ここみち読書録

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ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第5巻)

ハリー・ポッター シリーズ第5巻。

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(J.K.ローリング 著、松岡佑子 訳、静山社、2004年9月初版)

 

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団<新装版> 上

 

単行本で上巻661ページ、下巻701ページ。

読む前から、あまりの分厚さに「うっ」となりましたが、読んでいる最中も、正直、つらかったです。

望まぬ方向にばかり進む展開、理不尽な嫌がらせ、じれったさ、何も明かされないままの鬱々、重たいストーリー...。

これこそが作者の狙っているところだろうとも思うので、まんまとその技にかかってこの世界に没入しているわけですが。

 

この本は、イギリスで子どもたちのために書かれて、子どもたちの間でベストセラーになったのが最初だと認識していますが、読者を全く子ども扱いしていないことが、この第5巻でより一層顕著に感じました。

ハリー自身がもう5年生になっていて、毎年1巻ずつ出版されるのに合わせてハリーたちの心身も成長し、大人の世界がわかるようになってきているという、現実の時間をうまく使っていることにも脱帽なのですが、

魔法省(Ministry of Magic)という機関やその役職や、役人がどんな心理で行動するか、いかにもやりそうなずるい手なども現実世界さながらに書かれていて、なるほど、欧州の友人たちが若い頃から世の中や政治や国家に対してシビアに見ていたり意見を持ったりするのは、こういう小さい頃からの読書という世界からも醸成されていくのだろうなぁと思わずにはいられませんでした。

読むほどに、民族問題や思想の対立という、今もなお現実社会で起きていることに思いが及びますし、一般の人たちがどのように悪の手に加担していくことになるのかという心理や流れなどは、ヒトラーの時代などを思い出したりします。

 

主人公のハリー自身をスーパースターとして書いていないところも新鮮に感じます。

傲慢さがあるし、承認欲求もあるし、嫉妬があるし、イライラにも不機嫌にもなるし、有頂天にもなれば自己嫌悪にも用いる。ちょっとしたことで気分はころころと変わるし、心は普通の男の子。

その他の人物も同様です。大人も同じ。

それぞれの未熟なところが、性急さやミスにつながって、読みながらハラハラしたり、苛立ってしまったりもするのですが。

どの脇役まで行っても、それぞれが歩んできた人生によって形成された人格がはっきりあることは驚嘆してしまいます。この全容を見たいから、こんな大長編の物語を読み続けてしまう。

 

本巻の一つのテーマは”心”だったかなと思います。

そんな中で印象に残った言葉たち。

「『読心術』はマグルの言い種だ。心は書物ではない。好きな時に開いたり、暇な時に調べたりするものではない。思考とは、侵入者が誰彼なく一読できるように、頭蓋骨の内側に刻み込まれているようなものではない。心とは、ポッター、複雑で、重層的なものだーー」(第24章 、スネイプ)

「立つんだ!やる気がないな。努力していない。自分の恐怖の記憶に、我輩の侵入を許している。我輩に武器を差し出している!」

(中略)
「鼻先に誇らしげに心をひけらかすバカ者ども。感情を制御できず、悲しい思い出に浸り、やすやすと挑発される者どもーー言うなれば弱虫どもよーー帝王の力の前に、そいつらは何もできぬ!ポッター、帝王は、やすやすとおまえの心に侵入するぞ。」(第24章、スネイプ)

「ハリー、きみのいまの気持ちを恥じることはない」(中略)「それどころか…そのように痛みを感じることができるのが、きみの最大の強みじゃ」

「ハリー、そのように苦しむのは、きみがまだ人間だという証じゃ!この苦痛こそ、人間であることの一部なのじゃーー」

(中略)

「気にするからこそ、その痛みで、きみの心は死ぬほど血を流しているのじゃ」(第37章、ダンブルドアの言葉)

 

ダンブルドアの言葉を読むのは、このシリーズの楽しみの一つ。彼の語録ファンはきっと私だけではないだろうと思います。

「いまにして思えば、わしがきみに関してやってきたこと、そしてやらなかったことが、老齢のなせる業じゃということは歴然としておる。若い者には、老いた者がどのように考え、感じるかは分からぬものじゃ。しかし、年老いた者が、若いということがなんであるかを忘れてしまうのは罪じゃ…そしてわしは、最近、忘れてしまったようじゃ…」(第37章)

「きみをあまりにも愛おしく思いすぎたのじゃ」ダンブルドアはさらりと言った。「わしにとっては、きみが幸せであることのほうが、きみが真実を知ることより大事だったのじゃ。」(第37章)

 

今回も、風間杜夫さん朗読のAudibleと読書と両方使いながら読み進めました。

読んでいないのに、次に読み始める時は、何十ページも先に行くことができていてちょっと魔法がかかっているかのような気分でした。笑。

 

第6巻では事態が好転していくといいのですが。

 

 

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