ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)

今すぐ、全人類に読んでほしい本です。

昨年、仕事で知り合った某外資系資源会社の上層部の方から、「今年一番面白かった本」と教えてもらっていた本。英語で読むと時間かかるしなぁ・・・とAmazonポチするのを渋り続けていたところ、待望の翻訳版です。しかも訳が分かりやすく、テンポもよくて、著者の人となりを失わないトーンで、素晴らしい本に仕上がってます。

オススメされた時から、直感的に、絶対、私、好きだろう、と思っていましたが、本当にそうでした。

すべての人にオススメしたい本を1冊だけあげよと言われたら、これまでは「怖れを手放す」だったのですが、今回、数年ぶりにこれが入れ替わりました。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(Hans Rosling、Ola Rosling、Anna Rosling Roennlund共著、上杉周作氏、関美和氏訳)

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

賢い人ほど世界の真実を知らない 

本から、幾つかの問いを抜粋します。

質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A   20%

B   40%

C   60%

質問2 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?

A   低所得国

B   中所得国

C   高所得国

質問4 世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?

A   50歳

B   60歳

C   70歳

質問6   国連の予測によると、2100年にはいまより人口が40億人増えるとされています。人口が増える最も大きな理由は何でしょう?
A:子ども(15歳未満)が増えるから
B:大人(15歳から74歳)が増えるから
C:後期高齢者(75歳以上)が増えるから

質問9 世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?

A   20%

B   50%

C   80%

質問12 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?

A   20%

B   50%

C   80%

冒頭、こんな質問13個から始まります。

14カ国・12,000人に行ったオンライン調査の結果、(正解が明らかな温暖化問題を除く)12問中、平均正解数はたった2問。全問正解者はゼロ、全問不正解者は15%にものぼったと。

そして、著者がこれまで医大生、教師、教授、科学者、大手企業のエリート、ジャーナリスト、活動家、政界トップなど、高学歴で国際問題に関心が高いはずの人たちも大多数がほとんどの質問を間違えたそうです。国別でみると、北欧の国々の不正解率が高いのが、個人的には目を引きました。

ためしに私も、東大卒の博識な友人を実験台にしてみたところ、12問中正解わずか3問!

ちなみに、私は12問中、正解7問。この友人を相手に、この本の中で間違えた層として出てくる上記のエラい方々相手に、思わず鼻高々。

 

みんな、世界のことについて知らなさすぎる

上記の質問、ランダムに答えたとしたら、確率的には33%(12問中4問)で正解するはず。チンパンジーに選ばせてもそうなる。なぜ人間はチンパンジーよりも正解率が低いのか。

著者ハンス・ロスリング氏は、そこが不思議でなりません。

ハンスはスウェーデン人の医師であり、公衆衛生の専門家。長年、アフリカを中心に世界各地の公衆衛生水準を引き上げることに情熱と心血を注いできた方です。末尾に紹介するバブルチャートでご存知の方も多いと思います。

疫病などの研究のため、勇敢に現場に向かい、豊かさも貧しさも、本当の現実を知っている。データを調べ上げ、現実を裏付けるものも知っている。本書を読めばビジネスセンスの高さにもきっと気づくでしょう。

そんな彼が授業や講演を依頼されて話して行く中で目の当たりにしたのは、世の中の人々の無知のひどさ、更には認識の歪みのひどさ。これが彼のパッションに火をつけました。イントロから抜粋します(太字はこちらで勝手に加工しています)。

みんな、世界のことについて知らなさすぎる。わたしはいら立ちと焦りを隠せなかった。

 たとえば、カーナビは正しい地図情報をもとにつくられていて当たり前だ。ナビの情報が間違っていたら、目的地にたどり着けるはずがない。同じように、間違った知識を持った政治家や政策立案者が世界の問題を解決できるはずがない。世界を逆さまにとらえている経営者に、正しい経営判断ができるはずがない。世界のことを何も知らない人たちが、世界のどの問題を心配すべきかに気づけるはずがない。(p.17-18)

  わたしは人生をかけて、世界についての人々の圧倒的な知識不足と闘ってきた。この本は、わたしにとって本当に最後の闘いだ。何かひとつ世界に残せるとしたら、人々の考え方を変え、根拠のない恐怖を退治し、誰もがより生産的なことに情熱を傾けられるようにしたい。

 これまでの闘いでは、たくさんのデータと、あっと驚くようなソフトウェアと、躍動感のあるプレゼンと、スウェーデンの銃剣(注:本を読むと銃剣の意味がわかります。戦闘用ではありません。)がわたしの武器だった。これらだけでは、まだまだ力不足だった。でもこの本があれば勘違いとの闘いに勝てると信じている。

