ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

ジェーン・バーキンの言葉

大好きな山口路子さんの「読むことで美しくなる本」シリーズ。

ジェーン・バーキンの言葉」(山口路子 著、だいわ文庫、2018年3月初版)

 

ジェーン・バーキンの言葉 (だいわ文庫) (だいわ文庫 D 327-4)

 

女優、歌手、モデル、と多才なジェーン・バーキン。

正直なところ、「エルメスのバーキンの生みの親」ということ以外、あまり詳しいことは知らずに読みました。

このシリーズの好きなところは、本をきっかけにそういう人たちをもっと知ってみたいと思えるようになるところです。

 

もっともパリジャンらしいイギリス人女性

不滅のファッションアイコン。

映画も歌もフランス語だし、フランス人だと思っていたら、イギリス人なのだというのは本書で知りました。

少しネットでも調べてみたら、いつまでも英語訛りが取れず(あえて取らず?)、それも彼女の魅力になっていたのだとか。2年前、76歳で亡くなった時のエピソードが彼女が、どれだけパリで愛されていたかを物語っています。

フランスの多くの著名人が追悼のメッセージが送っているが、パリのイダルゴ市長は、「もっともパリジャンらしいイギリス人女性」が我々のもとを去ったと述べ、彼女の歌、笑い声、そして「比類なきアクセント」を決して忘れることはないとした。マクロン大統領は、バーキンは自由の化身であり、「私たちの言語で最も美しい言葉を歌った」彼女は、フランスの象徴だったとしている。(出典:https://www.pen-online.jp/article/013843.html

 

変容しながら生きる

ロンドンからパリに出たことが象徴するように、

自分の感覚や違和感を大切にして、自分が輝ける場所に、自由を求めて飛び出し、常に変わり続ける人。

仕事も、パートナーシップも同じ。

常に今を生き続けるその生き方こそが彼女の魅力であることを改めて知りました。

 

 ジェーンの生き方のキーワードのひとつに「変容」があります。
「変化」が、時の流れとともに自然に起こるものだとしたら、「変容」は、その人自身のなかに、「気づき」とか「違和感」が生まれて、そのことによってその人自身が変わる、その人の内面が変わる、そんなふうに考えてよいと思います。
 とはいっても、人はひとりで生きているわけではないので、他者とのかかわり、他者との間に生じる摩擦によって変容します。
 世の中には変容を重ねながら生きてゆく人と、そうでない人がいるように思います。
 どちらが良い悪いという問題ではないのですが、ジェーン・バーキンはまちがいなく、人とのかかわりのなかで、しなやかに変容してゆく人です。
 そして彼女は、内的な変化に合わせて、外見、つまりファッションスタイル、メイク、ヘアスタイルなどを変えてゆきます。内面に合わせて意識的に外見を変えてゆくのです。
 現在の彼女の美しさが教えてくれることのひとつ、それは、「変容しながら生きる」ということの素敵さです。(p.13-14)

 

そんな彼女を象徴するような言葉。

2人目のパートナーにして運命の男・ゲンスブールの元で魅力を放ってきたところから、3人目のパートナー、ジャック・ドワイヨン監督による新たな作風へと転換した時のことについて。

「私はそれまでの自分の魅力を捨てるという危険を冒したの」(p.103)

 

信頼できる周囲の人たちからの助言を受け入れて、その変容を起こしていくその姿勢には、「素直ってやっぱり最強」と思います。

 ジェーンは、女優への夢と不安を映画監督であるキャロルに打ち明けました。彼はジェーンに言いました。
「大切なことは、カメラが君に恋するかどうかだ。映画というのは、要するに、カメラと君の恋愛関係なんだ」
 そして舞台女優ではなく映画女優になることをジェーンに勧めました。従弟のひと言で、ジェーンは本格的に映画女優を目指します。ここでも周囲のアドヴァイスを素直に受け取るというジェーンの「才能」が見えます。(p.93)

 このころジェーンに会ったあるプロデューサーは、ジェーンに、自然体そのものを売りにするようアドヴァイスしました。
「きみは演劇学校には行かないほうがいい。行ったらきみの魅力が損なわれてしまう。きみには失ってはならない、脆さがあるんだ」
 このときもまたジェーンはこのアドヴァイスをそのまま受け取ります。そして、自然体の魅力で勝負するのです。(p.95)

