ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

子どもの心のコーチング

私には子どもはいませんが、仕事を通じて、間接的に子育てに関わらせて頂いているな、と感じています。

お子さんをお持ちのクライアントさんは、男性であれ女性であれ、年齢・職業を問わず、ほぼ皆様、一度はお子さんとの関わり方をコーチング・セッションのテーマになさいますので。

なぜか実家にあったので最近読んだ本ですが、普段のセッションの中でクライアントさんが自ら気づかれていく大切なことがかなり鋭くズバズバ書いてあったので、そんなクライアントの方々のご参考になればと思い、こちらの読書録にも掲載しておきます。

子どもがすること・しないことについ口や手が出てしまう方、子どもを可愛がりすぎてしまう方などにおすすめです。

子どもの心のコーチング 一人で考え、一人でできる子の育て方 」(菅原裕子氏 著、2007年10月初版、PHP文庫)

 

子どもの心のコーチング 一人で考え、一人でできる子の育て方 (PHP文庫)

 

子育ては、親育て

親子関係も、人間関係の一つです。

そして、あらゆる人間関係の中で最も近く、最も愛があり、切ろうとしても切れるものではなく、ゆえに、思い通りにならないもどかしさ、歯痒さ、苛立ちなどを最も経験する人間関係ではないかと思います。

子どもは、生まれたその瞬間から生きていく術を学んでいくことになりますが、親御さんも、子どもを育てることは初めての体験。

第2子であっても、第3子であっても、この世に一人として同じ人間はいませんから、何人目であっても、常にそこに何かしらの新しい体験があるはずです。

生きている年数が長い分、つい「自分の方が知っている」という立場を取りたくなってしまいますが、実は、親御さんも、子どもを育てるとはどういうことか、親として生きるとはどういうことかについて、お子さんに育ててもらっている立場とも言えると思います。

よく言われる、「お子さんの1歳の誕生日は、母親・父親としての1歳の記念日」というのは、本当にその通りだなと思います。お子さんと同じ年数、一緒に学んでいるのですよね。

 

原因は相手ではない。原因は関わり方と、その根本にある視点。

子育ては親育てと思う理由はもう一つあります。

どのような人間関係においても、相手が自分の言うことを聞いてくれないときや、折り合えないとき、私たちはついこれを相手のせいにしてしまいます。

相手が聞く耳を持たないから、相手がこの大切さを理解しないから、相手が・・・。

こういうとき、本当は、見つめ直すべきは自分のことです。

相手の言動が気に触るのは、自分の中の何が刺激されるからなのだろう?

相手に口うるさく言ってしまうのは、相手のことをどのように見ているからなのだろう?

その一つ一つが、私たちが人間として一回りも二回りも成熟する機会です。

そして、自分自身が変容していくと、不思議なことに、相手も、相手との関係も変わっていきます。

なので、子育てに関して言えば、お子さんをしつけたりする以上に、親御さんご自身が人間として成長していく必要があります。

普通の人間関係であれば、この人と私は合わないんだわ、とバッサリ関係を切ることもできるところですが、それは潔いように見えて、自分の成熟の機会を一つ失っている可能性もあります(もちろん、自分の健康を犠牲にしてまで関わり続ける必要はないですが)。

幸か不幸か、親子はそういうわけにもいかない。子どもさんは、親御さんにとってこれ以上ないレッスンを運んできてくれる存在とも言えると思います。

 

お子さんとの関係において、非常によく遭遇するのはこんなスタンスです。

・お子さんのことを実はとても弱い存在として見ている。
・お子さんのことを実はできない子・間違いをしてしまう子だと見ている。
・自分と同じような学歴・職を得ることがお子さんの幸せにつながると考えている。
・自分と同じように成功し、自分がしてしまった失敗は回避すべきである。そのために親が導き教えてあげるべきであるし、親はそれができると信じている。
・子どもは親の言うことを聞くべきである。

 

上記について、それは当然でしょ、と思う方は、この本を一読される価値はあると思います。

それを正面から認められない方もいらっしゃるかもしれません。

以下、本書でズバリ言い抜いているところを抜粋してみましたので、お心当たりがあるかどうか、読んでみてください。

 

