ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

図解 いちばんやさしく丁寧に書いた インボイスと消費税

個人事業主が大変なことの一つは、提供する商品とかサービスだけやってればいいわけではなく、請求書発行から領収書発行、確定申告まで、全部自分でやらなくてはいけないこと。もしくは、それをやってくれる人を自分で見つけてこなくてはいけないこと。

もう一つ、会社員時代と違うなと思うのは、制度変更など、待っていても誰かが教えてくれる、というわけではないこと。会社員時代は、人事部の人が必要な書類を全部用意してくれて、どこに何を書けばいいかも全部教えてくれて、面倒な申請手続きなども全部やってくれていました。そのありがたさは、会社員時代は気づかない、もしくは当たり前に思うのですが、独立してみると、本当にありがたいことだったなと思います。独立してしまうと、源泉徴収だって、ちゃんと自分で還付手続きしないと返ってこない。

ということで、10月から始まるインボイス制度。発行事業者登録は済ませましたが、わかった気になってると危ないなと思って、一応読みました。

図解いちばんやさしく丁寧に書いた インボイスと消費税  税理士・吉田信康 監修、成美堂出版 2023年9月20日発行(←昨日9/9に買ったんですが!発行日よりも先に本屋に並ぶこともあるんでしょうか。)

 

図解いちばんやさしく丁寧に書いた インボイスと消費税

 

必要最低限のところはよくわかりわかりましたので、自分の備忘メモや私見などシェアします。

 

 

気をつけておくこと

自分のメモのシェア。詳しくは本書などでご自分でご確認ください。

また、「この制度の狙いや影響がよくわからない」という方は一つ下の項目に、「こういうことだと思う」というのを書いてありますので、先にそちらを読まれてもいいかもしれません。

 

<自分が仕事を受注するとき>

・請求書には、従来の請求書情報に加えて、①適格請求書発行事業者登録番号(=インボイス発行事業者登録番号、以下同じ)、②商品やサービスへの適用税率、③税率ごとの消費税額を明記する。
(自分の番号が、適格請求書発行事業者公表サイトに掲載されていることも確認しておくと良いだろうと思います。)

・発行した請求書は7年間保管。紙で発行したものは、紙で保存するか、データにしてデータ保存。メール添付やネット経由で発行した場合は、電子データによる保存が原則。電子データの保存は、電子帳簿保存法のルールに従う。請求書発行の翌年初日から2ヶ月を経過した日から起算(→個人事業主は一律12月末決算なので、翌年の3月1日から7年、と考えればいいのかなと思います)。

 

<自分が経費支出をするとき>

・相手からもらう請求書・領収書に適格請求書発行事業者登録番号があるか確認する(相手方が登録していないときは、自分が消費税額を払っても自分の方で仕入税額控除の対象にならないので注意)。適格請求書発行事業者公表サイトで、本当に登録があるかどうかを確認するのがより安全。

・経費支出時に受け取ったの請求書・領収書は、金額に関わらず、7年間保管。紙のものは、原本保存またはPDFやスクショでデータ保存。メール添付やネット経由の場合は電子データによる保存が原則。電子データの保存は、電子帳簿保存法のルールに従う。

・一取引3万円未満(税込)の公共交通機関の運賃、一取引3万円未満(税込)の自販機からの購入、郵便物投函時の切手、展示会・美術館などで回収される入場券などはインボイス発行免除で、インボイスがなくても仕入税額控除が受けられる。

・これまで3万円未満の課税仕入れや、やむを得ない理由で請求書を受け取れなかった場合は仕入れ税額控除の適用を受けられたが、インボイス制度導入により、このルールは廃止される。

・クレジットカード利用時に受け取る「売上票」や後日発行される「利用明細書」などは通常インボイスの要件(インボイス発行事業者の登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額)を満たしておらず、仕入れ税額控除が受けられない。記載事項を満たしたレシートなどと一緒に保存する。

・令和11年(2029年)9月までは、経過措置として、少額特例あり。課税売上高が1億円以下の小規模な事業者なら、1件あたり税込1万円未満の仕入れや経費はインボイスの保存が免除される。

 

違反のペナルティは、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがある。インボイスの登録が取り消されることもある。

 

