先日、都内の公立の小学校4年生を対象に「ドリームツリー」を描くという授業のお手伝いをさせて頂きました。
好きなこと、得意なこと、負けたくないこと、成し遂げたこと、嬉しかったこと、夢、生徒のそんなことを聴いていると、こちらもいいエネルギーをもらって、自分も童心にかえります。そんなところから、2ヶ月ぶりの本は「星の王子さま」。この読書録を訪れてくださる方なら一度は手に取ったことがあるのではないかと思います。
正直なところ、私にとっては、いつまでたっても理解しきれない、不思議な本です。
この本との出会いは、小学生の頃。親が昔読んだものをそのまま譲り受けました。当時は、世界的名著と教えられても、何が面白いのか、どこが素晴らしいのか、さっぱり意味がわからず。翻訳が難しいのか、自分の理解力が足りないのか、もやもやしたものを引きずりつつ、でも何だか捨ててはいけない本のような気がして、ずっと本棚に置いていました。(ちなみに今はすっかり黄ばんでいます。昭和45年第31刷。240円!)
「この本、面白い」と思ったのは、社会人になってからふと改めて読み直したときです。おとなになるにつれ、どこかに置き忘れてきたもの、見えなくなってきているもの、塗り替えられてしまった価値観などを思い出させられるような感覚でした。年齢を重ねるごとに知識と経験を得てこそ見える世界があると思うので、「おとなにはわからない」というような文脈は少し行きすぎた感じを持つのですが、確かにこの本に登場するおとなたちの一側面はどきりとします。
・こどもが書いた絵や目に見えないものを表現することに対しては理解がないが、ゲームやゴルフや政治や洋服の話をする人たちを「ものわかりのよい人間だ」として好むおとな。
・地位や支配することを何よりも大切にしているおとな。
・周りの人に感心されたくてたまらないおとな。
・むなしさや悲しさに向き合えないおとな。
・収益や資産の数字を数えること、管理することが世の中で一番大事な仕事と信じ込み、勘定することで忙しすぎるおとな。
・自分で考えることをやめ、命令にただ従うおとな。
・自分の目で確かめてもいないのに、机上で知識だけを身につけて知っているつもりになっているおとな。はかないものに価値を見ないおとな。
こういうおとなたちに素朴に疑問を持つ王子さまの様子から、「自分のままでいること」、「心で本質をみること」、こどもの頃はきっと誰もがそんなことをできていたんだろうなぁと思います。
この本からもう一つ、関係性についても考えたりします。王子さまと天邪鬼なバラの花、キツネとの出会い。人生の中で私たちは実に沢山の人と出会いますが、その人が自分にとって大切な人になるかどうかは、自分がその人との関係性をどれだけ大切に育てたか、どれだけ相手のことを想ったかということ、要は自分次第ということなんだなと。
「大切なものは、目に見えない」 « Le plus important est invisible »
オリジナル版
- 作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,内藤濯
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/03/10
- メディア: ハードカバー
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新しい訳もでているようです。こちらの方が読みやすいのかな。
- 作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,河野万里子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/03
- メディア: 文庫
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解説付きで読まれたい方は、100分de名著。
NHK「100分de名著」ブックス サン=テグジュペリ 星の王子さま
- 作者: 水本弘文
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2013/11/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者のサン=テグジュペリを虜にしたミューズ、ルイーズ・ド・ヴィルモランについては、こちら。