活字中毒の私は、ちょっとした空き時間も、何か読めるものを欲してしまいます。
そういう時にぴったりな類の本。
「ハマトンの知的生活のすすめ エッセンシャル版」(P.G.ハマトン 著、三輪裕範 編訳、2022年8月初版、ディスカバー・トゥエンティワン)
英国の著述家であり美術雑誌の編集者でもあったP・G・ハマトンが1873年に刊行した知的生活論、自己啓発論の世界的名著である『知的生活』から現代人に必要な部分を精選して編訳したもの、です。(編訳者・まえがきより)
1ページに1エッセンスという構成で、全部で172エッセンス。
まさに「エッセンシャル版」で、パラパラと読むのにちょうど良い感じ。
現代に必要なものだけをピックアップしてもらっている感じ。
ガッツリ読みたい方は、現代の翻訳本「知的生活」または「新版 ハマトンの知的生活」があるようです。翻訳本を読む時には、今と時代背景が異なるところもあるでしょうから、そこは自分なりに読み替えたりしていくのが良いのかもしれません。
<ガッツリ版>
知的生活。Intellectual Life。
これこそ、私がしたいものかもしれないです。
それを続けていくためには、健康が大事。お金も大事。時間の使い方も大事。
各章より、自分の備忘的に2、3ピックアップ。
一見すると相反することが書かれているように見えるものもあるのですが、自分なりに最適な形でそのバランスをとっていくことこそが”知的”なのではないかなと思います。
I「知的」とはどういうことか
#003 知的な人はどこにいても何かを学べる
知的な人にとっては、どこにいてもそこが最高の学校である。
自分のまわりに存在する人間、書物、動物、石、大地、すべてが教師になり得る。
#005 人を知的にするのは知識ではなく「徳」だ
人を知的にするのは知識や学問ではない。それは、物事を常に生き生きと、美しく考えることができるようになる徳なのである。
#006 知的に生きるとは、真理を求めてやまないこと
知的に生きるというのは、頭を使って何かを成し遂げることではない。それは、常に真理を求めてやまない精神の姿勢のことである。(後略)
II 健康こそが知的生活の基盤
#010 健康は蓄えておくことができない
秋に二週間ほど旅行して英気を養い、それで一年分の健康を蓄えようとする人がいるが、それは愚かなことだ。一週間の英気はその週のうちに補っておかなければならない。
#012 体が求める休息を受け入れよ
傑作は短期間に集中して創作したときに生まれることが多い。しかし、それはときに死をもたらす危険な習慣でもある。
自然な本能が休息と気晴らしを求めているときにはそれを静かに受け入れ、しばしのあいだ幸福な安らぎに身をゆだねたほうがいい。
知的活動にとって、休息することは非常に大切なことである。それは人生が素晴らしいものであるためには愛が必要であるのと同じである。
#017 運動が知的生活を支える
肉体的生活と知的生活は両立する。すぐれた文学者が体を動かして運動したことは、彼らが書く素材を豊かにし文体に力強さを与えた。また、科学者が体を動かしたことは、彼らに数多くの発見をもたらし、画家が体を動かして各地の美しい自然を見たことは、彼らの芸術の完成度をより高めることになった。
III 仕事に打ち込むことが人生を豊かにする
#034 好き嫌いを軽視してはいけない
われわれは好んで求めるものとそうでないものがあるが、そうした個人の好き嫌いを軽視してはいけない。というのも、そうした好き嫌いの気持ちが、われわれのもって生まれた能力を最もよく示しているからだ。
#038 知的冷静さを持つ
綿密な仕事をするた目には知的冷静さが必要である。画家の一筆一筆というのは、次の一筆をどのように描くかということを常に冷静に深く考えた上でのものなのである。
IV 知識があるだけでは知的とはいえない
#049 知識は精神的な向上に結びつかなければ意味がない
知性にとって重要なことは、知識の量ではない。それよりももっと重要なことがある。それは、勉強して獲得した知識が精神的な向上に繋がり、全体としての知識に釣合いがとれるようになっていることである。
#055 知識は常に使わなければ意味がない
知識というのは日ごろから使っているものだけが必要なときに役立つ。普段使わない知識というのはそれを維持するだけでも大きな困難がともなうものだ。
V 学びの目的を定める
#064 忘れることも大切だ
記憶すべきものは記憶し、忘れるべきものは忘れるという選択に人間が恵まれているのは大変ありがたいことである。書物を読んでも、日々の暮らしの中でも、われわれは毎日厖大な量の情報を受け取っている。しかし、そうした記憶の選択機能に恵まれている人は、興味のあることとないことを無意識に選択しているので混乱することがない。
自分が興味のあることしか覚えないという選択が、学校の試験で役立つことは少ない。しかし、それは文学や美術などでは大変大きな力を発揮する。文学や美術などに役立つ記憶というのは、何でも引き受ける郵便局のようなものではない。それは自分の知的な好みに合わないものは一切掲載しない雑誌のようなものなのだ。
#065 興味のないことを無理に学ぼうとしてはいけない
自分の興味と関心に素直に従い、自らの知性をそのおもむくところに向かわせよう。自分の興味がないことを無理やり人から頭に詰め込まれても、それが自分の精神の糧になることはない。
VI 時間を効率的に使う
#077 人生において重要なのは選択することだ
