読書録じゃなかったのか? と自分で突っ込みたくなりますが、またまた映画鑑賞録。
PAD MAN(邦題:パッドマン -5億人の女性を救った男)。
素晴らしい作品でした。
是非多くの方に届くといいなと思う映画です。
現代のインドで生理ナプキンの普及に奮闘した男性についての、実話を元にした感動作です。
これ、大変失礼ながら、予告編の動画を見るだけでは、正直、本作品の良さは伝わらないのではないかと思います。
予告編では、貧乏で生理ナプキンが買えない家の愛妻家の夫が、妻のためにナプキンを自分でつくり始めた、というトーンになっているのですが、実際に作品を見ると、本当の問題はお金ではないことがわかります。
また「妻のために」というのも、妻がナプキンを欲しがっているのではありません。むしろその逆なのです。
舞台となっている北インドのマディア・プラデーシュ州のマヘーシュワルという町。
古い歴史を持つ信仰深いこの町では、生理は穢れたものとして扱われ、生理中の女性はその期間、部屋の外で過ごし、生理中の女性には近づいてはならないされています。
生理の話を人前でするなどあり得ない。
男性がその問題に触れるなどタブー極まりないことです。確か時代設定は2001年。
また、生理中の女性は布で経血を吸収していますが、その布は使い古され、また、その布を干す時もサリーなど他の布に隠して干すため、日光消毒ができているかどうかも怪しい状態です。
主人公のラクシュミは、愛する妻ガヤトリが、この「汚い布」(映画中の表現)を使うことで、彼女が病気になってしまうのではないか、と心配なのです。実際、世の中にはこれを原因として命を落とす人もいます。
なので、清潔なものを使って欲しくて、ナプキンを買おうとするのです。
雑貨屋で買おうとしたら、それはびっくりするほど高い値段。
それでも何とかして買って帰ったのに、妻の反応は「そんな恥ずかしいことをしないで」「女性の問題なのだから関わらないで」。
さらに値段を知って「もったいない!そんなに高いものを私が使っているとお義母さんやお義姉さんに知れたら大変!返品してきて!」と言われてしまう。
危険性を訴えても、古い伝統の価値観の中で育っている彼女には全く届きません。
高価だから使ってもらえないのか・・・、とラクシュミはナプキンを手作りしようと奮闘するのですが、ガヤトリは夫がそんなことをやっていることが町内の人たちに知れたら恥さらしだと気が気ではありません。一刻も早くそんな妙なことはやめてほしいと願います。
女性にとっては恥は何よりも大きな病気なの(ガヤトリ)
ラクシュミには、妻の健康のことを考えることがなぜ悪いのか、なぜ汚い布を使いつづけるのか、生理について話すことがなぜタブーなのか、女性は生理の期間中なぜ別空間で生活しなくてはならないのかが理解できません。
この純粋な「なぜ」に従った行動してゆく先に、社会を動かす展開が待っています。
素晴らしいリーダーシップの旅。
それは多くのものを失う旅でもあります。
周囲からの厳しい風当たりの中で彼を支える信念は、
女性を守ることができなければ男とは言えない(ラクシュミ)
アルナーチャラム・ムルガナンダム「パッドマン」として知られる社会企業家。1962年、タミル・ナードゥ州コインバトールで機織り職人の家に生まれる。幼い時に父が交通事故で亡くなったため、貧困の中で成長する。母が農園労働者として働き、彼を学校に通わせたが、それも14歳までで、以後様々な仕事に従事する。1998年に妻シャーンティを迎え、初めて女性の生理時の実態を知る。生理ナプキンが材料費の40倍もの値段で売られていることを知ったムルガナンダムは、ナプキンの手作りに乗り出すが、インド社会ではいまだタブーの生理に触れる彼の行動は様々な波紋を巻き起こす。本作に描かれたように、動物の血を使った実験や、女子医科大の学生に協力を仰ぐなどの努力を経て、2年後に市販ナプキンの材料セルロース・ファイバーにたどり着く。その後、ナプキン製造企業が使う大きな機械からヒントを得て簡便な製造機を発明、輸入品では3,500万ルピー(約5,600万円)していた機械が65,000ルピー(約10万円)で作れるようになった。2006年、チェンナイのインド工科大学で自らの機械をデモンストレーション、それが草の根テクノロジー発明賞を受賞する。以後、簡易ナプキン製造機を作っては女性の自助グループに販売し、起業と意識改革をうながした。その対象はインドのみならず、海外にも広がっている。それらの功績に対し、2014年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたほか、インド政府からは2016年に褒章パドマシュリを授与された。(オフィシャルサイト「コラム」より)
すっかり清潔な生理用品が普及し、会社によっては「生理休暇」なども整備されている昨今の日本では、この映画で描写される町の様子は、とても非科学的で遅れたものに見えるかもしれません。
でも、日本も、ちょっとググってみたところ、明治初期までは、この映画のインドと同じように不衛生なボロ布や再生和紙(書き損じた紙など)が使われていて、脱脂綿が徐々に普及したのが明治19年(1886年)。その後、一般の人にも「月経帯」が徐々に普及し、使い捨て紙ナプキンが登場したのが昭和36年(1961年)。それもとても高価なものだったようです。
また、生理中の女性が隔離されていたのも、昔の日本でも行われていたことです。
この映画の中に見る世界は、私たちにとっても何ら遠い世界のことではないのです。
そこを通って、現代の私たちがあるのです。
「下町ロケット」や「陸王」、連続テレビ小説「まんぷく」がお好きな方、
女性の立場や、ジェンダー問題に関心がある方、
インドに興味がある方、
社会を変えることに関心がある方、
マイクロファイナンスに興味がある方、
途上国開発に関心のある方、
前向きな気分になりたい方、
などに、おすすめしたい作品です。
心残りなのは、機内で見ていたところ、終盤の名スピーチの途中で着陸してしまい、最後まで見届けられなかったこと。どんな風に終わったのか、気になります。。。
全国各地でもまだやっていますので(都内は渋谷)、是非お出かけください!
下町ロケット(順番は、1.下町ロケット、2.ガウディ、3.ゴースト、4.ヤタガラス)

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