ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

神田村通信

この週末は、仏文学者・鹿島茂さんによるガイドでの神保町街歩きツアーに参加してきました。

Passage(パサージュ)という、鹿島茂さんがプロデュースされている新しい本屋さんのクラウドファンディングに参加した返礼の企画です。

大好きな街を、尊敬する先生にご案内頂いて、お気に入りの本にサインも頂いてとても幸せな一日でした。

本書は、「そうだ、この街歩きの前に、これ読んでおこうと思ってたんだ!」と、前日から、慌てて読んだ本。ツアー前には全部は間に合わず、ツアー後に読了。

神田村通信」(鹿島茂 著、清流出版、2007年12月初版)

 

神田村通信

 

鹿島さんが、神保町にオフィスもご自宅も構えていらした頃のエッセイ集。

本書自体は2007年の出版ですが、収録されているエッセイは元々はいろいろなメディアに2000年〜2007年頃に掲載されていたもののようです。

この時期、私も、神保町は職場のお昼休みや仕事帰りにウロウロしていたので、この頃に既に鹿島さんのことを存じ上げていたら、きっと出会えていたであろうに!と思うとちょっと悔しい気持ちです。

さて、本書は本書で適宜お楽しみ頂くとして、
ここでは、歩きながら直接教えて頂いて、へぇ〜と思ったことの備忘録。

いつも歩いているところなのに、ご案内いただきながら歩くと、新しい角度で街が見えてくる。知らないこと、見えていないこと、沢山でした。

  • 三省堂も、有斐閣も、岩波書店も、書泉も、もともとはみんな、古書店だった!そこから出版社や本屋になっていった。かつて新書といえば和本であり、それを売る場所は日本橋方面だった。
  • 一方の東京堂は、出版の取次(出版物の卸売業)だった。私には、三省堂・書泉・東京堂はどれもすずらん通りに並んでいるそれぞれ特徴の異なる本屋としか見えていなかったけれど、成り立ちはずいぶん違うのだな、と。
  • 神田神保町の古書店の始まりは、有斐閣から。
  • 現在ある古書店の多くは、一誠堂書店で古本業を学んだ人たちが派生して生まれている古本屋さん。
  • 古書店にはそれぞれの専門がある。(少しはわかってはいたけど、それは思っていたよりももっとこだわっている。)
  • 古書業界では、古書の取引をする市場がある。古書店が誰かからまとめて古書を引き取った時、自分のお店の専門ではないものは、こういう取引所に出して引き取ってもらう。東京古書会館などがそれ。一般の人も、金・土だけは買うことができる(土曜日だったので売り場も入れた。和本のような古いものまであったりして興味深い)。皆、車で買いに来るから1階は駐車場。
  • ゾッキ本とは、再販売価格維持制度に基づく定価販売が必要な一定期間を経た後に、出版社が定価の拘束を外れた本のこと。シンプルに言えば、だいぶ安くなる。それの取次をする本屋さんがある。
  • 「神保町」の名前の由来は、旗本・神保家の屋敷があった一角だから。
  • 神保町=カレーの街は、ボンディから始まった。ボンディは、元々は高島平にあったお店。古書店・高山本店の店主がロンドンで感動したカレーと同じものを提供しているボンディを見つけ、自社の古本屋のビルに誘致したのが始まり。
  • 神保町は、今も少し、看板建築が残る街。
  • 現在、スポーツ洋品店が並ぶ神保町〜神田方面は、昔は中古の学生服のお店がずらりと並んでいたのだとか。

 

街歩きしながら、以前にオフィスを構えていた場所なども教えて頂き、この本で読んでいたことと紐づいて「ああ、あれはここのことだったのか!」と繋がったりするのも楽しかったです。

おすすめの飲食店も教えて頂きましたが、どれも私は、存在は知っているけれども入ったことがないところばかり。
早速、帰りに一軒入ってみましたら、想像以上に賑わっていて、びっくり。
やっぱり、自分の価値基準だけで行動していると、自然と行動範囲は固まってきてしまうものですね。他のお店も今度ぜひ行ってみようと思いました。

さらに余談としては、本書には、1年に2500冊も手元の本が増えているとか、一度パリに行けば60kgとか100kgの本を買って帰ってくるとか、信じられない話が載っていて、それ、全部読めるんだろうか、、、と不思議に思っていたので、素朴に聞いてみたところ、「そんなはずないでしょ」とのことで、あ、そうなのか、と安心するやら、拍子抜けするやら。笑。

もう一つ聞きたかったこと、本書に書いてある「一日二日制(前半:0時起床、6時まで仕事、10時まで睡眠、12時まで身繕い、後半:12時〜18時仕事、夕食、19時〜23時睡眠、24時まで休息)」という、これまたすごいライフスタイルがまだ続いているのか、というのは、伺うのを忘れました。

 

それにしても、かつては映画館が複数あったとか、私が知る前の神保町の話を聞いて驚くのは当然として、
つい最近まであったはずの飲食店が突然なくなっていたり、建物が建て替え工事に入っていたりと、この数年でのこの街の変貌ぶりにも驚きました。

街は変わりゆくのだなぁと感じるのと同時に、ちょっと残念に思う気持ちもあります。

そんな中で、すずらん通りにできた「Passage(パサージュ)」は素敵な本屋さんだなと思います。
本書の中でも、このPassageの構想が見えています(パルコ方式の書店)。
それが本当に形になって実現しているってすごいです。
外観も内装も置かれている本も、どれをとっても素敵な空間です。

ぜひ覗きに行ってみてください。
きっと素敵な本との出会いがあると思います。

 

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