ここみち読書録

プロコーチ・けいこの、心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

幸福の経済学 The Economics of Happiness

年度末から仕事に遊びに趣味にと、慌ただしく過ごしていたら、あっという間にGWも終わり。前回の記事から2ヶ月も空いてしまいました。本は読めども、書く方が追いつかない。
取り上げたい本がたまりつつも、映画の記憶が飛ばないうちに今回も観賞録です。

 

私が最近映画を観るときは、誰かからオススメされたとき、お誘いがあったとき、あるいは飛行機の中で。今回は、友人が、カフェ貸切りで映画鑑賞+対話会(ソシオシネマ表参道)を開催するというので声をかけて頂き、観てきました。

幸せの経済学  The Economics of Happiness」(2011年、監督:Helena Norberg-Hodge, Steven Gorelick, John Page)

 

幸せの経済学 [DVD]

 

端的にいうと、「グローバリゼーションにストップ。ローカリゼーションが現代のいろんな問題を解決する。」という内容の映画です。

 

前半は、8 inconvenient truths about globalization(グローバリゼーションについての8つの不都合な真実)として、グローバリゼーションの負の側面をクローズアップ。

1. Globalization makes us unhappy(私たちを不幸にする)

2. Globalization breeds insecurity(不安を大きくする)

3. Globalization wastes natural resources(天然資源を無駄にする)

4. Globalization accelerates climate change(気候変動を加速させる)

5. Globalization destroys livelihood(暮らしを破壊する)

6. Globalization increases conflict(対立を増やす)

7. Globalization is built on hand-outs to big business(大企業へのばらまきである)

8. Globalization is based on false accounting(不正会計の上に成り立っている)。

 

グローバリゼーションの恩恵を検証せずに、ネガティブなところだけをフォーカスする内容は、容易にいろんな批判を呼びそうです。

そう言うけど、この映画が世界中の人に届けられるのもグローバリゼーションのおかげでしょ、あなたたちの自由で豊かな生活もそうでしょ、もう十分豊かだから言えることよね、自分たちにないものへの憧れなだけじゃない、これはグローバリゼーションの問題じゃなくて人間の欲深さと資本主義の問題なんじゃないの、などなど。

また、最近台頭気味の保護主義を後押しするかのように解釈する人もいるかもしれません。(この映画は、自国の利益を最優先することを主張しているわけではないので、保護主義の主張とは違うと理解しています。)

  

ただ同時に、確かに、と思うところもいろいろあります。

 

この映画を批判することは簡単なのですが、おそらく制作者側もそれはわかった上で、極端に振り切ったメッセージを出しているのではないかと想像します。この映画の価値として、こんなことを感じました。

 

対話の題材に

 今回の企画を主催した渡辺寧さんの受け売りになってしまいますが、せっかくなのでこの思いきった作品を機会に、こんなことを考えて、対話してみるのはいかがでしょうか。

  • この映画のどこに共感できて、どこに違和感を感じたか。
  • 今の経済活動は持続可能なのか。
  • 今のままのエネルギー利用は持続可能なのか。
  • GDP成長が、国が目指すべきところなのか。
  • 途上国は先進国のような姿を目指すべきか。
  • 今、私たちが必要としていることは何だろうか。

 

作品を見て感じたことを口に出すと自分の思考もはっきりしてきます。人の意見を聞いて、自分同じ着眼点の人がいたりすると嬉しくなります。違う意見を聞けば、なるほど、とまた視点が広がります。

 

私を含む参加者の方々の関心を引いたのが、農産物の輸出入についてのデータの部分。たまご、肉、野菜、いろいろなものが、ある国から輸出されている一方で、同じものが、ほぼ同規模(金額ベース)で輸入されている。おそらく輸出はそのまま、輸入は加工品、ということが多いのかなと推測しますが、「地産地消」していれば必要とはならない輸送のためにエネルギーが無駄に使われているということを知り、素朴に、これはどうにかならないのだろうか?と思いました。

  

