初めて読んだ時、「うーん、おもしろい」と唸りました。人間関係に関する本であり、最後に行き着くところは、その類の本で書いているところと変わらないのですが、その説明の流れがおもしろい。
スピリチュアルな本は苦手、科学的・論理的に説明してくれないと納得できない、というような方々にはとてもお勧めです。舞台がオフィスであることも、ビジネスパーソンにはとっつきやすいかと思います。しかも、コミュニケーションのスキルではなく、人生の全ての場面で有効な、もっと大事な根底にある物の見方・姿勢に訴えかけてきます。
物語は、ザグラム社にヘッドハントされてきて以来立派な業績を上げていると自負している主人公・トムが、上級管理職になるための面接試験で、副社長・バドから「君には問題がある」と言われて動転するところから始まります。読者は、トムとともにザグラム社という会社の幹部向けプログラムを経験し、その中で人間関係におけるパターンに気づきを得ていきます。
どうして思うように物事が進まないのか、どうしてあの人といつも言い争ってしまうのか、ということについて、相手と自分の行動を客観的に見て、そのときに生じている心の微妙な動きまでも細かく分析していきます。このプロセスの中で、どれほど沢山の自己欺瞞(自分で自分の心を欺くこと。自分の良心や本心に反しているのを知りながら、それを自分に対して無理に正当化すること)や思い込みに私たちがまみれているか、つまり「箱」の中に入ってしまっているかに気づくと思います。
バドの言葉を借りれば、
「我々が「人間関係の問題」と呼んでいる、一見まったくバラバラな症状、リーダーシップから動機付けまでのあらゆる問題を引き起こしているのは、たった一つの問題なんだ。それさえ知っていれば、人間関係の問題をかつてないほど効率的に解決することができる。こういった問題に取り組み、解決する明確な方法がちゃんと存在する。問題を一つ一つ叩いていくのではなく、一撃で敵を倒す方法がね。」
それはすなわち「箱」から出ること。
とはいえ、人間は簡単に「箱」に入ってしまう。どんな素晴らしい人でも入ってしまう。一旦出てもまた入ってしまう。まず大事なのは、箱に入ったとき、そのことに気づくこと。
(本書が勧めることには反してしまうかもしれませんが)肩をポンポンと叩いて「あなた、今、箱に入ってますよ!」とお互いに言い合える組織・社会であったら、世の中はもっとシンプルになっていくんじゃないかと思います。すべての方にお薦めですが、特に世の中のリーダー、リーダーとなって行く方々には是非読んで頂きたい1冊です。
続編はさらにお薦めです。
追記:ラグビー日本代表の五郎丸選手も、この本を「思い出す本・忘れない本」としてあげていらっしゃいました。(朝日新聞デジタルより)
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