ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

グランドファーザー(再掲)

同じ本でも、自分の読むときの状態や環境によって、響く場所が違ったりします。何度読んでも味がある、気づきがある、そういう本こそ良書と思います。

一度取り上げたグランドファーザー(トム・ブラウン・ジュニア氏著、飛田妙子氏訳)。そのときは、不安定になる国際情勢が気になっていましたが、最近、森や田畑など、自然に触れる機会が多かった中で、この本のこのフレーズが思い出されて仕方がないので、再掲したいと思います。(本の概要については前回記事をご参照ください) 
 
「私たちは地球のケア・テイカー(世話人)なのだよ」(p.98)

 

グランドファーザー

 
この地上に人間はなぜ存在するのか。上記は、グランドファーザーがトムに語った答えです。グランドファーザー自身は、曽祖父コヨーテ・サンダーからこのことについて学びました。以下はコヨーテ・サンダーが、グランドファーザーに語った言葉です。「白人」のところは「現代人」と読み替え、私たち自身を含めながら読んで頂いてよいと思います。
 
「人間は造物主と創造物の道具なのだ。(中略)人間は創造物が生きるために、重要な役割を担っている。人の力によって、自然は強く健康に育つことができるからだ。風や嵐が木を傷めることがあるではないか。動物は植物や他の動物を食べるではないか。植物の民は自然の日光や土や水で養われているではないか。生きるために、みんながお互いを必要とするのだ。けれども、人間と自然のあいだには、均衡と調和が保たれていなければならない。(後略)」(p.111)
「問題は、白人がこの均衡と調和を理解しないことだ。白人は奪うばかりで、決して返さない。ケア・テイカーにならず、疫病のように大地を破壊する。白人にはこの地球で生きる目的がわかっていない。それで迷いながら、それぞれ勝手に探し求めているのだ。白人はいまを生き延びることしか考えないから、大地がどうなろうとかまわないのだ。彼らは未来の世代のことも、自分たちの強欲が大地にどんな結果をもたらすかもほとんど考えない。自然の掟にそむき、自分たちの運命に逆らって生きているのだ」(p.112)
「(前略)生きるためには大地からものをもらわなければならない。どのようにしてもらうかによって、害悪になるかケア・テイカーになるかが決まるのだ。自然の恵みを受けるときは、まずそれを賛美し、心で深く感謝しなさい。私たちが生きるためには、ほかのものの命を犠牲にしなければならないからだ。自然を破壊するのではなく、自然に利益をもたらすように、心して命をいただきなさい。未来のことを考えて、子供や孫にすばらしい財産を残すことだ。自然の創造物を、もっと立派な形にして後世に残さなければならないのだ。そうすれば私たちは大地のケア・テイカーとしての運命をまっとうしたことになる。」(p.112)
 
何のために生まれてきたんだろう、なんて小難しく悩まなくてもよいのです。私たちは生まれながらに大地のケア・テイカーなのだから。
 
実際、均衡と調和を保ちながら人の手が入った自然は本当に美しいと感じます。自然も手入れされていることを喜んでいるのではないかと思うほどに、気持ち良さそうで、きらきら輝いて見えます。
 
私事になりますが、昨年と今年と、このケア・テイカーと言えるような活動のひとつとして、きらめ樹という間伐体験イベントに参加してきました。どなたでも参加頂けるものなので、そしてより多くの方々にご参加頂きたいと思うので、本と合わせて紹介したいと思います。
 
森と踊る株式会社が東京近郊(高尾、奥多摩等)で開催しているもので、皮むき間伐という手法で、日本の森を守り、育てる活動です。
 
使うのは竹で作った道具1本だけ。(最初だけカマを使う場合もあります。)幹の皮を竹ベラで剥いで、スカートのようになった皮の先端を皆で1本ずつ持ち、全員で「Let's きらめ樹ー!」という掛け声に合わせて木の上部まで剥きあげます。中から現れる生の幹が水々しく美しく、またこれにより再生される森が美しくなることから、煌めくと樹をかけて「きらめ樹」という造語になっています。
 

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皮が剥かれてしまった樹は死んでしまいます。わざわざこんなことをする背景には現在の日本の森林の痛ましい現状があります。日本は森林豊かな国ですが、実はその4割〜6割は人工林で、その多くは戦後の拡大造林によって植えられたものだそうです。燃料として、あるいは建築材としての利用が期待され、政府も積極的に林業を後押しした時代がありました。この頃の植林は後に間引きすることを想定していたため、木と木の感覚がとても狭く植えられています。ところが、その後プラザ合意などもあり輸入木材の方が安くなったため国内の林業は投資価値がなくなるどころか採算も取れなくなり、現在は多くが間引きされずにそのままになっているそうです。
 
