ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

心理的安全性の作り方 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える

Audibleで聴きました。

心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える」(石井遼介 著、2020年9月初版、日本能率協会マネジメントセンター)

 

心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える

 

体験も大事、知識も大事

職業としているコーチングでは、クライアントのお話を伺いながら、絡まり合う思考や感情を解きほぐしていき、本来の力を発揮できるようにお手伝いしていますが、コーチングだけで全てが解決するわけではありません。

最近、改めて大事だなと思っているのは、クライアントの方々も、自ら新しい考え方などの知識を得ていただくことです。

社会人経験が長い方や、保守的な文化の組織にお勤めだったりすると、リーダーシップスタイルについて、固定的な観念を持っていらっしゃる方も少なくありません。

また、経験が浅い方は単純にリーダーシップについての知識がないということもあります。

セッション中にそれらをレクチャー的にお伝えすることもできますし、実際にそうする時もあるのですが、本やネットを読めば得られる情報を伝えるために限られたセッション時間を使うのはとてももったいないと感じています。

セッション中は、「体験する」ことや「自分自身に向き合う」ことなど、一人ではなかなかできないことこそに時間を使いたいと思っています。

そんなわけで、クライアントさんに「心理的安全性」という概念をご案内するための本はないかな、という観点で、よく売れているというこの本を読みました。Audibleだったので、正確には「聴きました」。

 

雰囲気を変えるにはまずは自分から

「心理的安全性とは何か?」ということとその有益性が分かりやすく書いてあれば十分と思っていたのですが、それ以上に深く書かれていました。

とてもいいなと思ったのは、職場に心理的安全性がないという問題があるのだとしたら、自分自身が外からそれを分析・解決するのではなく、「自分自身を問題の中に入れる」ことに誘っているところです。

組織開発系の話で陥りがちなのは、組織の文化や傾向についての分析・解説や、だからこういう組織改革をしましょうとどこか客観的な話になってしまったり、特定の人たちへの批判や、制度いじりに流れてしまうこと。読者は、そういう本を読んで勉強している最中ですから、自分自身について、よくわかってる人、できてる人、とうっかり思ってしまいがちです。

そうではなく、読者自身がまず自分の言動の影響に気づきましょうという誘いと、読み手にとって痛いところもしっかり突いているところは素晴らしいなと思いました。

 

自分自身が、現在の環境に影響を及ぼしている。

まずそのことを認める。

ゆえに、環境を変えるのだとしたら、まず変わるべきは自分。

そのためには、自分自身の言動や態度、その奥にある自分自身の心配事や怖れなどにも向き合うことが必要になります。

前半の1〜2章で、このことをとても上手に説明されているなと思いました。

また、第5章では、具体的に自分自身がどう行動を変えたらいいかというアイディアが書かれているので、実践にも役立つのではないかと思います。

中程の第3章・第4章は行動分析の話になっているので、行動分析が理解しやすい方はこれを使ってみると良いだろうと思いますし、他の手法でもご自分が親しみやすいものがあれば、それを使っていくことで良いと思います。コーチングもきっとお役にたつと思います。

私のコーチングでは、「わかるけどできない」とか、「これが大事と言われるけど、納得できない」とか、頭と身体が一致しないことや、何かひっかかりがあることなどをテーマとして持ってきていただけると、私もとてもやりがいがあります^^

 

心理的安全性を作るのは上司だけの仕事ではない

本書によると、心理的安全性がある職場は「学習する職場」と表現されていて、「ぬるい職場」「さむい職場」「きつい職場」と対比して解説されています。

「学習する職場」にある4因子

①話しやすい因子

②助け合い因子

③挑戦因子

④新規歓迎因子

 

そして、これらの前提にあるのが「心理的柔軟性」。

しなやかさ、リジリエンスと認識しながら聴きました。

心理的に安全な環境というのは、ただ居心地が良い場所、ではありません。

言いづらいことも言える環境であり、だからこそ、組織の健全性が保たれる。

ということは、自分も耳障りのよくないことを聞く可能性もあるわけで。

そんな時に、心理的に硬直していたら、自分がポキッと折れてしまいます。

なので、心理的柔軟性は、トップの人はもちろんのこと、チームメンバーひとりひとりも持っていてほしいものです。

心理的安全性がないという類の話になると、何かと上司に全責任があるような論調になりがちですが、本来は、チームメンバー全員が「心理的柔軟性」を持っていないと、上司一人の努力ではとても難しいものだと思います。

 

心理的柔軟性に必要な要素は以下3つ。

【心理的柔軟性に必要な要素】

①必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる

②大切なことへ向かい、変えられるものに取り組む

③それら変えられないものと変えられるものをマインドフルに見分ける

 

これらは言うは易し、行うは難し。

コーチングはこれを養うことをお手伝いしているなとも思います。

もちろん、私自身も、①〜③を日々鍛錬している途上です。きっと死ぬまで続く修行。

人生誰もが、成長の旅の途中。

 


ところで、今回、初めて、1冊丸ごとAudibleで聴き通す、というのをやってみました。

何かをしながら聴けて、音声も聞きやすく、とてもよかったです。おすすめ!

 

 

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