ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

LIFE SHIFT(ライフシフト)

ブームに一足もふた足も遅れて読みました。こういうベストセラーについて書くのはちょっと勇気がいります。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略(リンダ・グラットン氏、アンドリュー・スコット氏著)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

 

正直なところ、読んだときの衝撃度・興奮度はワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(本書の著者のひとり=リンダ・グラットン氏の前著、2012年)の方が大きかったです。

 

ひとつには、本書の提案する生き方は、ワーク・シフトで彼女が提唱していたことと基本的には同じ流れであること、また、あの当時と比べると周囲にリアルに「ライフシフト」で生きている人たちが増えてきていること、などが影響しているかと思います。

「ほーーー!」と目を丸くして驚くというよりも、「そうだよね、そうだよね」と頷きながら読みました。

 

更に言うと、本書が伝えていることは、読者が自覚的であるか否かは別として、本当は読者は誰もが皆、内心気づいていることだと思います。

その声の代弁を試みてみると、、、

・80歳過ぎても元気に生きている人って珍しくなくなってきたね。

・65で定年してあと15年も20年も、もしかしたら30年も、何して過ごそう。

・仕事が面白いのに、なんで一定の年齢に達したらやめなくちゃならないんだろう。

・育児や介護、学びの時期、働き盛り、いろんな時期にいろんな事情があるよね。

・そういうタイミングって、皆同じじゃないよね。

・大企業も傾く時代。全人生を会社に捧げていて大丈夫だろうか。

・今の仕事は面白い。続けたい。だけど、1年くらい仕事を休んで、旅行したいなぁ。留学したいなぁ。ちょっとだけ、他の仕事もかじってみたいなぁ。

・会社も、もう全社員の生涯を面倒見ることは限界に来ているんじゃないだろうか。

・もっと自由に働きたい!自分で自分の人生をデザインしたい!

 

先進国に生きる人ならば誰でも感じているだろうこういうモヤモヤを、巧みに言語化し、データなども使って現実味を帯びさせながら書かれているので、冒頭から「自分事」としてぐいぐい引き込まれます。

だからでしょうか。本書は、ワーク・シフトよりも広く読まれている印象があり、個人・組織・社会のマインドを大きく変えることに貢献している1冊だと感じています。

 

約400ページ。もっと手っ取り早く知りたいに人は、週刊東洋経済 2017年7/22号 [雑誌](LIFE SHIFT(ライフ・シフト)実践編 日本人のための100年人生マニュアル)によくまとめられています。

 

<このブログの目次>

 

人生は「3ステージモデル(教育仕事引退)」から「マルチステージ」になる

これまでの社会では、同じ年に生まれた人はだいたい同じ時期に学業を終えて、休むことなく組織で勤め上げて、定年を迎えて、老後を過ごす。一直線。

日本の場合は特にこの画一性、直線っぷりが強い感じがします。社会人何年目、と言えばだいたいの年齢がわかってしまう。あまりにもそれがはっきりしているから、計算合わないと「ん?」と聞きたくなるし、聞かれるし、それでも「ズレ」の理由は、日本の場合はせいぜい浪人、留年、留学、大学院、くらいのバリエーションでおおよその事情に該当してしまうのではないかと思います。

「仕事」のステージもだいたいが1〜3社くらいをシームレスに移行し、ある企業に勤めているときは全ての仕事の時間をその組織に捧げて、仕事に打ち込む。

そして迎える定年。いわゆる老後は悠々自適に暮らすもの、というのがこれまでの多くの人が目指すところだったかと思います。

 

本書は、これからの時代は、これまでの3ステージに加えて、新しいステージが現れて、人はそれぞれの好みやその時々の事情に応じてステージを順不同で移行するマルチステージの人生になるだろう、と一貫して唱えています。

なぜか。平均寿命が延びているから。100年ライフが希少なことではなくなりつつあるから。3ステージモデルでは、100年ライフを充実させることに限界があり、何より、せっかく寿命が延びるということの恩恵を十分に活かせないから。

 

新しく登場するステージとして、本書は以下3つをあげています. 

