ここみち読書録

心の向くまま・導かれるまま出会った本の読書録。

GO WILD 野生の体を取り戻せ!

職場の後輩から教えてもらった本です。「GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス」(John J. Ratey氏 & Richard Manning氏著) 

GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

 

内容は、タイトルそのまま。一貫して「野生に戻ろう」と訴える内容です。ここでいう野生とは、文明前の、狩猟採集民を意味しています。

思わず目を奪われるタイトルですが、中身も相当インパクトがあります。私は生物学的なことや医学的なことについてあまり詳しくないこともあり、「え?そうなの???」と目を疑うところもありました。(逆に、多少知識と経験のある、心や自然に関するところは、うなずきながら自然に入ってきました。)

最も衝撃的だったのは、農業の誕生が現代の様々な病気の根源であるという主張。現代の人類の祖先ホモ・サピエンスが出現したのは約20万年前。その当時のいわゆる野生人と現代人の間には生物学的な変化はない。その中で、文明が起きたのは=農業が誕生したのは、「わずか」1万年前。農業の誕生は、人類にとっては産業革命よりもはるかに大きな転換。農業が誕生したことにより、人類は大量のデンプンの摂取が可能になり(現代人の主要栄養素は米、小麦、トウモロコシ、じゃがいも)、糖になるこれらデンプンは現代のあらゆる病気の原因であると。肉体の病気だけではなく精神疾患も含めて。更に、農業により定住が可能になったので運動不足にもなり、人口も過密し、(貯蓄が可能になるので)格差が生じた、などなど。また、あらゆる菌を排除しすぎるのも、かえって人間の免疫力を低下させ、野生人であればかかるはずのない病に罹患すると。「現在、私たちが病気と呼ぶものは、本当は『文明がもたらす苦しみ』と呼ぶべきなのかもしれない」とまで表現しています。ちなみに原書の副題はFREE YOUR BODY AND MIND FROM THE AFFLICTIONS OF CIVILIZATION(文明化の苦悩から体と心を解き放て)で、こちらの方が著者の主張をそのまま反映しています。

人間の大きな脳は運動をするためにある、というのも驚きました。コアラは動かなくなったので、脳は小さくなり今では頭蓋骨を満たさず、頭蓋骨の中でコロンコロンしていると。人間の脳は考えるために大きくなったのだと思っていました。

欲しいと思うものは家にいながら何でも手に入り、簡単にお腹を膨らますこともできる便利な現代。効率もスピードも上がって沢山の仕事をこなすことができる現代。その一方で、人間が持っている精密で美しい体の機能や、進化してきた脳を十分に使わず、自然とのつながりも断ち消えている。忙殺され、十分な睡眠も取れていない。そのために多くの人が心身の悩みを持ち、時には社会的な問題にも発展していく。野生人はもっとシンプルな生活で、もっと健康的で幸せな人生だったのではないか、一体何が私たちの生活をこんなに複雑にしているのか、というような疑問も湧いてきます。著者は野生の体を取り戻すことで、様々な悩みから解放されると説いています。

 

野生の体を取り戻すために、著者が提案していることの核心は「多様性」です。本の内容は栄養素の名前や、いろいろな体内分泌物の名前など、私には難しいところも多かったので、それを読み飛ばして理解したところはこんな感じです。

 

【食事】

とにかく糖と炭水化物を断て。水に溶けた砂糖(ソフトドリンク、栄養ドリンク、フルーツジュース等)は絶対にダメ。カロリーは脂肪から摂取する。ただし人工の脂肪(トランス脂肪酸)はダメ。肉、魚、野菜、ナッツ、乳製品、果糖が少なめの果物を、好きなだけ食べよう。いろんなものを食べよう。食べることを楽しもう。

→試しに炭水化物を取るのをやめてみると、炭水化物を取った時のお腹にずっしりくる感じがありません。また、いつもと同じ満腹感を得るためにはいろんなものを沢山食べる必要があると感じました。肉も普段より沢山食べることができます。炭水化物をやめると自然と多様なものを食べることにつながるような気がしました。それは一方で、食費が上がりそうですし、食事の支度をする手間も増えそうです。本書の中でも貧困層の方が糖(炭水化物)の過剰摂取の割合が多いと書いてあったのはこういうこともあるのかなと、少しつながった気がします。そういうことを横に置いたとしても、なんといっても、やっぱりお米もパンも好き。著者の教えそのままについていったら食べる楽しみも減ってしまいそうなので、「炭水化物は本当に食べたい時だけ食べる。惰性で食べない。小腹が空いたら菓子パンやクッキーではなくナッツ。」ということにしようと思いました。

 

【運動】

好きな運動をしよう。思いきり動くことのできる、その時間が心から楽しみになるような運動を。健康を保つためにする運動は、楽しくなければ本物ではない。楽しむことは、よりよい脳を育てることにもかつながる。気楽にできて、日々の習慣にできて、様々な動きが求められ、全身を使う運動が望ましい。ジムを出て自然の中に行こう。著者のおすすめは何と言ってもトレイルランニング。あるいはクロスフィット。人間の体は人工知能には到底真似できない繊細な動きができる。大きな脳は運動するためにこそある。