 ほかの本と違い、この本にあるデータはあなたを癒してくれる。この本から学べることは、あなたの心を穏やかにしてくれる。世界はあなたが思うほどドラマチックではないからだ。(中略)この本で紹介する「ファクトフルネス」という習慣を毎日の生活に取り入れてほしい。(中略)判断力が上がり、何を恐れ、何に希望を持てばいいのかを見極められるようになる。(後略)(p.23-24)

 この本は世界の本当の姿についての本でもあり、あなたについての本でもある。あなたや、わたしが出会うほとんどの人がありのままに世界を見ることができないのはなぜだろう。どうすれば世界を正しく見られるのだろう。そんな疑問にこの本は答えてくれる。

(中略)

 自分の殻に閉じこもるよりも、正しくありたいと思う人へ。世界の見方を変える準備ができた人へ。感情的な考え方をやめ、論理的な考え方を身に付けたいと思う人へ。謙虚で好奇心旺盛な人へ。驚きを求めている人へ(p.25)

 

思い込みは知識すらも歪ませるードラマチックすぎる世界の見方

人々の圧倒的な無知に直面した著者は、最初は「知らないだけ」なんだろうと思い、正しいデータを提供することに心血を注ぎます。

けれども、途中で気がつきます。どれだけ正しいデータを提供しても、この人たちの世界の見方が変わらない、と。

なぜか。それは思い込みが邪魔するから。

データをこよなく尊重し愛する彼にとって、このことに気がついたとき、とても大きなショックだったのではないかと思います。データを地道に集め、正確に記録し、分析する、わかりやすく示す。この膨大なエネルギーを要する一連の行為は一体何のためなんだと、思ってしまっても不思議ではありません。

そんなときに、無力感にとらわれたり、「あいつらはどうせわからない奴らなんだ」と自分の箱に入ってしまわないのがハンスの素晴らしいところ。

「思い込み」は、何百万年にわたる人間の進化の過程で必要となった人間の本能のなせる技なのだ、と理解します。

そして、誰もが陥りがちな思い込みを10個の本能として整理し、このドラマチックさを求める本能に振り回されないようにしよう!と警報を鳴らしてくれているのがこの本です。ちなみに、人間がドラマを求める生物だという見方は、先日紹介した新インナーゲームでも著者(ガルウェイ氏)が言っていました。

全ての思い込みについてデータで反証してくれ、また著者自身もその思い込みに足をすくわれがちであるという私たちと同じ立場で説明してくれるので、読者も抵抗感なく自分ごととして読み進めることができます。毒舌とユーモアも効いてます。

 

わたしたちの「勘違い」を引き起こす10の本能

詳しくは、本書を読んで頂きたいですが、自分の備忘も兼ね、これらの思い込みとそれに振り回されないためのファクトフルネスを上げておきます。

1.分断本能:「世界は分断されている」という思い込み

分断本能とは、「さまざまな物事や人々を2つのグループに分け」「その2つのグループのあいだには、決して埋まることのない溝があるはずだと思い込む」こと(p.32)。

「先進国」と「途上国」という表現が私は嫌いですが、このような分け方がひとつの例です。自分が「先進国」にいると思った途端、「自分たち」は「あちら」の人たちよりも優れていて、「あちら」の人たちがやることは遅れていると思ってしまう。あるいは、「あちら」の人たちを弱い存在と見てしまう。「途上国」の躍進に驚愕する、あるいは受け入れられない。経済レベル・生活レベルで言えば、数世代前の日本と変わりません。我々が通って来た道です。そして、各地には優劣などで評価できない文化や知恵があります。知識レベルで測るなら、「先進国」にだって勉強したがらない人はいます。

ファクトフルネスとは・・・話の中の「分断」を示す言葉に気づくこと。

分断本能を抑えるには、大半の人がどこにいるか探すこと。

  • 「平均の比較」に注意しよう。
  • 「極端な数字の比較」に注意しよう。
  • 「上からの景色」であることを思い出そう。(P.59-60、章のまとめのページより。適宜中略、以下同じ。)

 

2.ネガティブ本能:「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

確かに最貧国はまだ存在する。紛争も起きている。殺人事件も起きている。憂慮すべき環境破壊も起きている。

けれども、世界の寿命は確実に伸びている。乳幼児死亡率も目覚しく低下している。「世界はどんどん悪くなっている」というのは、著者によれば、「とんでもない勘違い」(p.63)。