保護者から親へ、ヘルプからサポートへ

 人間の赤ちゃんは未熟な状態で生まれてきます。誕生から約三ヶ月は完全な依存状態にあります。(中略) 保育者(主に母親)は、この時期、全く無力な子供を完全に保護します。 自分で自分の面倒がみられない子どもの、すべての生理的欲求にこたえます。

 この時期の保護は、子どもの「できない」状態にもとづいての行為と言えるでしょう。(中略)(p.25)

 子どもの成長には目を見張るものがあります。何もできなかった子どもが、寝返り、おすわり、ハイハイと、自分で動けるようになってきます。(中略)

 子どもにできることが増えるにつれて、親の保護は「支配」へと姿を変えていきます。

 できることが増えることは、危険が増えることを意味します。親は、大切な愛する子どもを危険から守るために、子供に規制を加え支配しようとするのです。危険なものに触れないように、親は「ダメ」を連発するようになります。指示や命令、禁止語が日々増えていきます。(後略)(p.26)

 

 子どもの成長はめざましく、まもなく保護も支配も必要のない時期がきます。しかし、その成長に気づかない親は、それまでの延長で、変わらず子供の保護と支配を続けます。それは「かわいい子どもを守りたい」「きちんとしつけ、いい子に育てたい」、そして「自分もいい親でありたい」という、ごく当たり前の願望のあらわれです。

 ところが、実際はそれが子どもの自由を奪い、自ら伸びようとする芽を摘んでしまうのです。子供の「できる」を認めず、「できない」ままの存在として保護し続けることで、子どもの自立をさまたげてしまいます。

 保護と言う善意のもとに支配され、「できない子」として育てられた子は、傷つきながら大きくなります。なぜなら、親が「保護者」でいるかぎり、親から愛されるためには、子どもは「できない」存在でいるしかないからです。

 無力な子どもを守ろうとする親の母性愛は、そのままのかたちで維持されると、子どもを「できない」存在へと育ててしまう危険性をはらんでいるのです。

 子どもが日々成長するのにそって、親も日々成長し、対応の仕方を変えていくことが大切です。(p.28-29)

 子どもの生きる力を育てるためには、子どもの成長にしたがって、親は「保護者」から「親」へと成長しなければなりません。保護者は「できない」子どもを完全保護しました。そして親には違う役割が用意されています。

 親の役割は「できる」子どもに対する援助です。「できない」子であれば、親は手を出してやってあげる必要がありますが、「できる」子であれば、本人がやるのを見守ればいいのです。(p.29)

 ヘルプは「できない」人のために、その人にかわってやってあげること。保護者がするのはヘルプです。一方サポートは、人を「できる」存在ととらえて、そばで見守り、よりよくなるために必要なときには手を貸すこと。サポートこそが、まさに親の仕事なのです。(p.30)

 

 ヘルプの中で育った子どもは、自分でするべきさまざまな体験を親に先取りされています。このため、体験にもとづく学びが少なく、問題解決の経験が充分にないのです。

 問題を自分で解決する体験の少ない子どもにとって、この世はなんとも生きにくい世界となるでしょう。問題を解決できない子供にとっては、問題は逃げ出すしかない「障害」なのです。(p.33)

 

 子どもを「できない」存在ととらえ、ヘルプし、子どもの人生を支配したときは、親には長い間、子供の世話をしてあげるという「しなければならない」仕事があります。ところが、自分で「できる」ようになるサポートをし、子どもがどんどん 自分でいろいろなことをやり始めると、親はいずれ必要とされなくなります。

 子供の自立をサポートできる親は、親自身が自立していて、子供から必要とされなくなることを恐れない人です。子供の人生を支配し、そこに頼るのではなく、生きるべき自分の人生を持っている人です。(p.34-35) 

 サポートは、「ああしなさい」「こうしなさい」と、逐一子どものするべきことを支持することではありません。子どもが自分で学び、発見できるよう、親が子どもの邪魔をしないことです。子どもの人生を子どもにまかせていくことです。(p.36)

 

ヘルプは親の自己満足、子どもの人生を横取りする行為

第8項は、私も、子どもの世話を焼きすぎる親御さんたちに気づいて頂きたいことがズバリ書いてありました。一部を省略することで誤解を生じさせたくもないので、ここは丸ごと抜粋させて頂きます。

