヴァン、武則天、アリストテレス、ゴータマ・シッダールタ。

教科書には記載しないような、彼らの極めて人間的な部分も紹介されています。

そうすると、「歴史上のスゴイ人」から「私たちと同じ人間であり愛すべき人」というふうに身近にも感じられてきます。

 

偉人と言われる人にもそれには似つかわしくないようなストーリーがあり、

歴史上大きく取り上げられない人にもすべてそれぞれのストーリーがあり、

それらは全部交錯して、これまでの歴史がつくられてきた。

歴史にとってはある人が「存在すること」が決定的な意味を持つということです。行為、つまり「やったこと」よりも「いること」が大事なんです。(p.39)


この部分は、「Doing」と「Being」の両方を大切にするCTI*のコーアクティブ・コーチング®︎の世界観とも共通するものを感じて、すっと入ってきました。

何をするか、と、どうあるか。どっちも大事。

*CTI(Co-Active Training Institute)は私がファカルティメンバーを務めているコーチ及びリーダー養成機関です。

 

「いることが大事」の例として、ヘレン・ケラーの「奇跡の人はいったい誰なのか?」という箇所が素晴らしかったです(p.113-116)。

 

ヘレンの母ケイトは、チャールズ・ディケンズの「アメリカ紀行」で視覚と聴覚を失ったローラ・ブリッジマンの存在を知る。

ブリッジマンは、盲人教育の先駆けサミュエル・グリドリー・ハウ博士に教育を受け、読む書く話すができるようになった人。

ブリッジマンに希望の光を見たヘレンの母は、盲ろう者の教育者を探す中で、パーキンス盲学校を卒業したサリヴァンに出会う。

それを繋いだのは、グラハム・ベル。

グラハム・ベルがパーキンス盲学校を知っていたのは、彼がろうあ者の教育に力を注いでいたから。それは、ベルの母親が聴覚に障がいがあり、お母さんとコミュニケーションを取りたい一心でベルが(電話まで発明しちゃうまでに)「音」について勉強していたから。

家庭教師を引き受けるかどうか迷っていたサリヴァンに助言をしたのは、もうおばあさんになっていたブリッジマン。

「重い障がいを持っている子供でも、甘やかしてはいけません。本人のためになりませんから」(p.116)

このアドバイスで、あの厳しい教育が実現して、あの奇跡が起きた。

そのブリッジマンが外界とコミュニケーションが取れるようになったのは、彼女の家に雇われていたエイサー・テニーという知的障がいのある男性が、彼女に簡単な手話を教えたから。

テニーに手話を教えたのはネイティブアメリカン、とも言われているそうです。

 

ヘレンの奇跡が起きるまでに、どれだけの人の人生が交錯していたかを知ることができる素晴らしいストーリーでした。うるっときました。

 

 日本では「奇跡の人」と呼ばれるヘレンですが、実はこの言葉はヘレンを指したものではありません。

 ヘレンとサリヴァンを描いた戯曲『The Miracle Worker』が元になっているのですが、「ミラクル・ワーカー」すなわち「奇跡の人」とは、サリヴァンのことなんです。(中略)

 でも、よくよく考えると、実は「奇跡の人」は、サリヴァンだけでもないんです。

(中略。上記の人たち全員が影響しあったことの要約)

 テニーやテニーに手話を教えたネイティブアメリカンにも、偉業を成し遂げた自覚はなかったでしょう。彼らはただ生きていただけです。

 しかし、そういう人々の「存在」が複雑な連鎖反応を生み、ヘレン・ケラーという奇跡につながったんです。(p.131-134)

 あなただって、「奇跡の人」の一人かもしれません。あなたが何気なくサポートしたり、手助けした人が、巡り巡って奇跡を起こしているかもしれないわけですから。

 そうだとするなら、自分の価値を信じて生きた方が、毎日が楽しくなるのではないでしょうか。(p.134)

 

本人が意図しようがしまいが、私たちはお互いに関係しあって生きている。

存在しているだけで、誰かの人生にも関わり、もしかしたら影響を与えている。

 

私たちは誰も特別じゃないし、全員が特別でもある。

そんなメッセージも伝わってきます。

 

「価値観」の功罪

「価値観は変わるもの。変えてよいもの」。

この表現にすんなり頷ける人は、どれくらいいるでしょうか。

 

「信念も変えてもよいもの」

これはどうでしょうか。

 

人は、自分が信じる価値観や信念を体現して生きている時、確かに、とても満たされた気持ちになります。

これこそが自分自身だ、と考えていらっしゃる方も多いです。

 

一方で、たとえそれが大事にしている価値観や信念であっても、それに縛られ過ぎて身動きがとりづらくなるときがあります。

そういうとき、実は、身体や心や魂が欲する価値観や信念は変わっていたりもするのですが、頭が古いものを引っ張っていたりします。

 

コーチングを提供していて、変容が早いなぁと感じる人は、このことに気づくのが早い。

また、気づいたら古い価値観を手放して新しい価値観を試してみる勇気や軽さがある人たちです。

頑固な人は、古いものはなかなか手放さない。手放そうとしても時間がかかる。手放してからまた戻ってきてもいいのだけど、一瞬でも手放すことに怖さを感じていたりする。

そういう人にこそ、本書はおすすめしたい1冊です。

 

僕たちの価値観は、環境によって強く規定されています。ということは、環境が変われば価値観も変わるわけです。

それは、「絶対的な価値観が存在しない」ということでもあります。(p.165)

現代は価値観が多様で、しかもコロコロとすばやく変化します。
「多様性」という言葉をよく聞きますが、これは、いろいろな価値観が併存しているということです。(p.199)

現代を生きる僕たちは特定の価値観に依存しないほうが楽なのではないでしょうか。(p.200)

僕は何も、価値観をすべて捨ててニュートラルに生きようと言っているのではありません。人間なら特定の何かを信じたり、特定の何かに価値を感じることはあるでしょう。僕だってそうです。
 大切なのは、その価値観が唯一絶対だと思い込まず、ほかの価値観も認めておくこと。その方が、現代では生きるのが楽になるはずです。場合によっては複数の価値観を持ってもいいでしょう。(p.201)

 

ある価値観にとらわれているとき、古典を読むことが助けになる。

ほかにも、世間の価値観を絶対だと思い込んでしまうことで、そもそも悩む必要はないのに、「自分は悩んでいる」と信じ込んでいるパターンも多いんです。本心では悩んでいないのに、悩んでいると思い込んでいる、というややこしいケースです。(p.180-181)

悩みそのものが消えたり、そもそも悩んでなんかいなかったことに気づくことができる。これも古典のすごい効果です。(p.181)

 

「歴史から学べ」とはよく言われますけれども、大量の歴史から何をどう学べばいいかわからない人が世の中の大多数かもしれません。

歴史を読書家だけのものにせずに、素晴らしい知性と伝える力でもって、みんなのものとしてくれるCOTENさん、ありがたいし、これからも楽しみです!

もう1冊の著書(「視点という教養」)も購入済みなので、そちらも楽しみです。

 

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本書の主な参考文献(p.205)

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