まだ解決すべき問題はあるけれど、享受している素晴らしいこともたくさんあります。この本を読めば、現代に生命を受けたことにきっと感謝するはずです。

ファクトフルネスとは・・・ネガティブなニュースに気づくこと。

ネガティブ本能を抑えるには、「悪いニュースの方が広まりやすい」ことに気づくこと。

  • 「悪い」と「良くなっている」は両立する。
  • 良い出来事はニュースになりにくい。
  • ゆっくりとした進歩はニュースになりにくい。
  • 悪いニュースが増えても、悪い出来事が増えたとは限らない。
  • 美化された過去に気をつけよう。(p.94-95)

 

3.直線本能:「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み

直線本能とは、物ごとが「ひたすら」増え続ける、減り続ける、という思い込み。

グラフの形は右肩上がりと右肩下がりの2種類ではありません。

この章では、変化についてのさまざまなグラフの形が紹介されているとともに、いずれ人口は横ばいになる理由について説明されていて、とても興味深いです。

ファクトフルネスとは・・・「グラフはまっすぐになるだろう」という思い込みに気づくこと。

直線本能を抑えるには、グラフにはさまざまな形があることを知っておくこと。

  • なんでもかんでも、直線のグラフを当てはめないようにしよう。(p.127)

 

4.恐怖本能:危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み

この本能を煽るのは、メディアやセールスの常套手段。恐怖に包まれると判断力が鈍るので、なおのことセールスにはもってこいです。(この本能に限りませんが)

実際の「危険」と「恐怖」は違います(p.158)。

ハンセン病患者の強制隔離政策や差別などは、実際の「危険」ではなく、政府だけではなく国民全般の「恐怖」が煽られた結果だろうと思います。

逆に戦時中の日本などでは、本当の「危険」を知らされず、一方で、降伏した時の「恐怖」を煽り、多くの命が失われたのではないかと思います。

ファクトフルネスとは・・・「恐ろしいものには、自然と目がいってしまう」ことに気づくこと。

恐怖本能を抑えるには、リスクを正しく計算すること。

  • 世界は恐ろしいと思う前に、現実を見よう。
  • リスクは、「危険度」と「頻度」、言い換えると「質」と「量」の掛け算で決まる。
  • 行動する前に落ち着こう。(p.159-160)

 

5.過大視本能:「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み

2016年、世界では420万人の赤ちゃんが亡くなった。

2017年、日本では、21,321人が自殺した。

2017年、日本の配偶者からのDV被害相談件数は、8,421件

2017年、日本では、12,812件のクマ出没が確認された。

2015年、中国の二酸化炭素排出量は93億トン。日本は11億トン。

昨年、あなたの身近なところで、3人が交通事故の被害にあった。

何を感じるでしょうか。何に手を打つべきと思うでしょうか。

過大視本能は、「数字をひとつだけみて、「この数字はなんて大きいんだ」とか「なんて小さいんだ」と勘違いしてしまうこと。そして、ひとつの実例を重要視してしまうこと」(p.167)。

その勘違いは、今最も急いで手を打つべき課題を取り違えるという事態を招きます。

ファクトフルネスとは・・・ただひとつの数字が、とても重要であるかのように勘違いしてしまうことに気づくこと。

過大視本能を抑えるには、比較したり、割り算をしたりするといい。

  • 比較しよう。ひとつしかない数字は間違いのもと。必ず疑ってかかるべきだ。
  • 80・20ルールを使おう。項目が並んでいたら、まずは最も大きな項目だけに注目しよう。
  • 割り算をしよう。国や地域を比較するときは、「ひとりあたり」に注目しよう。(p.185-186)

 

6.パターン化本能:「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み

「異文化理解力」などで解説されているように、文化による特性は、確かにあります。

けれども、それは平均的にしてみれば、という話。テレビのXX国特集などをとってみて、「XX人は・・・」と分類し始めてしまうと、現実を見落としてしまいます。

ファクトフルネスとは・・・ひとつの集団のパターンを根拠に物事が説明されていたら、それに気づくこと。

パターン化本能を抑えるには、分類を疑うといい。

  • 同じ集団の中にある違いを探そう。
  • 違う集団の間の共通項を探そう。
  • 違う集団のあいだの違いも探そう。
  • 「過半数」に気をつけよう。
  • 強烈なイメージに注意しよう。
  • 自分以外はアホだと決めつけないようにしよう。(p.213-214) 

 