 ところで、なぜ親はヘルプをするのでしょう。

 生まれたばかりの子供にとって、生きるためにヘルプされることは重要です。同時に、その行為はヘルプする側にも大きな充実感を与えます。かわいい子どもの面倒をみて、守り、できることを精いっぱいやってあげるのですから。

 ここにヘルプする親にとっての落とし穴があります。赤ちゃんの世話は大変ですが、 そこには自分にしかできない、幼い命を守ると言う使命感が生まれます。子どもがヘルプを必要としなくなる時期が来ても、「この子のために」と使命感に燃え、守り、世話を押し、指示し、命令して、親としての仕事をしているという充実感を得ることができるのです。ヘルプし、子どもを支配することで、子どもの依存度を高め、親自身の存在の重要度を高めることができるのです。

 人に必要とされるのは、とても気持ちのいいものです。それが子どもの自由を奪っているなどとは思いもしません。気づいていたとしても、すべて「子どものため」であり、子どもの自立を邪魔しているという意識はないのです。

 ヘルプは一見、とても親切な行為に見えます。ところがそれは、時には、「できる人」人を「できない」人と捉え、「やってあげている」自分を救助者として高い位置において、「できない」相手に親切を押し売りする傲慢なあり方となるのです。

 人は本当にヘルプを必要とするときがあります。その行為が本人の能力をはるかに超えているとき、命や心が危険にさらされているとき。そんなとき、人はヘルプされなければなりません。

 それ以外は、ちょっと待ってまかせてあげれば、すべて自分でできるのです。

 子どもがしようとすることやしたいことを尊重せず、親がヘルプすることは、親がどんなに「子供のためを思って」やっていることであれ、子供のためではありません。それはヘルプしている親自身のためです。

 親はヘルプしてあげている自分が好きなのです。子どものために何かをやっているという感覚は、親が自分の責任をはたしているというニセの満足感にほかなりません。親自身の人生で得られない充実感を、子どもの面倒をみることで補おうとしているのです。

 ヘルプする親のヘルプの先にあるものは、子どもの幸せではありません。子どもが何を望んでいるかではなく、親が望んでいるものをかなえるためにヘルプをするのです。自分が望んでいるものを得るために、子どもに与えるのです。

 ヘルプする親は、子どもから、自分で考え、管理し、選択し、成し遂げる喜びを奪っていることにも気づいていません。 それらの喜びは子どもに属するべきものです。もし親が喜びを求めるなら、それは親自身の人生でつくらなければなりません。子どもの人生を利用してはならないのです。

 子どもに生きがいを求めることは、子どもの生き生き輝く人生を犠牲にして自分の充実感を得ることにほかなりません。そのとき親が愛しているのは、子どもではなく、親自身なのです。(p.37-39)

 

こういうことに気づいていくことは、とてもイタイ経験です。

その痛さに向き合うクライアントさんを、コーチとして、しっかり支えたいなと思います。

 

 
ちなみに、子どもがいない私が子育てに関するコーチングなんてできるのだろうか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

コーチという職業の面白いところは、自分には経験のないことであってもコーチングが成立することです。表面的に現れる悩みは親子関係、夫婦関係、恋愛、仕事などさまざまですが、その根本でやってきているレッスンはどなたも普遍的なものだからです。

例えば、子どもを「できる」存在として見るということは、コーアクティブ®︎・コーチングの礎の一つ「人はもともと創造力と才知に溢れ、欠けるところのない存在である」という人間観そのままです。これが腹落ちして実践されることで、親子関係が改善したという方はとても多いです。

また、同じ経験を持っていないからこそ、慮ることをせずに純粋な好奇心からクライアントさんに関わることができるという利点もあります。

とはいえ、現場でお子さんと向き合い続けることは、私が想像するよりきっと大変なことのはず。クライアントさんに大きな敬意を払いつつ、セッションを提供させて頂いています。

 

 

なお、全体的に共感できる本でしたが、「生きやすい生活習慣を身につけさせるには」という項は、この本にはなくてもいいのではないかなと思いました。

身につけて欲しい生活習慣が何なのかは、各家庭の考え方によって違うのではないかなとも思いますので。(あくまで例示となっていますが、読まれる方によっては少し苦しい感じもするかもしれません。)

 

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