→走るのは苦手ですが、トレイルランをしているところの描写(123〜125頁)は、わずか2頁なのに、とても刺激的でわくわくします(著者によれば、読むだけで脳が活性化されているそうです)。これが大好きという人が増えてきているのはとてもよくわかります。後述するバイオフィリアも兼ねていて、確かに良さそうです。私にとって、著者の要件を満たすものは踊ること。上手い下手を気にせず、体の中に音楽を入れて、それに体を合わせるだけ。もっと日本でも踊ることが日常になっていけばよいなと思います。

 

【睡眠】

寝すぎということはあり得ない。アラームや目覚ましのコーヒーが必要なら、まだ睡眠が足りないということ。眠りたければ眠る。火がパチパチという音や、人や動物の落ち着いた呼吸の音は、周囲が安全で深く眠っても大丈夫だというシグナルになる。体はこういう音を聞くと安心して熟睡できる。

→これは朗報。週末、家族から早く起きなさいと急かされたら、「野生の体を取り戻しているんだ!」と言って二度寝すればよいですね。

 

【瞑想・マインドフルネス】

狩猟採集民は、いつだって反応できるよう注意し、警戒している必要がある。研ぎ澄まされた意識と現存性(今ここ)でいる必要がある。瞑想がこれを可能にする。瞑想がもたらすのは至福やリラクゼーションではなく、気づき(アウェアネス)と能力。脳は瞑想によって鍛えられる。

→いつでも反応できるように警戒しているというのは、犯人が刑事に追われているようなシーンを想像してしまうと「大変」「疲れそう」と思いますが、野生人のそれは「今ここ」にいる状態ーーとても落ち着いて、静かな湖のような感じだろうと思います。何か1点に集中して注意するというよりもスペース全体への注意。実際、前者の場合、犯人はFight(戦う)、Flight(逃げる)、Freeze(固まる)のいずれかになると思いますが、「今ここ」にいる場合はもう少し違う対応ができそうです。例えば、敵との遭遇を回避するとか、緩やかにその場を離れるとか。最近、欧米でも瞑想は流行っているようで、企業でも取り入れているところが出てきています。私の周囲でも、瞑想を始めてとても調子がいい!という方が続々出現しています。体を動かしている時などにその感覚になるという声も沢山聞きます。

 

【バイオフィリア(生物や自然への愛情)】

私たちが自然の中にいて心地いいと感じるのは当然のこと。人間は生まれたときから自然にバイオフィリアを備えている。現代人は自然との結びつきの大切さを見失いがち、過小評価しがち。健康を維持すること、機嫌がよくなること、賢くなること、いろいろなことが本当は自然とのつながりのおかげ。自然はいつも私たちに優しいとは限らない。けれどその複雑さ、不規則さ、人間への無関心さが、私たちに刺激や感動を与える。

→この章は全く同感でした。自然を求める自分をさらに正当化させてくれるような内容でした。

 

こうやって書き出していて、改めて思うのは、要は、自然界とのつながりを常に失わず、自然が教えてくれることと体の声を聞いてそれに従えばいいのではないか、という単純な思いです。加工食品だけを食べ続けていたら、本当の食物の味を求めるはず。同じものばかり食べていたら、他のものが食べたくなるはず。体が固まってきたら、動きたくなるはず。睡眠が足りていなければ集中力も切れて、眠くなるはず。ずっとコンクリートの中に居たら、緑が恋しくなるはず。本書は必ずしも規則正しい生活を指南していません。食べたいときも、寝たいときも、動きたいときも、タイミングは体が知っている。むしろ問題は、そのときにその通りに行動できないことなのではないか、とも思えてきます。食事の時間になったら食べるものだ、仕事中に居眠りなんてあってはならない、海や山に行きたいけど忙しい。 いったい何のために?と問うところから、目指したいライフスタイルを考えるきっかけになるかもしれません。

 

終わりの方で引用されているマキューアンとゲッツという研究者の説に大いに共感したので、最後に引用しておきたいと思います。

子どもは人生で経験する変化や困難への耐性によって、「蘭タイプ」と「たんぽぽタイプ」に分けられると彼らは言う。たんぽぽタイプの子どもはどこでも育つが、蘭タイプの子どもは温室でしか生きていけない。未経験の困難にどれほど立ち向かっていけるか、安全で心地よいと感じるために、どれほど周囲の気遣いを必要とするかによって、その子どもの蘭度、たんぽぽ度が決まる。これは子どもだけでなく大人についても言えることだ。そして、努力次第では人はたんぽぽタイプに近づくことができる。これが成長だ。ストレスに対する免疫力を高め、回復力を養うーそれこそが「野生を取り戻す」ことの真髄である。(258頁)

 

日本に、世界に、沢山のたんぽぽが咲きますように!

 

GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

 

 レイティ氏の本は、こちらの方が有名と思います。

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

  • 作者: ジョン J.レイティ,エリックヘイガーマン,John J. Ratey,Eric Hagerman,野中香方子
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 単行本
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 本書で提唱する食事法は、テニスのジョコビッチ選手が実践している食事法と多分同じと思われます。

ジョコビッチの生まれ変わる食事

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 トレイルラン関連。メキシコの走る民族・タマウマラ族の部分、読みたいです。

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”

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  • 作者: クリストファー・マクドゥーガル,近藤隆文
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: ハードカバー
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これも読んでみたくなります。森の生活

森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)

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