エクスプローラー(探検者)のステージ

選択肢を狭めずに幅広い進路・可能性を検討するステージ。

まるで旅するように。自分の好きなものはなんだろう。何に心を突き動かされるんだろう。何に興奮するんだろう。何が得意だろう。自分のリソースが求められているのはどんな世界だろう。

荷物は軽く、好奇心に従って生きるとき。たくさんの出会いと、新しい経験に溢れて、自分の可能性が広げるとき。 

次のインディペンデント・プロデューサーが、自分のやりたいことがおよそ明確になっている頃であるとするならば、それと比較したら、まだ自分の軸はない頃。それを見つけるための時間。そんな風に理解しました。

 

インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)のステージ

自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こすステージ。

 「ひとことで言えば、職を探す人ではなく、自分の職を生み出す人」(239頁)。

このステージについてまだ正確に理解できている自信がないのですが、自分の持っているリソースを広く使ってクリエイティビティを発揮することに喜びを感じている、社会で通用するか試してみている、という時期かなと理解しています。

従来の「起業家」が事業を起こすことに関心があるのだとすれば、インディペンデント・プロデューサーの関心事は、自由に、独立した立場で生産的な活動に携わること、その実験を繰り返して、経験値を高めたり人脈を広げたり、自分という人物の評判を確立したりすることにあります。

その先にくる起業や特定の仕事に没頭する前の「プロトタイピング」(≒試行錯誤)の段階。組織に勤めながらこのステージを始める人も多いと思います。気軽で、遊び心たっぷりの、実験の時間。 

 

ポートフォリオ・ワーカーのステージ

様々な仕事や活動に同時並行的に携わるステージ。

本書によれば、スキルと人的ネットワークの土台が確立できている人にとって、特に魅力的に感じられるステージ。上の2つのステージが、実験的であり経験や人脈を形成すること、いわゆる無形資産(後述)の形成を最重要視しているのに対して、こちらは経済的な面でも土台が築かれる感じがあります。

バランスのとれたポートフォリオの例として、以下があげられています。

1)家計の支出を賄い、貯蓄も増やせる仕事

2)過去の経歴とつながりがあり、評判とスキルと知的刺激を維持できるパートタイムの仕事

3)新しいことを学び、やりがいを感じられるような役割を担える仕事

たとえば、1)が3日、2)が2日、3)が1日、休息日1日という1週間だとしたら。そんなポートフォリオを持っていたら、いくつになっても退屈している暇などないだろうと想像します。むしろ時間が足りないと思うかも?

 

マルチステージな生き方

今までのように一つの仕事や学業に没頭するステージも残るのだと理解しています。そういう時期は、実際に、とても大事な時期です。大きな力をつけるときだと思います。上記は、それに加えて新たに現れるステージです。

マルチステージ時代の特徴の一つは、順序が一直線ではないこと。学業の後、エクスプローラーの時代を経て、定職についてバリバリ働いてもよいし、そのあとインディペンデント・プロデューサーの時期を経て、またどこかに就職してもよい。その上でなお、エクスプローラーに戻ったってよいのです。

もう一つの特徴は、どのステージも、特定の年齢層に限定されるステージではないこと。何歳からでも、どのステージでも始めることが可能です。「年甲斐もなく」なんていう言葉は廃れるかもしれません。むしろ何歳になっても様々な可能性に好奇心を向けて自己変革していけることの価値が、もっと広く認知されるようになると感じます。

 

ライフシフトな生き方をするためにー無形資産

100年ライフを充実して過ごすために、本書では、キャリアや金融リテラシーを身につけるように、「無形資産」を築くことが大切だと言っています。以下は備忘的に。詳細は本をご参照ください。

生産性資産

人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素。スキル、知識、経験、仲間、評判など。

活力資産

肉体的・精神的健康と幸福。良好な人間関係も含まれる。

変身資産

変容し続ける力。自己理解、人脈、好奇心など。

こういう資産を形成するために、余暇はレクリエーション(娯楽)に充てるのではなくて、リ・クリエーション(再創造)に充てることを推奨しています。

 

従来の3ステージのキャリアでは、自由度がないかわりに、自分ではあまりよく考えなくても、全体の流れに何となく乗っかっていれば大丈夫、という安心感がありました。

マルチステージでは、高校や大学を一緒に過ごした人たちもそれぞれ多種多様なキャリアパスを取っていきます。左右の友人(peer)を見て都度、右往左往してしまうと情緒不安定になってしまいます。

マルチステージで生きていくためには、自分は何が好きで、譲れない価値観は何で、何のために人生を使いたいと思っているのか、今はそのタイミングなのか、ということを探求していくことが不可欠です。それができて初めて、動じない軸や腹の座り方ができてきます。

