ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

自分のための人生を生きているか〜「勝ち負け」で考えない心理学

母から回ってきた本。

加藤諦三(かとう・たいぞう)さんの本は初めて読みました。

ニッポン放送の最長寿番組「テレフォン人生相談」に、1972年から現在まで、つまり半世紀以上、レギュラーパーソナリティとして、お悩み相談に応じている方。

自分のための人生を生きているか~「勝ち負け」で考えない心理学」(加藤諦三 著、大和書房、2023年5月初版)

自分のための人生を生きているか~「勝ち負け」で考えない心理学

 

副題の『「勝ち負け」で考えない』というところが響きます。

中身は、もうひたすら、「自分のために生きているのか??」と繰り返し繰り返し、問い続けてくる内容。

1節が1〜3ページくらいで、話が続いているわけではないので、パラパラとめくりながら刺さるところを読んでいくという読み方も、ありかもしれません。

 

私としては、加藤さんのバックグラウンドを書いているところがとても興味深かったです(「若き日の苦い思い出」p.134-139)。

とても厳しいご家庭で育ったようで、そういうふうに育てられると、人はこんなふうに(この著者のように)苦しむことになるのだ、ということがとてもよくわかります。

家庭は人が属する最小のシステムで、家に入れば外から遮断されているので、何が起きているのか周りがわからないだけではなく、本人たち自身もわからない、という怖さがあります。

著者ご自身は、もがきながら、心理的に父から自律することで真の大人になり、自由を得ていった方。今自由を得ていない人たちに対して、それでいいのか?脱する道があるぞ、と訴えかけているのが印象的な1冊です。

 

以下は私の備忘録。

人が最善を選べるのは競争がないからである。
競争していれば、相手に勝つことが優先してしまう。
「蟹が自分の甲羅の大きさに合わせて穴を掘る」のは、他の蟹とどちらが大きな穴を掘れるか競争していないからである。(p.36)

 

 あることをうまく成し遂げるということと、相手よりよく成し遂げるということはまったく違う。「相手より良くなりたいということは、何かをうまくしたいということとまったく違う。」
 相手より良くなりたいという願望は、自己不適格感の償いであるとアルフィ・コーンは述べている。つまり相手より優越したいという願望は劣等感なのである。
 劣等感が競争を刺激する。そして「競争に勝ちたい」という劣等感がストレスとなる。
 劣等感は、人を最善ではなく、最高を目指すようにしてしまう。
 最高であることを証明することで、自分の価値を証明しようとしているのである。
 最高でなければ、自分には価値がないということが白日のもとにさらされると、一人で勝手に思い込んでいる。負けることは自分の劣等性を証明するものと、間違って一人で勝手に思い込んでいる。(p.38)

 

幸せになる秘訣は自己蔑視しないことである。決して経済的に豊かになることではない。(p.41)

自分で自分を軽蔑してしまうから、他人と自分を比較してしまうので、比較するから劣等感に悩まされるのではないということである。(p.78-79)

 

劣等感の深刻な人は、「自分だけが排他的に賞賛されたい」。それは神経症的野心である。(p.43)

 

 神経症的自尊心が傷つき、他人に優越することで心理的安定を得ようとしている人がいる。社会的成功で他人を見返してやりたいと心の底で思っている。心の姿勢が復讐的になっている。心の底に敵意を抑圧している。
 それが夫であるとする。妻は別に心の底に敵意を抑圧していないとする。
 そのような夫に向かって妻が「あの人、羨ましいわね」といったとする。その一言は夫の胸をぐさりと刺す。
 しかし他人に優越することで心理的安定を得ようとしていない妻のいう「羨ましいわね」はそんな怨念の言葉ではない。彼女は「羨ましい」とだけ言っている。「羨ましい」には「悔しい」が含まれていない。
 いわんや、「あの人が羨ましい」ということは、「私たちは惨めだ」ということを含んでいないし、「私たちの生活には価値がない、あなたには価値がない」ということを含んでいない。
 しかし夫にとってその言葉は、「あなたより彼らの方が価値がある」という意味を含んでしまう。そこでその言葉で傷ついてしまう。(p.48-49)

 

 劣等感は「今、あなたは愚かな生き方をしていますよ」というメッセージである。
 劣等感と劣等であることは何の関係もない。劣等感はあくまでも所属感の欠如である。(p.108)

