「今年読んでよかった本」にきっと入るだろう1冊。
2019年初版。もっと早く読んでいたかったなぁと思う本。
でも、様々な実践を経た今の私だから深く共感できるということでもあるのだとも思います。
そういう意味では、今出会えてよかったのかもしれません。
「他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論」(宇田川 元一 著、NEWSPICKS、2019年10月初版)
コーチという職業柄、いろいろな方のお仕事上のお悩みを聞くことが多いですが、それを辿っていくと、人間関係に行き着くことが実はとても多いです。
あの人がわかってくれない。
あの人と一緒に仕事をするのはストレスだ。
あの人が何を考えているのかさっぱりわからない。
クライアントさんから聞こえてくる声でもあり、私自身も自分ゴトです。
それもそのはず。本書の言葉を借りるなら、
組織とはそもそも「関係性」だからです。(p.7)
相性が良くない人たちとは離れればいいじゃないか、と言っても、それには限界があります。
場所を変え続けても、どこの場所にも気の合わない人もいるし、
ましてや、自分がものすごくやりたいことがある場所だとしたら、人を理由に離れていくのは勿体無いことでもあります。
個性が尊重されるようになった分、誰もが自分の価値観を主張し尊重を求めることも可能な世の中になってきた。
ということは、自分だけではなく、相手も相手の価値観で行動することになってきているということでもある。
指示命令系統に従って黙って言うことを聞け、ということが当たり前だった時代に比べて、
今は、他者と働くことは難しくなっている、ということでもあるのかもしれません。
相手は変えられないのだから、自分を変えるしかない、とはよく言われる言葉。
自分の在り方をどう変えればいいのか。
そのヒントが本書にあります。
キーワードは、「対話」と「ナラティヴ」。
私たちが直面している人間関係のややこしさは、「議論」ではもはや解決しない。
議論で解決できるなら、それはAIに任せておけば良い話。
「対話する力」を誰もが身につける必要があると感じるここ数年です。
対話とは、一言で言うと「新しい関係性を構築すること」です。
新しい関係性を構築するというのは、いきなりわかり合おうとすることではありません。(中略)
新しい関係性を築いていくことは少し手間のかかることです。(p.7)
対話を試みてみようという気持ちになったなら、有効な対話をしていくために気づくべきは、自分のナラティヴと、相手のナラティヴ、そして、両者の間の違い(溝)。
相手を変えるのではなく、こちら側が少し変わる必要があります。(中略)
しかし、「こちら側」の何が変わる必要があるのでしょうか。
それはナラティヴです。「ナラティヴ(narrative)」とは物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のことです。(p.33)
SNSの投稿などを見ているとわかりやすいですが、同じ事象に対して、いろんな意見が出てくる。
それは同じ事象に対しても解釈が異なるからですが、その解釈はどこから来るかといえば、その出所は、それぞれ自身が持っているナラティヴです。
その人が人生の中で経験してきたこと、育ってきた文化、影響を受けた人たちなど。
同じ日本人であっても、これは個々人によってかなり異なります。
一見皆同じと感じてしまう日本では、逆によくよく気をつけていないと、ナラティヴの違いに意識を向け忘れる危険性があるとも思います。
相手のナラティヴと自分のナラティヴの違いに気づき、その間に「溝に橋を架ける」(p.38)。
そのためには、傾聴力と観察力が必要ですが、それに加えて、自分自身についても気づいていく力も欠かせません。
中立的な人間は原理的に考えてもこの世界には存在しません。誰もがそれぞれのナラティヴを生きていると言う意味で偏った存在であり、それは自分もそうだということです。(p.92)
自分自身も偏っている。
そのことに気づく人が増えた時、日本はきっともっと暮らしやすい国になるのではないかと思います。
ぜひとも多くの人に読んでいただきたい本です。
コーチとして私がクライアントさんと良いセッションができたなと思う時を振り返ってみると、本書に書いてあることが実践できている時だなと思えましたので、実践検証済みです。
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「さらに学びたい人のための文献リスト」として本書で紹介されている本




