ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

入社1年目の教科書

あっという間にGWも過ぎました。慌ただしく始まってしまった新年度、ようやくちょっと一息つけたと思ったら、早速現実に引き戻されています。

新人や若手の人たちに仕事に対する向き合い方を伝えることができるよい本はないだろうかと思っていたところ、この本を薦められたので、今更ながらに読んでみました。「入社1年目の教科書」(岩瀬大輔氏著、2011年、ダイヤモンド社)

入社1年目の教科書

 

現在は42歳にしてライフネット生命保険の社長である著者が、副社長であった当時、それまでのボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッドなどで働いてきた経験などをもとに執筆した「社会人になって間もない人、これから社会人になろうとしている人に向けて、僕なりに培ってきた仕事に臨む姿勢をお伝えする」本、「いまの自分を見直そうとするベテランにもお読みいただきたい」本です(232頁)。

残業時間の感覚などは最近の世の中のものとはズレが感じられるところとがあるとはいえ、あげられている教訓は、発行から7年たった今もうなずくものばかり。

我が身を振り返れば、見よう見まねで試行錯誤する中で、沢山の失敗をしながら感じてきたことが、3つの原則と50の姿勢(ルール)としてきれいにわかりやすく綴ってあって、私も新人の頃にこういう本に出会っていればなぁと思う本でした。

 

ということで、後輩たちに贈る本が1冊見つかったので本来の目的は達成できましたが、いろいろ共感し改めて学ばせて頂きましたので、特に今の自分に響いたものをあげておきたいと思います。

 

3つの原則

まずは、「はじめに」(1~12頁)に書いてある原則3つ。

これは仕事においては永遠の原則なのではないかと思います。けれども若い頃からこの3つとも意識できている人は実はそう多くないかもしれません。とりわけ原則3。このことに私ももっと早くから気づいていたらなぁ、と反省します。

原則1:頼まれたことは、必ずやりきる

原則2:50点で構わないから早く出せ

原則3:つまらない仕事はない

 

会議では新人でも必ず発言せよ

続いては私のリーダーシップ論に響くところ。声を大にして言いたいこと。

ルール11:会議では新人でも必ず発言せよ(52~54頁)

以前に取り上げた「採用基準」でも触れたことですが、役職・役割に関わらず、チームの全ての人がリーダーシップを発揮しているとき、そのチームはとても生産性が高く、良いエネルギーに満たされます。

新人だからこそ出せる付加価値の一番大きなものは、著者の言葉を借りれば「新鮮な目線」と「現場の感覚を伝えること」。まったく同意見です。

「新鮮な目線」。これこそ組織が得たくても得られないものの一つです。大企業にもなってしまえば、その組織の文化や特徴の一つに過ぎなかったものが、いつのまにか常識として猛威を振るい始めます。けれども、企業や政府が本来相手にしているのは消費者や国民のはず。B to Bの大企業であっても、仕事の相手方はひとりの人間ですし、これだけコンプライアンスやCSRが叫ばれる現代において一般市民の目線もとても重要です。

新人や若手は、「一般の消費者」「普通の一般市民」に一番近い存在。その視点から湧いてくる素朴な疑問や好奇心は、先輩や上司たちをも我に返らせ、「確かに・・・」「そういえば、なんでだっけ」と、それまで疑うことも忘れていた非効率さや非合理性に気づかせる機会になります。

「現場の感覚」。これは新人に限った話ではなく、こんなに目まぐるしい速さで世界が動く現代で、経営陣や上司が全ての情報を把握できるはずがありません。最も現実を知るのは現場を担当する人たち。年齢や役職に関係なく、自分の持ち場の情報をチームに届け、意思決定に貢献することが必要な時代と思います。

 

本を速読するな

次は、本からの学び方。大変僭越ながら、かなり同じ考え方をされており、ただ、私自身は「これって多分、学びのスピードが遅いんだろうなぁ」と思っていたことでしたので、自分のスタンスについて肯定して頂いたような嬉しい感覚になりました。

ルール20:本を速読するな(95~98頁)

学ぶべきものがここに詰まっているという本と出会ったら「1冊をあわてずじっくりと読み、その中から大きな学びを一つ得られればいい」。そして感想文を書く。それが復習につながる。

更に、「ルール21:ファイリングしない。ブクマもしない」では、「使える情報だと思った部分を(ファイリングしたりブクマしたりするのではなく代わりに)ノートに書き写すこと」(101頁)を推奨されています。

 