この映画では、グローバリゼーションとローカリゼーションが相対するものとして描かれています。ですが、ローカリゼーションの完全なる信奉者とならずとも、相対しているかのようなその2つを実際にはそのバランスをどう取っていくのか、両方の良い面をどう取り入れていくのか、といった議論が世の中に起きるだけでも、この映画の価値があると思います。

 

自分事にする

経済について語るのを、行動を起こすのを、専門家任せにするのではなく、自分事として考える。この映画の中で何度か出てくるメッセージです。

 

輸入された肉や野菜を買っているとき、私たちのその行動は、日本の畜産家や農家の仕事を奪うことに加担しています。その繰り返しの結果、日本に畜産や農業が存続の危機にさらされるとすれば、仮に今日のスーパーでのお買い物ではお財布が助かっても、長い目で見たときはもっと大きな代償を払っていることになります。

その他の買い物も同じです。ネットで買う、郊外の大型スーパーで買うということは、地元の商店街の商売を奪うこと、輸送にかかるエネルギーを使うことに加担しています。

 

もちろん、日本の各産業もそれぞれによりよい商品やサービス提供のための努力すべきです。いろいろなところの珍しいものが食べれるようになったり、より低価格でより満足できる商品やサービスを買えることは、私たちの生活を豊かにしてくれます。

ただ、自分の行動ひとつが、それがどんな行動であれ、大河の一滴となって社会へのインパクトになっているということ、自分もこの先の社会がどうなっていくのかということに関わっているということに自覚的でいることは大事なのではないかと感じています。

 

いろいろな幸せの形があることを知る

どんどんスピードアップする世界、格差が広がる社会。そんな中に生きていると、自分も乗り遅れまい、負け組に落ちるまい、という気持ちになっても当然です。それは、成長のモチベーションにもなりますが、それが生きていくためのすべての道だと思うと苦しくなります。(話が飛びますが、東急東横線の高速化したエスカレーターには未だに慣れないです。。。)

人の幸せはいろんなところにある、むしろ何が幸せなのかはわからない、という考えをこの映画からは感じることができるのではないかと思います。観ながら、パパラギを思い出していました。

 

先日、地方に住む80代の祖母と話していたとき、「昔は錠(家の鍵)なんてなかった」という話を聞き、そうかぁ、と思いました。「盗まれるものなんてなかった」ので鍵がなくても困らなかったそうですが、そんな時代を祖母は「いい時代だった」と言います。

所有することで湧いてくる不安。不安から来る防衛、遮断。

戦後、所有することは豊かさの象徴として意識づけられてきた私たちですが、その一方で失ったものもあるのかもしれません。

 

自分にとっては何が幸せなのか、それを自分に問うてみることは、自分が人生で本当に求めていることに気づくきっかけになるのではないかと思います。

  

***

 

さて、「地産地消」に関連するものとして、去年もご紹介した皮むき間伐のフェスについて、今年もご案内したいと思います。

植林したものの安い輸入材に太刀打ちできなくなり放置された東京の森を、皮むき間伐という方法で間引く活動です。皮をむいた木は1、2年ほど森で天然感想させ、その後伐木して東京の建築材として利用されます。(詳しくは、昨年の記事(グランドファーザー(再掲))ご参照。) 

 

今年は「森と踊る木こりフェス2017」というタイトルで開催されています。

第1回は4月29日(土)に開催され、100名近い方々が参加されました。

今年はフェスはあと2回開催されます。それ以外のときも、森と踊る株式会社に問い合わせすることで活動に参加することが可能です。

 

5月14日(日)@高尾

 

6月10日(土)@高尾

 

社会の課題を政治家や大企業任せにするのではなく、自分事とする第一歩として、多くの方々が参加されるといいなと思っています。 

単純に、レジャーとしてもとっても楽しい体験になります。

高尾駅北口のIchigendoというパン屋・カフェがとても美味しく、こちらを楽しみに行かれるのもよいと思います。

 

アウトドアが気持ち良い季節。お一人でも、お友達とでも、ご家族でも、どうぞお出かけください。

 

***

 

ソシオシネマ表参道の次回の企画は5月26日(金)「バベルの学校」。こちらもとても興味をそそられます。何かアンテナに引っかかった方、こちらも是非どうぞ。

 

 

幸せの経済学(字幕版)

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