ANA機内誌「翼の王国」に2009年〜2014年に連載された「人との魚の不思議な関係」全67作品を収録した本。
「人と魚の不思議な関係」(ボルメランジェ・エチアン 著・画、小林朱美子 訳、文芸社、2022年8月初版)
エチアンさんは、INSEADの先輩・小林朱美子さん(この本の訳者)のご主人。
アルジェリア生まれ、パリ育ち、2004年から日本在住です。
そんなご縁もあって、先日、本書の出版記念パーティにお招きいただき、本書もそこで入手してきました。
それまでもクリスマスパーティなどでちょっとだけお目にかかったことはありましたが、こんな素敵な絵を描かれる方だということ、ANA機内誌で連載されていたということ、知りませんでした。
その若干の身内感は割り引いたとしても、
なんとも可愛らしい、大人が楽しめる、素敵な絵本です。
まず、とても愛らしい。
それと同時に、よくよく観察し、その生態を理解していなければ描けないほどの正確・精緻な絵でもあります。
魚愛好家の方には、その細やかさはたまらないのではないかと思います。
さかなクンともお引き合わせしてみたい気もします。既にお知り合いでしょうか。
一緒に掲載されている文章も、ユーモアを交えながら、日本の文化やフランスの文化を面白く表現されていて、ほっこりします。
私は魚の学者ではないが魚が大好きで、人の心を和ませるために魚のユニークな特性について調べ、時に写実的にまた時にユーモアを交えて面白おかしく描く。(p.3 まえがき)
出版記念パーティで、「この本を読んで、リラックスしてほしい」と何度もおっしゃっていたのが印象的でした。
それは、エチアンさんが、幼少期からずっと魚を見て癒されてきたということでもあります。
魚に対する愛情が本全体から伝わってきます。
帯を書かれた「ソトコト」の元編集長・小黒一三さんの言葉を借りれば「こんなにサカナに恋をしているヒトを見たことがない」。
日本に来て私は人々をリラックスさせるために魚の絵を画きたかった。
魚の絵とストーリーを通じて私が幼い頃より魚を観察しながら得た歓びを分かち合いたかったからだ。
(中略)
魚を見るといつも気持ちがゆったりする。
この心休まる瞬間、すべてを忘れることができる。
この一瞬の休息の後で私たちはリフレッシュし、再び活動を始めたり思考を続けたりできる。(p.3 まえがき)
改めて絵を眺めてみると、海の世界、魚の世界は、実に多種多様な世界であることに気づかされます。
今、人間の世界で必要とされる「多様性」「他者との共生」について、学ぶことが沢山ある世界なのだなぁと思いました。
魚は魅惑的である。なぜなら彼らは私たちの住む地上世界とパラレルな、しかし人の住むことのできない「水中」という別世界に棲んでいるからである。(p.146、あとがき)
ありとあらゆる形、大きさ、色そして習性をもつ魚たちの生はバラエティーに溢れとても面白い。
しかし人間の生もまたいろいろで面白い。そうした魚と人との不思議な関係を描いてみた。(p.3 まえがき)
魚への愛情もある一方で、「食べても美味しい」というのも何度も出てくるので、そこもちょっと面白かったです。
「翼の王国」でこの連載のファンだった方、お魚が好きな方に加え、日頃の生活がハイスピードで少しペースダウンしてみたい方、ゆるみたい方、におすすめです。
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