7.宿命本能:「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

宿命本能とは、「持って生まれた宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まるという思い込み」「物事がいまのままであり続けるのには、どうにもならない理由があるからで、昔からそうだし、これからも永遠にそのままだ、と。」(p.217)。

物事は、変化します。人も変わります。

日本を見るだけでもそれは明らかです。こんなに男性が育児参加して、一般の女性が仕事も家庭も両立するのが普通となる状況など、30年前の日本で想像できたでしょうか。

数年前に北京に行った時もこれを感じました。10年ぶりくらいでしたが、人も街もとってもきれいでおしゃれになっていて、地下鉄でも人はちゃんと列に並んでいました。

こういう変化を起こしていける人たちが最もビジョナリー。そうでなくても、この変化の流れを認識して受け入れられるか、頑なに認めないのかによって、人生も大きく変わると思います。実は変わらないと考えている方がラクで、変化についていくのは不断の努力がいるのですよね。

ファクトフルネスとは・・・いろいろなもの(人も、国も、宗教も、文化も)が変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだと気づくこと。

宿命本能を抑えるには、ゆっくりとした変化でも、変わっているということを意識するといい。

  • 小さな進歩を追いかけよう。
  • 知識をアップデートしよう。
  • おじいさんやおばあさんに話を聞こう。価値観がどれほど変わるかを改めて確認したかったら、自分のおじいさんやおばあさんの価値観がいまの自分たちとどんなに違っているかを考えるといい。
  • 文化が変わった例を集めよう。(p.236-237)

 

8.単純化本能:「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

単純化本能とは「世の中のさまざまな問題にひとつの原因とひとつの解答を当てはめてしまう傾向」(p.240)。

最近の日本で感じるひとつの例は、残業問題に関してでしょうか。

確かに長時間労働は過労死の原因のひとつですが、だからといって毎月X時間以上は働いてはダメだ、というのも極端すぎる対策と思います。誰にだって、頑張りたいとき、勉強したいときがありますし、それが大きな成長の鍵になったりします。日本が手本としがちな西洋諸国でも、エリートたちはものすごく働いています。例えば心理的サポートや、断れる環境、本人のコントロール感、それを可能にするコミュニケーション力などがあれば、ときにはトコトン働いてもそれだけで過労死に至るとは思えません。アジアを中心に元気な若者が続々と誕生しているこの時代、日本人はたくましく生きていけるのだろうかと心配になります。

ファクトフルネスとは・・・ひとつの視点だけでは世界を理解できないと知ること。

単純化本能を抑えるには、なんでもトンカチで叩くのではなく、さまざまな道具の入った工具箱を準備したほうがいい。

  • 自分の考え方を検証しよう。あなたが肩入れしている考え方が正しいことを示す例ばかりを集めてはいけない。
  • 知ったかぶりはやめよう。自分の専門分野以外のことを知った気にならないほうがいい。
  • めったやたらとトンカチを振り回すのはやめよう。ひとつの道具がすべてに使えるわけではない。
  • 数字は大切だが、数字だけに頼ってはいけない。
  • 単純なものの見方と単純な答えには警戒しよう。(p.259-260)

 

9.犯人捜し本能:「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み

犯人捜し本能とは、「なにか悪いことが起きたとき、単純明快な理由を見つけたくなる傾向」( p.264)

この本能の無意味さは、私も声を大にして言いたいところ。以前にコンプライアンスの仕事をしていたとき、問題が起きるとすぐにそのときの担当者やその上司のせいにしようとする人々に辟易した経験を思い出します。

政治家を糾弾して引き摺り下ろそうとするメディアや野党も、何百時間もそれに費やして、それでいったいどうしたいのか・・・?エライ人の首を挿げ替えても、それだけで世の中は変わりません。

「誰かを責めることに気持ちが向くと、学びが止まる。一発食らわす相手が見つかったら、そのほかの理由を見つけようとしなくなるからだ。そうなると、問題解決から遠のいてしまったり、また同じ失敗をしでかしたりすることになる。誰かが悪いと責めることで、複雑な真実から目をそらし、正しいことに力を注げなくなってしまう。」(p.265)

「犯人を捜すよりシステムを見直したほうがいい」(p.278)。激しく同意。

ファクトフルネスとは・・・誰かがみせしめとばかりに責められていたら、それに気づくこと。

犯人捜し本能を抑えるためには、誰かに責任を求める癖を断ち切ると言い。

  • 犯人ではなく、原因を探そう。
  • ヒーローではなく、社会機能させている仕組みに目を向けよう。(p.282-283)

 

