ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本

先日、旅先の空港の本屋さんに立ち寄って出会った本です。

ちょうどHSP(Highly Sensitive Person、とても敏感な人)についてちゃんと知りたいなと思っていたところだったので、少し立ち読みして購入し、帰りの機内で読み切りました。

「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる  「繊細さん」の本

(武田友紀 氏著、飛鳥新社、2018年8月初版)

 

「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる  「繊細さん」の本

 

コーチという仕事柄、またワークショップなどをリードする立場柄、いろんな方のお話を伺う機会があり、そんな中で最近、「自分はHSPかもしれないと知って楽になった」というお話を数件、耳にしていました。

HSPの方の見ている世界はどんな感じなんだろう?

それを知りたいと思って読みました。

私自身は、どんなところでも、どんなに明るくても、どんなにうるさくても、何時間でも眠れる、という特技を持つくらいなので、かなり鈍感なんだろうと思いますが、そんな私にも得るところが多い実用書でした。

 

HSP(Highly Sensitive Person)とは

直訳は、とても繊細な人。とても敏感な人。

アメリカの心理学者エイレン・アーロン博士が提唱した概念で、同博士の研究で「生まれつき繊細な人」が5人に1人の割合で存在することがわかってきているそうです(p.7, p.17)。

本書で、著者は、このような方のことを「繊細さん」、HSPではない人(いわゆる一般の人)を「非・繊細さん」と表現しています。

 

繊細さんが陥りがちな「生きづらさ」

繊細さんは、感性豊かな方々ですが、他者と生活する人間社会の中では、時に生きづらさを感じてしまったりもします。

例えば、

「まわりの人が気にしていないことが、どうしても気になってしまう」

「冗談交じりのささいな一言なのに、受け流せずにグサッときてしまう」

「職場で機嫌が悪い人がいると、気になって仕事が手につかなくなる」

「家の外の自動販売機の音が気になる」

「相手の気持ちを考えすぎて、自分の意見が言えない」

「定時で帰れる簡単な仕事でさえぐったり疲れてしまう。自分にできる仕事はあるんだろうか」と考えてしまう。

「これからどうやって生きていったらいいのか」と考えてしまう。など。(p.5-6)

 

著者の方は、ご自身もHSPで、HSP専門のカウンセラーの方。

本書は、「繊細なカウンセラーによる、繊細さんのための、実際に有効だったノウハウを詰め込んだ実用書」であり、

「繊細でストレスを感じやすい人が、繊細な感性を大切にしたまま、ラクに生きる方法」が書かれた本です。(p.9, P.3)

全体的な印象は、繊細さんに向けて、繊細さんが受け取りやすい言葉で、とても優しく、とても易しく、丁寧に書かれている、ということ。

更に、実際の対処法が書いてあるところが、とてもいいなと思いました。

上記に当てはまるような方は、きっとこの本に救われると思います。

 

また、ご自分が「鈍感だ」と思われる方がこの本を読むと、

「なるほど、あの人(繊細さん)の中ではこういうことが起きてるのか〜!!」と他者理解が進むと思います。

 

リーダー職を務める方々には、多様なチームメンバーを理解する一助としても、おすすめです。

 

「鈍感力」が簡単に身につけられるなら、苦労してない

鈍感力という言葉がいつからか登場して以来、 

「気にしすぎじゃない?」

「鈍感力が大事!」

という助言が普通によくされていますが、

それができてりゃ苦労しないよ、ということだと思います。

繊細さんは、「まわりの人が気にしていないことが、どうしても気になってしまう」人たち。

そういう方々に、「あんまり気にしない方がいいよ」と助言するのは、

例えていうなら、頑張る方法がわからない人に頑張れ!と言っているようなもの。

「繊細さんに必要なのは、「気にしない」という言葉ではなく、気づいたことにどう対処したらいいのかという、具体的な対処法」(p.20)、という著者の言葉にはとても共感しました。

 

どんな感じ方でもいい、という世界になればいい 

 私自身は、「どんな場所でも、どんなにうるさくても、どんなに明るくても、何時間でも眠れる」という特技を持っているくらいなので、さほど繊細ではないのだろうと思っていましたが、この本を読む限り、けっこう自分にも「あるある」を思い当たりました。

コーチングを学んだり、受けたり、また海外で生活したりすることで、だいぶ、いい意味の鈍感力を身につけてきたんだな、とも自分を振り返りました。

 

みんな、どこかしら、繊細なところはきっとある。

なので、この本は、どんな方が読んでも得るところがあると思います。

 

繊細さんが生きづらさを感じるのがとてもわかる一方で、その逆のケースもよく見ます。

 

自分の言動がパワフルすぎて過去に誰かを傷つけてしまったことがある、というような方。

それがご自分の過去の傷になって、本来持っている力を抑圧して生きていらっしゃる方々も、沢山出会ってきました。

それもそれで、とってももったいない。

ご自身にとっても、社会にとっても、本来持っている力を発揮しないでいるなんて、とってももったいない。

 

本書で最後に触れている「繊細さんに共通する「5つの力」」は、繊細さん特有のものではなく、本来、全ての人にある力だと思います。

  • 感じる力
  • 考える力
  • 味わう力
  • 良心の力
  • 直感の力

ただその感じ方、考え方、味わい方、感じる良心や湧いてくる直感が、人によって違うだけ。

それが多様性。

自分自身の感じ方でいい。

 

自分の感じたところから、それぞれの持っているものを最大限表現して生きていく。

それこそが世界だし、それこそが美しくて面白いってことじゃないかと。

多分、著者の方も、同じ思いなのではないかと。

 

コーチとして、そんな生き方や表現することを応援したり、そんな多様かつ平和な世界をつくっていくことに一役買っていくことができれば嬉しいなと思います。

 

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