この制度の狙い

会社員の方々には、なんで、この件で、世の中がいろいろ騒いでいるのか、きっとピンとこないと思います。

税務素人の一個人事業主としての理解を書いてみます。

これまで、売上1,000万円以下の事業者は免税事業者となっていて、販売時に消費税を請求していても、免税事業者は消費者から預かっている消費税を納税する必要がありませんでした。益税といって、その分が手元に残ります(合法です)。

町でおばあちゃんがやっているような八百屋さんとか駄菓子屋さんとか、消費税はなくていいよ、なんて言ってもらえたりすることがありますが、それは別に身銭を切ってオマケをしてくれているわけではなく、納税義務がないからです。

これだと、免税事業者はおトクもしくは消費者はハッピー、国としては消費税を取りっぱぐれる、ということがおきます。

インボイス制度は、そこをしっかり取ろうという制度変更だと、私としては理解しています。


「適格請求書発行者」として登録させることにより、免税事業者も自動的に課税事業者になります。適格っていうのは、要は、消費税を納めるということ。

ただこれを全員に強制してしまうと、きっといろんな反発が起きうる。

なので、ここは「任意」として、事業者自身が選ぶことができるようにしています。


じゃあ、免税のままでいればいいじゃん、で済むかというと、話はそれだけではない。

事業者は、消費者から預かっている消費税を納税するとき、自分が経費支出で支払った消費税分は差し引いて納税することができます。だって、その分は、経費を支払った相手方(その事業者にとっては売上+消費税受け取り)が納税するはずだから。

これまでは、その経費を支払った相手方が課税事業者として納税していようが、免税事業者として納税していなかろうが、そこは一律、納税している体で計算して、差分の消費税を納税していたわけですが、これからは、「適格請求書発行者」として登録させるのでそこが追跡できる。

なので、2023年10月からは、自分の消費税納税額を計算するときに、適格請求書発行者ではない事業者に支払った経費+消費税については、その分の消費税を差し引くことは認めない、ということになります。

となると、経費を支払う立場に立てば、相手方は適格請求書発行者である方がありがたく、そういう相手と取引したくなりますし、未登録者と取引を継続するにしても消費税分は支払わない、という方向になります。

というわけで、特に、企業と取引をする個人事業主なら、まず適格請求書を発行するだろう、という状況になります。

 

この外圧的な環境を作り出すために、役所と事業者には登録の事務手続きが増え、管理すべき情報や番号が増え、請求書を受け取った担当者には登録番号の確認作業が増える、そのために沢山の人員が割かれているということを思うと、何やってるんだろう・・・と思ってしまいます。

そんなに徴収したいなら、もう免税事業者っていう考え方をやめて一律取ればいいじゃん!取った上で一定の収入以下なら救済とかしたらいいじゃん!と思います。この制度が検討された時も税理士さんの多くが同じような考えだったようです。

 

脱線しますが、マイナンバーも任意と言いながらも結局全員にやってもらうためのポイントやらの仕組みを作って複雑にしているし、日本てこういうコストがとても多いなぁとため息が出ます。

 

クレジットカード決済や、PayPayなどの電子決済がちょうどようやくここまで普及してきたタイミングで、またその簡易なレシートでは情報が足りていないなど、一度楽になったお金周りがまた大変になる逆行感を感じてしまうのですが、上記の経過措置6年間の間に、事業に集中しやすい環境に整っていくことを願うばかりです。

 

「インボイス」って請求書かと思ったら領収書も含む感じで使われている

英語のInvoiceは「請求書」ですが、この制度での「インボイス」は英語と捉えない方が混乱しないだろうと思います。

お店で事業に必要なものを買い物した時のレシート(領収書)も、「簡易インボイス」として保管することが必要になってくるので。

このカタカナも、制度をわかりにくくしているのではないかな、と思いました。

 

この先も制度変更などはありそうですので、アンテナは立てておいた方が良さそうです。

 

この記事は、こんな人が書いています。 

coaching.cocomichi.club

 

お気に召す記事がありましたら、ぜひシェア頂ければ嬉しいです。また、もしこのブログを読んで、ここで紹介されている本を購入しようと思われた際は、このブログ内のamazonへのリンクを経由して購入頂けると幸いです。私にとって皆様が本に出会うことのお役に立ったことを知る機会となり、励みになります。 

 

 

www.nta.go.jp

www.invoice-kohyo.nta.go.jp