10.焦り本能:「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

 著者は、「焦り本能だけは特に注意したほうがいい」と言います。

なぜなら、「ドラマチックすぎる世界が頭の中に広がると、かならず危機感やプレッシャー」を感じてしまい、「「いましかない」という焦りは(中略)「なんでもいいからとにかく変えなくては。分析は後回し。行動あるのみ」と感じたり、逆に「自分にできることはない。あきらめよう」という気持ちになる。どちらの場合も、考えることをやめ、本能に負け、愚かな判断をしてしまう」から。(p.301)

ファクトフルネスとは・・・「いますぐに決めなければならない」と感じたら、自分の焦りに気づくこと。

焦り本能を抑えるには、小さな一歩を重ねるといい。

  • 深呼吸しよう。
  • データにこだわろう。
  • 占い師に気をつけよう。予測には幅があることを心に留め、決して最高のシナリオと最悪のシナリオだけではないことを覚えておこう。
  • 過激な対策に注意しよう。(p.307-308)

  

ファクトフルネスを実践しよう

本書は、日頃私自身が思っていること・感じていることを素晴らしく言葉にしてくれていて、炎上も覚悟で言い切ってくれていて、しかもデータで裏付けてくれていて、読みながらとても興奮しました。

心臓がバクバクして、文字が目に入ってこなくなるほど。

同時に、反射的に発動してしまう本能にも気づきました。私の場合は特に、恐怖本能、過大視本能、焦り本能あたりが要注意です。

人間は、見たいものしか見ないし、聞きたいことしか聞かないもの。

本書では「関心フィルター」(p.133)と表現していますが、膨大に情報が溢れる中、私たちは自分の本能の欲する情報だけを取捨選択しています。

もしかしたら、問題は何もないところに、あれが問題、これが問題と騒ぎ立てて、問題を作り出しているのは、私たち自身なのかもしれないのです。

 

ファクトフルネスを実践することは、冷静さと忍耐を要します。

結局、上記の本能に従っているほうがラクなのです。

 

そんな本能に流されて現実を見ようとしない私たちを、「分断本能」で切り捨てることもなく、どうせ彼らにはわかるまいと「宿命本能」に陥ることもなく、きっと皆もわかる日がくる、皆の認識が変わる日もくる、とポジティブにビジョンを示し続けてくれた、ハンスの素晴らしいリーダーシップには、ただただ感謝と尊敬の念が湧くばかりです。

愛と勇気、情熱とユーモアに溢れ、好奇心と謙虚さを持って、生きることを心から喜び楽しんでいた人。

冒頭、「最後の闘い」と書いていましたが、ハンスは本の原稿を手に、2017年2月に他界しています。18年に亘り共に活動してきた息子夫婦が最後は出版まで完遂しました。ハンスが最後に出版社に残した言葉は、

「こんな本にしたいと狙っていた通りの中身になった。わたしたちが一緒にやってきたことがとうとう本になったんだ。読者のみんなが楽しんで世界を知る助けになると思う。」

 

どこにいっても情報に溢れている今の時代。

誰でも発信できる時代。

政府も企業もNPOもNGOも個人も、どうしたら人の注目を集められるか、どうしたら人や資金を集められるかに奔走している今。言葉を選ばずに言えば、上記の本能を敢えて刺激してくる今。

アメリカやイギリスをはじめ、どの世界を見ても感情論に流されがちな風潮な昨今。

本書が教えてくれていることは、本当に大切なことだと思います。

 

残してくださった知恵を使って、謙虚に、好奇心旺盛に、事実に基づいて世界を見ていきたいものです。

本当に必要なところに私たちの知恵とエネルギーを使うためにも。

 

以下はご参考。

ハンスのプレゼンはTEDでも大人気です。動画でこのお人柄を理解して本を読むとますます面白いと思います。

www.ted.com

 

名物バブルチャートは、著者たちが設立したギャップマインダー財団のHPでも見ることができます。

www.gapminder.org

それから、多くのメディアや活動家が上記の本能を刺激してくる一方、「いいニュース」だけを集めているウェブサイトがあります。ネガティブニュースで暗い気分になったら、リフレッシュして、世界の見方をニュートラルに戻しましょう。

www.goodnewsnetwork.org

 

ファクトフルネスが、マインドフルネスと同じくらい世の中に浸透することを願って。 

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think

Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think

 
Summary of Factfulness By Hans Rosling, Anna Rosling Roennlund and Ola Rosling: Ten Reasons We're Wrong About the World--and Why Things Are Better Than You Think
 

関係しそうな本。私が読みたいだけかも。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

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