ここみち読書録ができるまで

脱線しますが、私にとっては、この読書ブログがまさに「感想文」「書き写し」のためにやっていることになります。

実は、この読書ブログを書き始める前は、手書きの読書ノートをつけていました。

学術書、小説、ビジネス書、エッセイ・・・、ジャンルを問わず読んだ本全てについて、①読了した日、②書名、③著者・訳者・監修者、④発行年、⑤出版社、⑥my rating(自分だけの星5つ段階評価)、⑦どうしてその本に出会ったか、⑧どんな人にオススメしたい本か、を記した後、どんな本だったかという感想やその本を通じて自分が考えたことや感じたことを書き、更に「これは!」と思うような表現や内容をせっせと書き写していました。律儀に参照ページも含めて。

久しぶりに見返してみたら、多い時にはA5のノート10ページ分くらいびっしりと書き写していて、我ながら感心するというか、呆れるというか。2010年頃とりつかれたように本を読むようになり、そこから2015年頃までこのやり方を続けていました。年間50冊くらい。そのうち、映画や美術館などの鑑賞録も含めて書くようになりました。

手が疲れることに加えて、後から自分で「確か、あの頃に読んだあの本」と探すのもけっこう難しい。ノート現物がないと読み返せない。極めつけは、人から相談事をされた時に、そういうときにオススメの本は、、、と毎度メールで書いて送るのを繰り返している自分に気づき、ふと、「確かに私はアナログ人間だけど、これ、もう、ウェブ上に置いておいた方が自分が便利だし、楽なんじゃないか?」と思うに至ったところがこのブログの始まりでした。

本との出会い方も、読書ノートの頃から変わっていません。

本書の「ルール17:情報は原典に当たれ」(84〜87頁)に通じるのですが、1冊読んでいると著者が他の本を引用したり、影響を受けた人の話なんかが出てきます。そうすると、その本や著者をたどって行って、芋づる式に良書に出会ったりします。このブログの末尾に関連書籍のリストを設けているのも、もともとの趣旨はそこにあります。

自分のために始めたものが、他の方のお役にも立つなら嬉しいことこの上なし。

更にそこから会話や交流が生まれたりして、これまた楽し。

新聞記事の書評などを一緒にスクラップしておくのも、それはそれで味があったのですけれども。

 

脳に負荷をかけよ

本題に戻って、最後に響いたのはこれです。

ルール26:脳に負荷をかけよ(120〜122頁)

経験を重ねるほどに、新しいことを学ぶのは面倒になってきます。

得意分野がはっきりしてくるほどに、それ以外の分野ではエネルギーも余計にかかります。

また、情報はテレビや本から受け取る方が楽で、「ゼロから生み出す」というのはかなり脳が疲れます。

脳に負荷がかかっているとき、自覚できる感じがあります。もう投げ出したい。別にこれできなくても死なないし。

そんなときに、このルールは、「投げ出すな!」「そこが踏ん張りどころだ!」と思い出させてくれるような気がします。いい仕事ができるかどうかは、ここで踏ん張れるかどうか、ではないかと思います。

 

どんな仕事でも、仕事への向き合い方は共通 

著者は輝かしい学歴・キャリアの持ち主で、誰もが岩瀬さんと同じような仕事に就けるということではないと思います。

では、彼ほどのエリートでないなら本書は無用かというと、それも違います。

仕事であれ、芸術であれ、スポーツであれ、何かを極めている人たちの言葉や考え方、人生観には何かしら共通するものがあると感じます。極めようとする人たちは、生きている世界が違っても、お互いの話には多くの点で共感をするだろうと思います。

詰まるところ、この本で書かれていることは、どんな仕事であれ、仕事というものに向き合うとき、プロフェッショナルを目指すときには、共通して大切にすべき姿勢です。

本書を通じて伝わってくるメッセージも、決して、小手先の処世術を教えようというものではありません。

(誰でも)「人一人の雰囲気と行動組織全体を変える力を持っています。」(75頁)

「この仕事を通じて、自分はーー」といった自分なりの物語を作りながら働くことで、厳しい局面でも踏ん張ることができ、いい仕事をしたと納得できるのではないでしょうか。」(78-79頁)。

一度きりしかない人生を自分らしく面白く生きてほしい、もっともっと成長してほしいという、若い後輩たちに対する熱意の込もった指南書だと感じました。

 

仕事は自分を成長させてくれるもののひとつ。

たくましい人材が育っていってほしいなと思います。

自分自身も、いろんな機会から学び続けていきたいものです。

 

入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

 

 岩瀬さんオススメの書(巻末234-235頁より)

百年たっても後悔しない仕事のやり方

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雇用、利子および貨幣の一般理論〈上〉 (岩波文庫)

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戦後日本経済史 (新潮選書)

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戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

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考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

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生命保険のカラクリ (文春新書)

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ネットで生保を売ろう!

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昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

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失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

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  • 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
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  • 発売日: 1991/08/01
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新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

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美味礼讃 (文春文庫)

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英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

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男の作法 (新潮文庫)

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