世の中には「相殺」という素晴らしい原理が働いている。われわれが持っている時間は有限であり、あれもこれもすることはできない。あれかこれかというのが人生の真理である。だからこそ、人生においては選択が重要になってくるのだ。
#086 一日にできる仕事はごくわずかだ
人が一日できることは何と少ないことか。原稿を書いてもわずか3ページしか書けなかったり、絵を描いても着衣のひだをわずかに描けるぐらいだったりすることがある。(中略)
何事をするにしても人生において大切なことは、自分の能力でどれだけのことができるかということを正確に判断することである。そして、その範囲内で実行可能な計画を立てることである。
#090 何をやるかより何をやらないかを決める
人生は短く、時間は矢のように過ぎ去っていくものであることは誰でも知っている。しかし、そうした時間の中で何をやり、何をやらないかを正確に判断することは、豊富な人生経験とすぐれた知恵がないとできない。人生においては、何をやるかということよりも、何をやらないかを決めることのほうがはるかに重要なのである。
#092 あわてて行動してはいけない
物事は迅速に行ったほうがいいように思われている。しかし、人生においては、あわてず、一呼吸おいてから行動に移ったほうがいい場合も多い。果敢な実行力で有名だったナポレオンも言っているように、どうしたらいいかまだはっきり分からないときには何もしないほうが得策だ。
#094 よい仕事をするためには一定の時間が必要だ
どんなことでも、良い仕事をするためには、必ず一定の時間が必要である。それを惜しんでことを性急にに進めると、うまくいくこともうまくいかなくなる。
#098 実行に移した仕事は迅速に仕上げる
人も年々絶えず変化しているのであり、どんな仕事をするにしても、それにあまりにも長期間携わっていると、その仕事にはどうしてもまとまりが失われていく。実行する前にはじっくり考えるべきだが、一旦あることを始めたならば、一定の時間内に迅速に仕上げてしまうほうがよい。
IX お金とうまく付き合う
#133 貧しさは知的生活を妨げる
経済的基盤が大切だからと言って、金儲けに奔走することは知的生活にとって好ましいことではない。しかし、貧乏による不自由さは、金儲け以上に知的生活にとっては好ましくない。
その日の糧を稼ぐために追いまくられるようでは、知的生活はとうていおぼつかない。経済的に逼迫した生活から得るものなど何もなく、特に知的生活においては、そのために知識や能力の習得が中断されるという悪影響しか及ぼさない。
基本的に知的生活とは、調査研究を積み重ねながら、そのほとんどを勉強に明け暮れる生活であるといっても過言ではない。ときには、一日執筆するために、1ヶ月もかけて調査しなければならないこともある。そんな知的生活をする上で最も悪影響を及ぼすのは、経済的な不安による生活の逼迫なのだ。
#141 貧しさは選択と集中につながる
知的生活の観点から見たとき、貧乏であることがプラスに働くこともある。裕福な知的人間にとっては、世の中には食指を動かされることが多すぎて、どれに知的努力を集中してよいか分からないことがある。ところが、貧乏な人間にはそんなことは起こらない。
人間の世の中には平等化という偉大な法則が働いている。たとえ金持ちであっても、学べることには限界があり、何もかも習得することはできない。
実際、金持ちの中にはお金と時間を惜しまず何でも学ぼうとする者がいるが、結局は何も身につかない。それに対して、お金も時間もない貧乏な人が学べることは元々限られており、それがかえって、高度な専門的研究につながることも多いのだ。
X 習慣を疑え
#152 先人の努力に感謝を忘れない
現代社会に生きるわれわれは、不満を感じる部分が多々あるとはいえ、おおむね満足して生活しているといえるだろう。このように社会的にも経済的にもある程度満足して生活できるようになったのは先人たちの努力のおかげであり、それに対する感謝の念を持っておかねばならない。今日の進歩の多くは先人たちのおかげであり、われわれも次世代に更なる進歩を残していく義務がある。
#160 知性は頭の中だけではなく行動にも表れる
偉大な知性は頭の中だけで回転するものではない。それは実際の行動となって表れてくるものであり、決して人の意見に左右されない自分独自の発想に基づくものである。
#164 知的生活者の精神は自由に飛翔できる
知的人間の最も大きな特徴の一つは、いかなる習慣や偏見にもとらわれず、自由に物事を考えることができるということだ。世間のしきたりや規則に束縛されることなく、自由に精神を大空まで飛翔させることができる。
そうした知的人間が目指す精神の自由さは、野生のミツバチの奔放さに似ている。
ミツバチが花から花への飛んでいるのは、誰かに指示されてのことでも、前もって定められた規則に従っているわけでもない。しかし、それでも一日の終わりには、その日の収穫としてたっぷり蜜をためて巣に帰ってくるのだ。
XI 知的生活を維持できる関係を築く
#166 知的な友人と孤独な時間を確保する
教養にとって最も好ましいのは、優れた知性の人と平等に語り合える時間を持つと同時に、自分ひとりになれる時間を十分確保することである。
私の理想は、ロンドンで自分の住んでいるすぐ近くに知的な会話ができる教養のある友人を持つ一方、それと同時に、カモメや大西洋の大波以外は友とするようなものもいないブリディーズ諸島でも知的に充実した生活空間を確保することである。
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