ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

採用基準

今年の就職活動の正式な選考開始まであと1週間となりました。

就活生や採用ご担当者の方々、人材育成に携わる方々に是非ご一読頂きたいと思うのがこちらです。「採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの」(伊賀 泰代氏 著) 

タイトルは採用試験・採用面接を思わせますが、実はすべての働く人におすすめしたい内容です。また、根底には、日本の教育に対する伊賀さんの問題意識があり、教育関係の方にも是非お読み頂きたいです。

 

採用基準

 

長らくマッキンゼーの採用マネージャーをなさってきた伊賀さんの本なので、ベースはマッキンゼーの採用基準ではあるのですが、この本で求めていることは、どこの会社においても求められるものです。私も会社の採用活動を手伝ったり、現場でトレーナー的な役割を担うことがあるのですが、本書に出会った時は「そうそう、こういう人と働きたい」と何度も首を縦に振りながら読みました。もっと言ってしまえば、この本が伝えようとしていることは、これからの日本の社会全体に求められるものです。

 

一言で言えば、リーダーシップを持て。

 

地頭の良さ、分析力、論理的思考力、それらも大事ではあるけれど、それよりも大事なものがリーダーシップだと説いており、大いに共感しました。

 

日本ではリーダーシップ開発のための教育は、まだまだ発展途上と感じます。必要性や重要性は徐々に認知されてきているものの、実際問題それを身につけるための機会は十分とは言えないと思います。天性のもの、カリスマ的なもの、と認識されている場合もあるようです。その割に、普通のサラリーマンでも、一定の経験を経て管理職の役割を担い始めると、突如、彼/彼女にはリーダーシップが足りない、などの評価を受け始める。それは足りないはずです。だって、それまで意識もしていなければ、そのための教育も受けていないのですから。 

また、リーダーシップというと、経営陣やチームの中の責任者にだけ必要なものとも思われがちですが、それも違います。

リーダーシップは、後天的にトレーニングで身につけることができるものです。年齢も関係ない。むしろ若い頃からトライ&エラーで体験的に身につけていくことをおすすめしたいです。どうやって?そのためのヒントがこの本には詰まっていると感じます。 

 

リーダーシップという言葉自体、いろいろな解釈があり、それはリーダーシップを勘違いしているのではないか?と思う言動が横行している場面もよくみられます。本書では、本来のリーダーとは「チームの使命を達成するために、必要なことをやる人」と定義しています(70頁)。自分が賢く見られるかとか、自分の主張が通るかとか、そういうプライドはどうでもよい。自分のポジションに関わらず、他人の意見の方が成果につながると思えば、自分の意見は拘りなく捨てることができる人です。また、上司が指示してくれるのを待つのではなく、自分から、今この状況でこのチームに何が必要かを考えて行動することができる人です。「上司の指示が悪い」と安易に他責に走るのではなく、そのチームを構成する一員として、チームの成果を出すにはどうすればよいのかを自ら考えて行動できる人です。

以前、この話をどなたかとしたときに「良いフォロワーシップも必要だよね?」と言われたことがあります。ここでは「フォロワーシップ」という言葉をどういう意味で使っていらっしゃったのかによると思いました。チームで合意したことを、効率的・効果的に遂行するために指示役を立ててその人の指示で動くという意味だったら必要な局面もあると思います。ただ、上司が言っていることは何だかおかしいと思っているのに、それを表明せずに上司の指示に従い続けるという意味でのフォロワーであれば、無益どころか有害とも思います。上司だっていつも正しい判断ができる完璧な人ではないです。上司としても間違っていることに気づいて教えてくれる部下がいたら、それほど心強いことはありません。

一人の優れたリーダーを求める風土には、同時にその人に完璧性を求めている気配を感じることがあります。リーダーの判断ミスやマネジメントミスにとても不寛容。批判ばかりする人たちの多くはリーダーシップを取った経験がなく、そのためリーダーシップを取ることの難しさも知らず、苦しい局面で助けに回るよりも追求したり見て見ぬ振りをする姿勢になりがちです。こういうチームでは、そのリーダーを失脚させるのは簡単かもしれませんが、本来のチームの目的を見失ってはいないでしょうか。経営者も上司も人間です。苦手なこともあります。わからないことも沢山あります。お互いの間違いや失敗も役職に関わらず補い合っていくことができてこそ、いいチームとして成果にもつながるのではないかと思います。role とroleで関わるのではなくperson とpersonの関係性でチームとしての成果に貢献していく、そんな人たちと一緒に働きたいなと思います。誰もがリーダー、そんな風土にしておくことは、役職上もリーダー職にある方々もご自身の仕事や心理的負担を減らすことにつながると思います。

