ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

すごい博物画 歴史を作った大航海時代のアーティストたち

久しぶりに図書館に行って、展示されていて目に止まった本。

すごい博物画 歴史を作った大航海時代のアーティストたち」

(David Attenborough, Susan Owens, Martin Clayton, Rea Alexandratos共著、グラフィック社、2017年9月初版、もともとは英国Royal Collection Trustより2007年に出版)

すごい博物画 歴史を作った大航海時代のアーティストたち

 

タイトルどおり、すごいです。

哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、魚類、植物、昆虫が、目をみはるほどの繊細さで描かれた博物画。

挿絵43点、図版88点が掲載されています。

いずれもウィンザー城王立図書館に保管されているもののようです。

特に、レオナルド・ダ・ヴィンチカッシアーノ・ダル・ポッツォアレクサンダー・マーシャルマリア・シビラ・メーリアンマーク・ケイツビーについて多くの作品が取り上げられています。

 

この分野に造詣が深くないものですから、文字による解説はほとんど頭に入ってこず、眺めるようにページをめくった本ですが、絵が、ほんとにすごいです。

なぜにここまで精緻に描けるのかしら、と。

昆虫を描くマリア・シビラ・メーリアンのページなどは、ちょっと気持ち悪くて、ぞわぞわしてしまいます。

 

人類はそもそもいつから絵を描き始めたのか。

存在が確認されている絵画のうち最も古いものは、およそ3万年前のものだそうです。

 

本書が特集する大航海時代とは、15世紀後半から18世紀初めにかけての約250年。

この時期のヨーロッパは、アフリカやアジア、アメリカに向けて大規模な航海が行われた時代。

世界各地から、それまでヨーロッパ人が目にしたことがない珍しいものが次々と運ばれてきました。

この珍しいものを、画家たちは、絵にして記録しました。

もっと珍しいものを見たいと思うあまり、自ら冒険に出る画家もいたようです。

 

美しいもの、珍しいもの、興味をそそられるものを見つけた時に、今の私たちはスマホですぐに写真に収めますが、そのような技術がない時代であっても(写真が発明されたのは19世紀)、「記録に残したい」と思うのは、古今東西問わず、人間の性なのだなぁと思わずにいられません。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチについては、外来のものを記録するというよりも、身の回りのものを題材に、動物、解剖図、植物、地質などをスケッチしており、彼のテーマが「自然界の研究」(p.40)であることが、これらの絵からも伝わってきます。

馬をまるで今にも絵から出てきそうに描くことができているのは、動物を解剖して、筋肉や骨や腱などまで理解しているから。

ダ・ヴィンチの存在は、純粋な好奇心と止まるところを知らない探究心は人間の才能をどこまでも開花させるものであることを示す、究極の実例と思います。

 

本書を読んで、いくつか面白いなと思ったストーリーがあります。

 

一つは、当時画家たちが描いたものの中に、ユニコーンなど、実在しない動物があること。

ダ・ヴィンチも、ネコやライオンの動きを参考にドラゴンを描いています。

当時の彼らは、「きっとこんな生物がいるのだろう」と信じていたり、誰かから伝え聞いた話をもとに描いてみたという様子だったことが伺えます。

だって、アフリカからシマシマの馬や、首がとんでもなく長い網目状の模様の馬みたいな動物がやってきたら、それはものすごい驚きだったはずで、だったらこういうのもいるのではないか、と想像が膨らんでいくのも全く不思議ではありません。

現代の私たちも、「火星人はきっとこんな姿だ」などと想像したり描いてみたりしますが、いつか未来の世界から今の私たちの時代を振り返ったときには、その絵も20世紀・21世紀を知る文献となるかもしれません・・・。

 

もう一つは、カッシアーノ・ダル・ポッツォのナマケモノの絵についての解説。

表紙の下段、真ん中の絵です。

本書の著者デイビット・アッテンボローは、イギリスの動物学者・植物学者であり、プロデューサー。

彼の解説によれば、カッシアーノなどの画家たちが生きている動物を見たとは考えにくい。

なぜなら、ナマケモノはほとんどの時間、木にかぎ爪をひっかけて、ぶら下がって過ごしているため、筋力が発達していない。足には最低限の筋肉しかついていないため、絵のような姿勢をとるだけの力はなく、ましてや保持することはできない。枝から外され、地面におろされたとしたら、足は横に広がり、泳ぐようにしか動くことはできない。だから死体の標本を題材に描いているはずだ、と。(p.86)

 

なるほど、絵からここまで読み取れるのか、と驚きました。

 

そして、ものすごい緻密さで生物を書き表すアーティストたちの着眼点や技量に驚きと尊敬の先には、生物ってなんて精緻にできているんだろう・・・!と言葉を失いました。

生物の神秘がお好きな方は、眺めているだけで面白いのではないかと思います。

 

神様がこの世に創り出すものは、実に多様で、美しく、あるいは可愛らしく、時に妖艶で、時にちょっと気持ち悪い。

いずれにしても、すべての生命が、本当に不思議です。人類の生命も含めて。

この多様性が大切にされる社会でありつづけますように。

 

すごい博物画 歴史を作った大航海時代のアーティストたち

すごい博物画 歴史を作った大航海時代のアーティストたち

  • 作者: デイビッド・アッテンボロー,笹山裕子
  • 出版社/メーカー: グラフィック社
  • 発売日: 2017/09/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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