読書録、ときどき、鑑賞録。
先日、蜷川実花さんの写真展「瞬く光の庭」@東京都庭園美術館(目黒)に行ってきました。
いい意味で予想を裏切られました。
蜷川実花さんといえば、これまでしっかり作品を見たことはないのですが、勝手に、かなり強烈な色彩と強烈な表現、という先入観を持っていました。
今回の展示「瞬く光の庭」は全くそういう感じではなく、自然な光が素晴らしく美しくとらえられていました。
ご自身でも、新しい作風だとおっしゃってます。
見入ってしまって、かなり長い時間滞在しました。
感想を一言で言えば・・・。
ものすごく、心に入ってくる、心が動かされる。
撮られているのは、ごく身近にある植物とそこにある自然の光たち。桜や藤棚などなど。
今までの人生の中で、一度は見たことがある、「美しい・・・!」と息をのんだことがある景色。
自分では保存できない、朧げな記憶にしか留めておけないその瞬間が、写真となって目の前に再現されている。
そんな感覚でした。
大きく引き伸ばされた写真の前にいると、自分がその空間に入りこんだかのよう。
色が自分に入ってくる。
最初の数枚では、「わー、きれい」くらいだったかもしれません。
ただ、圧倒的ボリューム(点数)の写真を見ていくと、次第に心が動き始めます。
こんなに引き込まれるのは何故なのだろう。
それはきっと、実花さんが、心が動いたその瞬間にシャッターを切っているからなんだろう、と想像しました。
何か ---今回で言えば「光」と「光彩色」---が、写真家の心を捉えた。その瞬間が表現されている感じがする。
最後に館内で見たインタビュー動画で、まさにそうお話されてたので、ああ、やっぱり、と思いました。
次元は相当違いますが、私自身も散歩していてスマホで写真を撮る時、あ!と思った瞬間に撮ったものと、何となくいい景色だなと思って撮るのでは、どこか、違いがあります。
また、最初に「あ!」と思って撮った1枚目と、念の為に撮った2枚目では、ほとんど同じ2枚なのに、やっぱり1枚目の方がよかったりします。
時々、友達からSNSに投稿した写真を褒められたりするのですが、それは自分の心が動いた瞬間に撮っているからなのかな、と思ったりしていました。
今回、実花さんの写真を見て感じたこととインタビューを聞いて、「あ、やっぱり、写真て、そうなんだ」と確信に変わった感じがあります。
その心が動いたときに、その美しさのままに撮れるのが、さすがプロ。どれも素晴らしかったです。
なお、今回の写真展は、コロナ禍の2021年〜2022年にかけて国内のみで撮影された写真と映像のインスタレーション。
この間に切ったシャッターは4万回とのこと。
「シャッターを切るのは心が動いた瞬間だけ」とのことなので、この1年余りの間に、4万回心が動いていたということになります。
アーティストならではの感受性。
ややもすれば生きづらくもなるこの時期に、写真を撮ることで、発散なのか、あるいは逆に心が落ち着くのか、いずれにしても、きっとご自分にとっても大事な時間だったのではないかな、と想像します。
コロナ前は日常に忙しすぎて、
コロナ禍では家の中の閉じこもりすぎて、
日々の生活の中にある美しいものに気づくをことを、私たちは忘れてしまいがちです。
日常はこんなにも美しい光に溢れている。
そんなことも改めて感じさせてもらえる展示会でした。
それにしても、写真ってて奥深いです。
絵と違って、「写真を撮る」という行為自体は、誰にでもできてしまう分余計に。
東京都庭園美術館での展示は、2022年9月4日まで。
お庭も素敵です。
おまけ ー インタビューを拝見して:
お父様(蜷川幸雄さん、2016年に80歳で亡くなられてます)にほんとによく似てらっしゃる。
この記事はこんな人が書いています。
館内は、一部撮影可。
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