 

本書では主にリーダーシップの重要性やリーダーシップを発揮するとはどういうことかといったことが中心に書かれていますが、その先には、何のためのリーダーシップ?と問いかけたくなります。本書でも終章にそのあたりのことが書かれています。

リーダーシップを身につけることは、単に「良い企業」に内定を取ることや、「立派な地位」を獲得するためのものではありません。リーダーシップを身につけることは自分の人生を自分でデザインしていくことにつながります。リーダーシップは自分を自由にしてくれるものです。本書の言葉を借りるとこういうことです。

リーダーシップを身につけると、自分の仕事やライフスタイル、生き方のポリシーを、既存の組織や団体の器に合わせるのではなく、自分自身が実現したいと考える世界をそのままストレートに追求できるようになります。これはリーダーシップを身につけることの最大のメリットです。(p.224) 

 

最近、周囲にこういう人たちが増えているのですが、彼/彼女たちと共に過ごす時間は、楽しくて、刺激的で、面白い。世の中にもっとこの輪が広がっていったらとても素敵だろうなと思います。リーダーシップは家庭から職場から、すべての人があらゆる場面で発揮できるものです。すべての人がリーダーとして、自分の人生のリーダーシップをとってこそ、面白い社会が待っていると思います。

 

本書でリーダーシップについてのヒントは沢山得られると思いますが、結局のところ読んだだけでは身につくまでは至りません。世の中で、体当たりでやってみて、失敗してみて、の繰り返しが一番です。もし、本物のリーダーシップというものを集中的にトレーニングする機会が欲しいと思われている方がいらしたら、CTIのコーアクティブ・リーダーシップ・プログラムをお勧めします。一生モノの知恵とスキルが体に入ります。また、共に学び成長する生涯の仲間が得られます。米国、スペイン、日本で、同じ内容で開催されています(日本は日本語で、それ以外は英語)。

 

さて、リーダーシップ論に入って行ってしまいましたが、就職活動についても少し触れますと。今年の就職市場は売り手市場のようですが、こういうマーケットのときや、引く手数多の方ほど陥りやすい罠に気をつけて頂きたいなと思います。

就職活動の勝者とは、人気ランキング1位の会社に内定した人でもなく、難関就職先の内定を獲得した人でもなく、最も多く内定を獲得した人でもなく、自分にぴったりの会社と出会えた人だと思います。そのためには、就職先を決めることをゴールとして設定せず、もっとその先の、自分がこの人生において成し遂げたいことに想いを馳せて、「自分の人生で成し遂げたいことはこの会社でできるだろうか?」「この会社で自分の能力・熱意をどのように使うことができるか」という目で会社を見て行ってほしいなと思います。また、「この会社は自分に何を提供してくれるか」という損得勘定的なものも判断を鈍らせるかもしれません。就職先の選び方については、いろいろ書きたいことがあるのですが、止まらなくなりそうなので、本日はここまでとして。。。是非、自分の心のうずきに正直に従って、自分が思う最高の職場を見つけて頂きたいなと思います。以前紹介したソースなどもキャリアを考えるときにお勧めしたい本です。

 

就活生の皆さんと企業に、素晴らしい出会いがありますように。

 

それにしても、この記事を書くにあたって久しぶりにページをめくりましたが、サバサバとズバリ本質をついてくる伊賀節は気持ちがよいです。以前に直接お話をさせて頂く機会があったのですが(もちろん覚えていらっしゃるはずがないですが)、快活なご様子を思い出しました。Amazonを見る限り、伊賀泰代さんとしての著書は、ほぼこの1冊のようですが、ご自身のweb(MY CHOICE)及び「ちきりん」としてその他の書き物を読むことができます。 

採用基準

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