ここには、コーチングの可能性を大いに感じます。コーチングは部下のモチベーションを上げるために活用するものと思われている方も少なくないようなのですが、本来は自分自身の内省のために行うものです。コーチとともに自己理解を深めていくことは、マルチステージを生きる上で、間違いなく助けになります。

 

ライフシフトが当たり前な世の中になったら

そもそも人間は多面的です。

マルチステージモデルは、個々人が多様な可能性に気づき開花させることを可能にすると思います。

エクスプローラーや、インディペンデント・プロデューサーのステージで沢山の「実験」をすることで、どんなところに自分の力が求められているのかを確かめることができます。

私たちはつい、次のキャリアを考えるときに、過去の自分の経験にとらわれてしまいます。けれども、自分の人生でまだ経験したことのないところに、自分のうずきや適性があるのかもしれないのです。今は実験のステージだと思えば、もっと気軽に、いろいろなことを試してみることができるのではないでしょうか。

社会にとっても、これは有益なことだと思います。

ある人が、今の職場では使われていない(あるいは抑制されている)その人の資質を解放し、それが求められているところで使うことは、社会全体にとっても大きなメリットで、とてもエコなことだと思います。休日や夕方以降などを使えば、今の職場も、その社員を失う必要はありません。

社会が必要としていることは、既に皆が持っているのではないか、ただそれに気がついていないだけなのではないか、あるいは、気づいていても不必要に抑制させているだけなのではないか、そんな思いが湧いてきます。

ライフシフトが当たり前の世の中になるためには、個人のマインドの変化に加えて、社会もそれに対応していく必要があります。実はこれが一番難しく時間がかかるものです。ただ、対応が遅い社会を批判することは簡単ですが、社会は私たち個々人で構成されています。ひとりひとりが行動していくことが大切という著者の意見にはとても共感します。

 

気をつけたいこと

本書の書き方の中で唯一ひっかかるところがあるとすると、本書にあるような生き方をしなければ将来に備えられないですよ、きちんと計画を立てて戦略的に生きていななければ余裕ある生活を送れませんよ、というようなトーンが時々見られることです。

ライフシフトは間違いなく、私たちにとって新しい生き方の提案をしてくれています。だからといって、そうではない生き方を否定するものではないはずです。そこを否定してしまうと、無用な対立が起きてしまいます。

一つの会社を勤め上げることにも大きな価値があります。それが自分には合っているという人も沢山います。

今までどおりでもいい、マルチステージを選択してもいい。自分の生きたいように生きればいい。そういう社会であってほしいと思います。

また、「ライフシフト的に」生きたほうがすごい人って思われるんじゃないか、複数ステージを経験しておいたほうが将来に備えられるんじゃないか、なんていう「怖れ」から次のステージを選んでいく思考に陥ることがあったら、それは要注意ではないかと思います。

「同じ会社に長く良すぎると自分の価値が下がるんじゃないか」などという「怖れ」からマルチステージを選ぶことは、「ここの会社にずっと勤めていたほうが安全だから」と考えて従来の3ステージのキャリアを選ぶ人と、戦略が違うだけで、やっていることは根本的には変わりません。

本当にワクワクや喜びに従って生き、その時に合うライフステージを(怖れではなく)喜びや愛から選ぶことができてこそ、初めてライフシフトの真価があると思います。

 

100年ライフとは言うけれど

平均寿命がどれだけのびても、明日突然死ぬかもしれないのもまた人間。

長く生きる将来に備えつつも、今日という日を悔いなく生きる。

そんな日々を積み重ねることが充実した人生につながるのではないかと思います。

そのためには、やりたいと思ったことはを先延ばしにしない。その時にやる。定年にまで待つなんてことはしない。

本書が提案するマルチステージは、そんな一日一日を充実させる生き方を後押しするものだと思います。

そしてその先には、ひとりひとりのユニークな人生がデザインされていると思います。

 

ひとりひとりがよく生きたと思える人生になることを、そんな人で溢れる活き活きとした社会になることを願って。 

 

(主にキャリアの観点から思うところを書いてみましたが、本には、お金、時間の使い方、人間関係、個人・企業・政府の課題なども書かれています。)

 

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

  • 作者: リンダ・グラットン,アンドリュー・スコット
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2016/10/21
  • メディア: Kindle版
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週刊東洋経済のLIFE SHIFT特集。大変よくまとまっています。

 初めて読んだ時にとても衝撃を受けました。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

 

 日本版ライフシフト(だと勝手に思っています)by ちきりん。

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる (文春文庫)

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる (文春文庫)