木が過密状態の森をこのまま放置し続けると、木自身も育つことができないため木材としての価値も損なわれますし、地面にも光が届かないため植物の多様性が失われていってしまいます。これは、動物の住処が奪われるという問題だけでなく、土砂崩れ、水質の変化等のリスクも含んでいる問題です。
 
この私たち人間の行いに対しては、コヨーテ・サンダーの言葉がとても刺さります。 
「白人とは違い、私たちはどうしても必要なときだけしかものを取らない。私たちは余分なものは持たず、便利さも求めない単純な民だ。余分に欲しいとか便利になろうという気持ちもが貪欲を生み、ついには自然を破壊する。白人はこうした余分のものと便利さを求める。生活が簡単に、楽になると思うからだ。これはまちがっている。白人が簡便にしようとすればするほど、この世の中は混乱する。白人は富や名声という偽りのものに満足があると信じてそれらを求めるが、そのようなものを手に入れても苦しみしか得られない。極端に走って破壊された世界には、満ち足りた幸せはありえない。私たちのような単純な生き方をすれば、人は存在することを許され、自然が現在も、さらに未来まで、いっそうたくましく育つように手助けできるのだ」(p.114)
 
まさに自分たちで起こした混乱なので、これに対応しても果たしてケア・テイカーと言っていいのかわかりませんが、このまま放置するよりは、元に戻せると信じて、よりたくましい森に育てていけると信じて関わるほうが良いことは確かです。そして、ありがたいことに、森はそういう関わりに応えてくれます。
 
きらめ樹された樹は、上述のとおり死んでしまいます。すると葉が落ち、森に日が差し始め、チェーンソーで間伐するのと同じ効果が得られるそうです。皮むきから1年後の樹は水分が抜けて、もとの3分の1ほどの重さになるそうで、女性でも一人で切り出せるのだそうです(この点、まだ私は半信半疑ですが、実際経験された女性もいらっしゃいます)。

昨年、この活動に参加するまでは、どの森も林も同じだと思っていました。でも、間伐対象エリアに行ってみると、暗くて、鬱蒼としていて、地面は固く、ちょっと怖いところだと感じます。その後で建康な森に行くと、地面はふかふか、いろいろな植物に出会い、程よく入ってくる日差しが気持ち良い。その差がよく感じられました。

このイベントを主催している森と踊る株式会社は、100年後の森を創っていくというビジョンで活動しています。彼らによれば、国民ひとり当たり13本を間伐すると、10年で日本の森は再生するそうです。また、植えられてから年月が経ちすぎると倒木の危険性が高まっていくそうで、植えられてから50年くらい経った森、つまり今くらいは、森の崩壊の限界に近づいているそうです。なのでできるだけ多くの方に体験いただけるといいなと思っています。特にお子さんにとっては、自然に触れ、地球について学ぶ良い機会になると思います。今年は、私は運営側の一員として参加したのですが、参加者の皆さんと一緒にきらめ樹しながら、大人が子どもに返り、子どもが成長する場だと感じました。

ややこしいことを抜きにしても、単純にとても楽しい1日となります。また、自然を相手にする労働は無になれますし、終わった後には本当に清々しい気持ちになります。

今年の一番大きいイベント、きらめ樹フェスは終了していますが(※)、きらめ樹シーズンが終わる9月初までは体験してみることが可能です。上記では皮むき体験について紹介していますが、この前に行う選木(皮むきする木を選ぶ作業)もまた違った味わいの体験になります。是非Facebookグループを訪問してみてください。これまでの活動の写真や今後の活動情報などを見ることができます。また、コクチーズでも今後のイベントを見ることができます。森と踊る株式会社のイベント・セミナー - こくちーず(告知's) イベント・セミナー集客を支援する無料サービス
 
※2016年5月15日(日)@高尾、29日(日)@奥多摩、参加者は計300名超。NHKでも数回放送されました。
 
なお、この体験のもう一つ面白いこととしては、人との出会いがあります。森と踊る代表の三木さんは、40代で大手企業のエンジニアから「きこり」に転じられた方です。面白い人の周りには面白い人が集まるもので、え?と驚くキャリアの方々やユニークな活動をしている方など、きっと新しい出会いの場にもなるのではないかと思います。
 
(三木さんストーリーはこちら)

 
地球上の全ての人が、大地のケア・テイカーとして、自然と関わることが当たり前のことになりますように。
 
 
グランドファーザー

グランドファーザー

 

 

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