ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉 - MAKE TROUBLE -

タイトルとインパクトのある色に惹かれて買った本。

厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉」(ジョン・ウォーターズ著、エリック・ハンソン 絵、柳下毅一郎 訳、2022年8月初版、フィルムアート社)

原題が好きです。「Make Trouble

 

厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉

 

「これまでに作られたもっとも下劣で、馬鹿げており、忌まわしい映画」と評された映画「ピンク・フラミンゴ」を処女作として世に出し「人民の変態」(People's Pervert)と呼ばれてきた映画監督ジョン・ウォーターズが、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインの2015年度卒業式で送った祝辞のスピーチ内容です。

 

このスピーチは、YouTubeでも視聴できます。

英語のスピーチを聞きながら本書を読むというのも、いい楽しみ方ではないかと思います。

デザインも、訳もいいので。

 

youtu.be

 

「人様に迷惑をかけないように」

多くの日本人が小さい頃から言われて育った言葉。

それは、他者のことを心配しているようでいながら、実は、「そうしていた方が、もっとも安全に生きられるから」ということではないか、と最近思います。

誰かに迷惑をかけたら、反撃を喰らうかもしれない。

下手に目立ったら、いじめられるかもしれない。

 

そして、「迷惑をかける」も、私たちは時に曲解して過剰に心配している時もあります。

どんな装いもしても、どんな悪趣味な映画を制作しても、別にそれだけで誰かに迷惑をかけているわけではない。

文房具を忘れて隣の子に借りたからといって、宿題がわからないから友達に教えてもらったからといって、誰かの家に泊めてもらったからといって、必ずしも相手に迷惑をかけてるわけじゃない。むしろ相手はお役に立てて喜んでいるかもしれない。

実は、人間関係が深まったりするのはそういう「厄介をかけたね」というような時だろうと思います。

 

詰まるところ、厄介をかけて、相手に金銭的・物理的負担がかかることを本当に心配していると言うよりも、自分が「厄介者」「迷惑な人」と思われて人が離れていくことを恐れてる。「断られること」を恐れてる。そっちの方が多いのではないかな、と。

 

そうこうしている間に、自分が本当に欲しいものが何だったかもわからなくなる。

何を願っていたのかすらも忘れてしまう。

 

「トラブルを起こせ!」と正面から言ってもらえる本書は気持ちがいい。

自分が叶えたいものを、ひとつのトラブルも引き起こさずになんかできるわけない。

そう思ったら、今日の失敗も、昨日のケンカも、あの日のみっともない姿も、笑いに変えていけるような気がします。

Make troubleしちゃったよ、って。

 

そしてインサイダーになっていけ、内側から変えていけ、自分の力で変えていけ。

批評家になるのではなく、誰かのせいにばかりしているのではなく、自分が創っていけ。

そんな愛ある厳しさとエールを感じる本です。

 

覚えておくように。「ノー」は無料でもらえます。

遠慮しないで全部よこせ、と要求しなさい。

たとえ最初は拒絶されても。(p.19-21)

 

きみたちはなんとかして内側に入り込まなければなりません。その分野で起きている騒ぎから目を離さないように。

きみが芸術家なら、熾烈な競争を繰り広げているギャラリーの展示を見比べ、マンハッタンに残されたいちばんワルな場所で個展を開きましょう。

<ニューヨーク・タイムズ>の批評でけなされている映画を全部見て、監督がどんなヘマをしでかしたのか確かめましょう。それとも正しいことをやっているのかを。

読んで、読んで、読みなさい!

路上の人間を観察しなさい。(p.28-29)

 

最近では、誰もがアウトサイダーになりたがってます。とことん政治的に正しくあろうとして。

たいへん結構。

みなさん人種差別を、性差別を、年齢差別を、肥満差別をなくすべく頑張っていることでしょう。

でも、それで満足ですか?

アウトサイダー気取りなんてとっくに流行遅れじゃないですか?

つまり、用心はかなぐり捨て、本当にひっくり返してやるんです。

もっとも憎んでる敵の側に自分で立ってみてはどうですか?

つまり、インサイダーに!なるんです。

そう、ぼくみたいにね。(p.35)

 

退屈な街頭演説なんか、誰も聞きたくはありません。

ユーモアはつねに最良の防御であり、武器です。

馬鹿者を笑わすことができたなら、そいつらも少なくとも話を聞くはずです。

あなたに向かってふりあげた手を止めてね。(p.43)

 

金持ちすべてを憎まないように。

全員が最低なわけではないのです。嘘じゃない。

ぼくは邪悪な貧乏人にも会ったことがあります。(p.46)

 

貧乏人を憎んでもかまいません。

ただし、精神の貧しいものを。

富を持たざるものではなく。

ぼくにとって、貧乏人とは、銀行口座にはたんまり入っているが、好奇心をもたず、ダメ出しばかりして、孤独で、変化を嫌う人です。(p.48)

 

そして、若者たちよ

今日をもって自分たちが抱えているいろんな問題の責任を、親におしつけるのをやめましょう!

泣き虫の大人なんて可愛くもなんともない。

ええ、ベッドの下のボール箱に閉じこめられ、毎日カーアンテナで鞭打ちされて、さだめし辛かったことでしょう。

でも、もう前に進むときです。

全員手札を配られました。その手で勝負するんです!

 

さあ、何から始めますか?

 

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