 

美と女性らしさ

異性にも同性にも好かれる人って素敵だなと思います。

ジェーン・バーキンはその最たる例なのかもしれません。

その秘訣も垣間見ることができる本です。

 シンプル、ナチュラルと「女であること」は対極にあるのではなく、むしろ共存していて、それが美につながる。
 女であることを露骨に表現するのではなく、自分だけのひそやかなこだわりを持ち続けているからこそ、ナチュラルな外見なのに、ジェーンにはぞくりとするほどの色気があるのでしょう。(p.39)

「笑うと十歳若返るの、ほんとうよ。だから笑いをばかにしてはいけないわ」
 たとえば、オードリー・ヘップバーンも「笑うこと」について、まったく同じことを言っています。
 美しく年齢を重ねた人、重ねている人たちの言葉には、きっと真実があります。(p.47)

「好きな言葉は"Tomorrow is another day"。うまくいかないときは自分にそう強く言い聞かせないといけないの。次の日がもっと悪くなることもあるけれど、でもいいのよ。自分にこの言葉を言い聞かせることで、なんとか夜を乗り越えるの」(p.49)

 

美と女性らしさ

山口路子さんのシリーズの好きなところは、取り上げる人たちの弱い部分も書いてくださるところ。

その人たちの人間らしい部分。

ジェーン・バーキンのそれは、愛されるかどうかという不安、または何かへの欠乏感。

似たようなものは、「オードリー・ヘップバーンの言葉 」を読んでいた時にも感じました。

こんなに美しい人でもそうなのか、と毎度驚いてしまいます。

 

「穏やかね。この子はラッキーね。こうやって触ってもらって、彼のありままの姿を愛してくれる人がいるなんて。これ以上何を望むというのかしら。誰だって誰かにこうやって触ってほしいのよ。そして自分が抱えている病を理解してくれて、辛抱強く待っていてほしいの」。

このジェーンの言葉は、脳の病気を患っているパンダが、獣医師に身体を撫でてもらって、あたたかなまなざしを注いでもらっている様子を見て言ったものです。長い間、重い病を患っているジェーンの、心の叫びが聞こえてくるようです。ありのままの姿を愛されたい。優しく触れてほしい。自分の病を理解してほしい。見守っていてほしい......。パートナーがいない寂しさも、この言葉の内側に秘められていることでしょう。
 誰でもいつでもパートナーがいるわけではないのです。ジェーンも同じです。
 七十を超えたジェーンは、あきらめつつも、それでも、願望を抱いていて、けれど、それが満たされなくても、受け入れているのでしょう。それも人生のひとつのシーズンとして。(p.177)

生涯を通して、ジェーンを支配する感情。自分は愛されるに値する存在であるか、という不安。「何かを実現させてこそ愛される、そのままの自分では愛されない」という不安。そのため、彼女は必死に「何か」をなそうとします。(p.125)

 

寂しさも、人を美しくする何か、なのかもしれません。

一つ間違い無く言えるのは、寂しさを感じる心があるから、人は愛情深くなれるということ。

東日本大震災直後、多くの外国人が、原発事故の恐怖から続々と日本を離れていく中、日本にかけつけた彼女の行動にもそれは現れていましたし、それ以前からずっと、世界各地でたくさんの愛を届けていました。

「まだまだ全然やれてないって思う。地球はあらゆる問題をかかえている。もっとヒューマンで、もっと博愛に満ちた世界になるべきだと思うの」(p.167)

 

エルメスの「バーキン」は、今や入手困難な超高級バッグで、ステータスの象徴のように買う人も少なくないと思いますが、

その生みの親となった人が、こんなにも素朴で、自分が大切にすることのためには汚れることも危険も厭わない人だというのは知りませんでした。

バーキンを持つことが経済力の象徴ではなく、博愛や社会貢献を体現していることの象徴のようになっていったら、世界は、彼女が願っていた方向に少し近づくのではないか、などと思いました。

 

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