 

優越感を持った子どもは絶えず自分が実際以上に見えることを望む。(p.55)

 

自分が自分自身を閉じ込めてしまうことが現実逃避である。(p.56)

 

 比較されて成長した人は、人が褒められると、自分の価値が下がったように感じて、不愉快になる。だから人を認めない。人をけなす。
 人を認めることは、自分の価値剥奪につながると一人で勝手に思い込んでいる。
 人が自分以外の人を褒めることも自分の価値剥奪に感じられる。(p.58)

 

自分は自分、他人は他人ということが感じられる人が心理的に大人ということである。(p.62)

 

 最低の父親は、子どもに感謝を強要する親である。(p.65)

 

体重にセット・ポイントというのがある。リチャード・E・ニスベットが言い出したものである。その人に最も適した体重である。(中略)
セット・ポイントより痩せても体に悪いし、セット・ポイントより太ってもよくない。
同じように、人にはそれぞれ自分が生きていて最も快調である自分というのがある。つまり、体のことばかりではなく心理状態も含めて、人にはその人のセット・ポイントというのがある。(p.97)

 

シーベリーは、悩んでいる人には共通性があるという。
「私はそういう人間ではありません。(I am not like that.)」ということを言えない人である。(p.101)

 

「人にどう思われているか」を過剰に気にする人は、自分の弱点を人に見破られないかと気にしているのである。
「人にどう思われているか」を過剰に気にする人には「こうは思われたくない」というものがある。(p.103)

 

意志のある人は、相手の話を聞くが、迎合しない。
意志のない人は、相手の話を聞かないで、迎合する。(p.113)

 

人は無理して親切をすると、相手を嫌いになる。したくないことをしたのだから面白くない。しかし嫌いという感情を直接的に表現できない。そこで憂鬱になる。
 本当に「相手のために」という相手への愛情から親切をすれば、ますます相手が好きになる。
 つまり自分がした行為が、本当の親切であるか、それとも自己執着的親切であるかは、その後のその人の気持ちを見ればわかる。(p.117)

 

 うつ病になったその人はもともと猫であった。それなのに周囲から「犬」であることを期待され、「犬」として扱われた。すると大人になると、自分を犬として扱う人とつきあう方が納得がいくようになる。
 もともとが猫なのに犬の真似をして、なんとか犬の役割を果たしているのだから、それはすごいことなのである。とてもつもなく優秀な猫である。これが非生産的いい人である。
 しかし、もともとは猫なのだからどんなに頑張っても「弱い犬」である。その猫は苦労して頑張って「弱い犬」になった。
 非生産的いい人というのは、頑張っているのだけれども自分の潜在的能力を発揮して生きていない。つまり非生産的いい人は猫なのに、努力して「自分は駄目な犬」と思い込んでいる人たちなのである。(p.118-119)

 

自由そのものは決して目的ではない。それを誤解するから次のようになる。
「吾人は自由を欲して自由を得た。自由を得た結果不自由を感じて困っている。」
 自由とは手段であって、われわれは自由を得たと同時に「自己」も得なければならなかった。自由を得たとは、のびのびと天真爛漫に生きる可能性を得たということで、天真爛漫な生命そのものを得たということではない。(p.165-166)


 自由のもとに栄えるか、滅びるか?それこそまさに人間の勝手である。(中略)
真の自由の意義は、単に何をやってもいいということではなく、やり甲斐のあることをやるということである。復讐的勝利を目指すことは自由ではない。自分自身を失うことである。(中略)
そして自由とは、もしやり甲斐のあることが目の前にないなら、やり甲斐のあることを探し求める自由である。(中略)
「探し求める自由」を忘れてはならない。(p.166-167)

 

自分がどんなに軽薄だといわれても、自分の真実に出会った人間というものは強い。人は真実にふれたときにはじめて強くなる。「強くなる」ということは、生きていくうえで必要なものが少なくなる、精神的に必要とするものが少なくなる。(p.179)

 

 自由とはお金と同じに手段なのである。お金をもったがために悪の道に走り破滅した人も多い。同じように現代人は自由を持て余して破滅しているのである。(p.201)

 

本当の意味での心の傷を回復するためには人とコミュニケーションできる人間になることである。
 復讐的勝利を目指して頑張ることではない。(p.227)

 

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